最新記事

インド

星座で破談は当たり前──親が相手の親とチャットする、インド版「お見合いアプリ」の憂鬱

Marriage by App

2022年11月4日(金)16時25分
ニランジャナ・ラジャラクシミ
アプリ

アプリに表示されるプロフィールも通常は親が書いている PHOTO ILLUSTRATION BY YUKAKO NUMAZAWAーNEWSWEEK JAPAN; SOURCE IMAGES: KAILASH KUMAR/ISTOCK, OJOEL/ISTOCK, ILLUSTRATION BY KATYAU/ISTOCK (BACKGROUND)

<今も90%以上がお見合いのインドでも、婚活アプリは普及している。しかし、利用しているのは当事者ではなく、親。「親の承諾」が不可欠なインド式結婚の伝統とは?>

私はニューヨークで1人暮らし。この週末は寝坊できると思っていたのに、父(インドにいる)からの電話で起こされた。アプリを開いて、男の経歴を読んでみろという。

「またか」と思ったけれど、私は新たな花婿候補のプロフィールに目を通した。そこに書かれている考え方や興味が、本人のものとは限らないのを承知の上で。

インドでは、こういう「お見合いアプリ」を最も熱心に利用しているのは若い人ではない。その両親だ。

当事者である私たちに、希望の相手を選ぶ権利はほとんどない。両親が年齢や職業、星座などの条件で絞り込んで候補を選び、相手(の親や親族)とチャットして、これはと思った候補のプロフィールをわが子に転送する。

そこでようやく、当事者である私たちが相手とチャットを始めるか、あるいは会ってみるかどうかを決められる。でも話が順調に進んで婚約する場合、また両親の最終的な承諾を得なければならない。

インドでも出会い系の「ティンダー」を使う若者は多いが、親世代は出会い系のアプリを信用しない。インドの文化や伝統に反すると考えているからだ。

インドでは今も、結婚の90%以上が見合い結婚だとされる。結婚相手を紹介するウェブサイトも、20年ほど前からある。

お見合いアプリも数多くあるが、一番人気は「バーラト・マトリモニー」と「シャーディ」だ。スマホの画面をスワイプして候補者を絞り込める点は出会い系アプリと似ているが、お見合いアプリではカーストや星座など、ひどく「客観的」な条件で相手を絞り込める。

プロフィールには写真と経歴が表示されるが、経歴はたいてい親が書いている。親と子が共同でアカウントを管理できるようになっていて、候補者の絞り込みにはどちらからもアクセスできる。

こうしたアプリのホームページには、そこを利用して結ばれ、幸せになったというカップルの「実例」が山ほど掲載されている。当社のアプリを利用して永遠のパートナーに出会った人はこんなにいます、と言いたいのだろう。

まあ、ありふれた売り言葉だが、まんざら嘘ではなさそうだ。新型コロナウイルスのパンデミックで、こうしたアプリの利用者が増えたという報道もある。ありそうなことだ。でもその前に、見合い結婚の是非に関する価値観の相違という問題がある。

お見合いアプリについて、私がばかげていると思う機能の1つは、星座で候補者を絞り込める機能だ。最近も「バンブル」というサイトが、星座による絞り込み機能を追加している。

今、あなたにオススメ

関連ワード

ニュース速報

ワールド

トランプ氏とゼレンスキー氏が「非常に生産的な」協議

ワールド

ローマ教皇の葬儀、20万人が最後の別れ トランプ氏

ビジネス

豊田織機が非上場化を検討、トヨタやグループ企業が出

ビジネス

日産、武漢工場の生産25年度中にも終了 中国事業の
今、あなたにオススメ
MAGAZINE
特集:独占取材 カンボジア国際詐欺
特集:独占取材 カンボジア国際詐欺
2025年4月29日号(4/22発売)

タイ・ミャンマーでの大摘発を経て焦点はカンボジアへ。政府と癒着した犯罪の巣窟に日本人の影

メールマガジンのご登録はこちらから。
人気ランキング
  • 1
    日本旅行が世界を魅了する本当の理由は「円安」ではない
  • 2
    中国で「ネズミ人間」が増殖中...その驚きの正体とは? いずれ中国共産党を脅かす可能性も
  • 3
    トランプ政権の悪評が直撃、各国がアメリカへの渡航勧告を強化
  • 4
    健康寿命は延ばせる...認知症「14のリスク要因」とは…
  • 5
    アメリカ鉄鋼産業の復活へ...鍵はトランプ関税ではな…
  • 6
    使うほど脱炭素に貢献?...日建ハウジングシステムが…
  • 7
    ロシア武器庫が爆発、巨大な火の玉が吹き上がる...ロ…
  • 8
    私の「舌」を見た医師は、すぐ「癌」を疑った...「口…
  • 9
    関税ショックのベトナムすらアメリカ寄りに...南シナ…
  • 10
    パニック発作の原因の多くは「ガス」だった...「ビタ…
  • 1
    日本旅行が世界を魅了する本当の理由は「円安」ではない
  • 2
    「生はちみつ」と「純粋はちみつ」は何が違うのか?...「偽スーパーフード」に専門家が警鐘
  • 3
    「スケールが違う」天の川にそっくりな銀河、宇宙初期に発見される
  • 4
    【クイズ】「地球の肺」と呼ばれる場所はどこ?
  • 5
    女性職員を毎日「ランチに誘う」...90歳の男性ボラン…
  • 6
    教皇死去を喜ぶトランプ派議員「神の手が悪を打ち負…
  • 7
    『職場の「困った人」をうまく動かす心理術』は必ず…
  • 8
    自宅の天井から「謎の物体」が...「これは何?」と投…
  • 9
    「100歳まで食・酒を楽しもう」肝機能が復活! 脂肪…
  • 10
    トランプ政権はナチスと類似?――「独裁者はまず大学…
  • 1
    【話題の写真】高速列車で前席のカップルが「最悪の行為」に及ぶ...インド人男性の撮影した「衝撃写真」にネット震撼【画像】
  • 2
    健康寿命を伸ばすカギは「人体最大の器官」にあった...糖尿病を予防し、がんと闘う効果にも期待が
  • 3
    【クイズ】世界で最も「レアアースの埋蔵量」が多い国はどこ?
  • 4
    【心が疲れたとき】メンタルが一瞬で “最…
  • 5
    日本旅行が世界を魅了する本当の理由は「円安」では…
  • 6
    中居正広は何をしたのか? 真相を知るためにできる…
  • 7
    間食はなぜ「ナッツ一択」なのか?...がん・心疾患・抜…
  • 8
    自らの醜悪さを晒すだけ...ジブリ風AIイラストに「大…
  • 9
    北朝鮮兵の親たち、息子の「ロシア送り」を阻止する…
  • 10
    【クイズ】世界で最も「半導体の工場」が多い国どこ…
トランプ2.0記事まとめ
日本再発見 シーズン2
CHALLENGING INNOVATOR
Wonderful Story
MOOK
ニューズウィーク日本版別冊
ニューズウィーク日本版別冊

好評発売中