現役医師が断言「血液型と性格は関係ないし、自分の血液型を知る必要もない」
だから、A型の人にB型の血液を輸血すると、A型の人が持つ「抗B」抗体が、B型の赤血球の「B抗原」と反応して、赤血球が壊れるといった重大な副作用が起こります。だから、輸血は血液型を合わせて行います。
血清に含まれる抗体は生後半年以降に作られる
生まれたての赤ちゃんの免疫系は血清に含まれる抗体「血清抗体」を作れませんが、生後半年〜1年くらいで作れるようになります。たとえばA型の赤ちゃんは、抗Bという血清抗体を作るようになるわけです。このことを知った時、私は不思議でなりませんでした。B型の血液を輸血されていないのに、なぜB抗原に対する抗体が作られるのでしょうか。
これは赤血球に含まれる抗原「赤血球抗原」に似た抗原を持つ病原体がいるためです。A型の赤ちゃんに「B抗原と似た抗原を持つ病原体」が感染すると、免疫系は防御反応として抗B抗体を作ります。AB型とB型の赤ちゃんは抗B抗体を作りませんが、細菌にはB抗原以外にも多くの抗原がありますので免疫は働くものの、A型やO型の赤ちゃんと比べると「B抗原に似た抗原を持つ病原体」に対しての免疫の働きは少し弱いかもしれません。
A型の人が新型コロナに感染しやすいのが事実だとすると、A型の人が持たない抗A抗体が関係しているのかもしれません。新型コロナウイルスにはA抗原に似た部分があり、抗A抗体がウイルスにくっついてA型以外の人の感染を妨げている、といった仮説が考えられます。ただし、それほど単純なことではありません。抗体だけに注目すると、抗Aも抗Bも作るO型が一番感染症に強いはずですが、ノロウイルスに対してはそうではないようです。実際の血液型と感染症の関係は複雑だからこそ、多少の関連はあったとしても、その影響は小さいのです。
血液型の分類はABO式だけじゃない
血液型の分類の仕方には、ABO式以外にも何十もの種類があります。有名なのは「Rh血液型」ですね。昔から病気との関連では、白血球の血液型(ヒト白血球抗原)が研究されています。ある種の自己免疫性疾患とヒト白血球抗原の関連はきわめて強く、特定の白血球抗原を持っていると、病気のリスクが数倍や数十倍上昇することもめずらしくありません。ヒト白血球抗原は骨髄移植の治療成績にも影響します。こうした観点からも、何十種類もある血液型の分類中でABO式だけが特別に性格に強い影響を与えるという考えには疑問を持たざるを得ないのです。
そして医学的には、自分の血液型を知っておく必要はありません。あえて言えば、「O型の血液が不足しているので献血を」といった呼びかけに対応する時くらいでしょうか。日本では血液型人間学の影響もあってか、赤ちゃんの血液型を知りたいという保護者も多いそうです。でも、前述したように新生児は血清抗体を持っておらず、赤血球抗原の量が少なく、母体由来の血清抗体を持っていることなどから血液型の検査は不正確です。たまに「生まれた時と血液型が変わった」なんて話を聞きますが、血液型は遺伝的に決まっていて骨髄移植でも受けない限り変わりません。出生時の検査が不正確だっただけだと思われます。