最新記事

ヘルス

現役医師が断言「血液型と性格は関係ないし、自分の血液型を知る必要もない」

2023年1月7日(土)12時00分
名取 宏(内科医) *PRESIDENT Onlineからの転載

性格診断に使うだけならともかく、不正確な検査結果を見て「両親から生まれるはずのない血液型だ」と思ったら大変です。「いったい誰の子供なんだ」と母親がありもしない不倫を疑われることになりかねません。ついでながら、検査が正確でも、一般的にはありえないとされる血液型の子供が生まれるケースもまれにあります。たとえば、一般的にはAB型とO型の夫婦からはAB型やO型の子供は生まれませんが、「シスAB型」というまれなタイプのAB型とO型の夫婦からは生まれます。

医学的には血液型を調べておく必要なし

それでも「事故などで輸血が必要になった時、あらかじめ血液型がわかっていたほうがいいのではないか」と疑問に思う方もいらっしゃるでしょう。ですが、患者さんが自己申告した血液型を信じて輸血をするような医療機関はありません。ABO式血液型だけがわかっても仕方がないですし、間違って不適合輸血を行えば患者さんが亡くなることもあります。血液型の申告があろうとなかろうと、血液型を検査して、患者さんの血液と輸血用血液を混ぜて反応をみる「交差適合試験」を行った上で輸血します。検査する時間がない超緊急時でも、O型赤血球製剤を輸血しますので、やっぱり前もって血液型を知っておく必要はありません。

今から40年以上も前ですが、私が小学生の頃は名札の裏に血液型を書く欄がありました。また、最近は見かけませんが、以前は工事現場用のヘルメットにも血液型を書く慣例がありました。こうしたことも「緊急時の輸血のため、あらかじめ血液型を知っておいたほうがいい」という誤解を助長していたのでしょう。血液型は遺伝情報であり個人情報ですから、今どき血液型を書かせるような学校や職場があったら、コンプライアンス的によろしくありません。

子供が成長すれば、血液型の検査は正確になります。自費でなら検査をする医療機関もあるでしょうが、医学的に必要な場合を除いて血液型の検査をすることはおすすめしません。子供にわざわざ痛い思いをさせてまで、血液型を知る必要があるでしょうか。子供が自分の血液型を知りたくなったら、しかるべき年齢になってから、自分の判断で自費の検査を受けるなり、献血をするなりすればいいと思います。

名取 宏(なとり・ひろむ)

内科医
医学部を卒業後、大学病院勤務、大学院などを経て、現在は福岡県の市中病院に勤務。診療のかたわら、インターネット上で医療・健康情報の見極め方を発信している。ハンドルネームは、NATROM(なとろむ)。著書に『新装版「ニセ医学」に騙されないために』『最善の健康法』(ともに内外出版社)、共著書に『今日から使える薬局栄養指導Q&A』(金芳堂)がある。


※当記事は「PRESIDENT Online」からの転載記事です。元記事はこちら
presidentonline.jpg




今、あなたにオススメ

関連ワード

ニュース速報

ワールド

トランプ氏とゼレンスキー氏が「非常に生産的な」協議

ワールド

ローマ教皇の葬儀、20万人が最後の別れ トランプ氏

ビジネス

豊田織機が非上場化を検討、トヨタやグループ企業が出

ビジネス

日産、武漢工場の生産25年度中にも終了 中国事業の
今、あなたにオススメ
MAGAZINE
特集:独占取材 カンボジア国際詐欺
特集:独占取材 カンボジア国際詐欺
2025年4月29日号(4/22発売)

タイ・ミャンマーでの大摘発を経て焦点はカンボジアへ。政府と癒着した犯罪の巣窟に日本人の影

メールマガジンのご登録はこちらから。
人気ランキング
  • 1
    日本旅行が世界を魅了する本当の理由は「円安」ではない
  • 2
    私の「舌」を見た医師は、すぐ「癌」を疑った...「口の中」を公開した女性、命を救ったものとは?
  • 3
    中国で「ネズミ人間」が増殖中...その驚きの正体とは? いずれ中国共産党を脅かす可能性も
  • 4
    日本史上初めての中国人の大量移住が始まる
  • 5
    使うほど脱炭素に貢献?...日建ハウジングシステムが…
  • 6
    ロシア武器庫が爆発、巨大な火の玉が吹き上がる...ロ…
  • 7
    足の爪に発見した「異変」、実は「癌」だった...怪我…
  • 8
    健康寿命を伸ばすカギは「人体最大の器官」にあった.…
  • 9
    パニック発作の原因の多くは「ガス」だった...「ビタ…
  • 10
    市販薬が一部の「がんの転移」を防ぐ可能性【最新研…
  • 1
    日本旅行が世界を魅了する本当の理由は「円安」ではない
  • 2
    「スケールが違う」天の川にそっくりな銀河、宇宙初期に発見される
  • 3
    【クイズ】「地球の肺」と呼ばれる場所はどこ?
  • 4
    「生はちみつ」と「純粋はちみつ」は何が違うのか?.…
  • 5
    女性職員を毎日「ランチに誘う」...90歳の男性ボラン…
  • 6
    教皇死去を喜ぶトランプ派議員「神の手が悪を打ち負…
  • 7
    自宅の天井から「謎の物体」が...「これは何?」と投…
  • 8
    トランプ政権はナチスと類似?――「独裁者はまず大学…
  • 9
    健康寿命は延ばせる...認知症「14のリスク要因」とは…
  • 10
    【クイズ】世界で最もヒットした「日本のアニメ映画…
  • 1
    【話題の写真】高速列車で前席のカップルが「最悪の行為」に及ぶ...インド人男性の撮影した「衝撃写真」にネット震撼【画像】
  • 2
    健康寿命を伸ばすカギは「人体最大の器官」にあった...糖尿病を予防し、がんと闘う効果にも期待が
  • 3
    【クイズ】世界で最も「レアアースの埋蔵量」が多い国はどこ?
  • 4
    【心が疲れたとき】メンタルが一瞬で “最…
  • 5
    日本旅行が世界を魅了する本当の理由は「円安」では…
  • 6
    中居正広は何をしたのか? 真相を知るためにできる…
  • 7
    間食はなぜ「ナッツ一択」なのか?...がん・心疾患・抜…
  • 8
    自らの醜悪さを晒すだけ...ジブリ風AIイラストに「大…
  • 9
    北朝鮮兵の親たち、息子の「ロシア送り」を阻止する…
  • 10
    【クイズ】世界で最も「半導体の工場」が多い国どこ…
トランプ2.0記事まとめ
日本再発見 シーズン2
CHALLENGING INNOVATOR
Wonderful Story
MOOK
ニューズウィーク日本版別冊
ニューズウィーク日本版別冊

好評発売中