星座で破談は当たり前──親が相手の親とチャットする、インド版「お見合いアプリ」の憂鬱
Marriage by App
アプリに表示されるプロフィールも通常は親が書いている PHOTO ILLUSTRATION BY YUKAKO NUMAZAWAーNEWSWEEK JAPAN; SOURCE IMAGES: KAILASH KUMAR/ISTOCK, OJOEL/ISTOCK, ILLUSTRATION BY KATYAU/ISTOCK (BACKGROUND)
<今も90%以上がお見合いのインドでも、婚活アプリは普及している。しかし、利用しているのは当事者ではなく、親。「親の承諾」が不可欠なインド式結婚の伝統とは?>
私はニューヨークで1人暮らし。この週末は寝坊できると思っていたのに、父(インドにいる)からの電話で起こされた。アプリを開いて、男の経歴を読んでみろという。
「またか」と思ったけれど、私は新たな花婿候補のプロフィールに目を通した。そこに書かれている考え方や興味が、本人のものとは限らないのを承知の上で。
インドでは、こういう「お見合いアプリ」を最も熱心に利用しているのは若い人ではない。その両親だ。
当事者である私たちに、希望の相手を選ぶ権利はほとんどない。両親が年齢や職業、星座などの条件で絞り込んで候補を選び、相手(の親や親族)とチャットして、これはと思った候補のプロフィールをわが子に転送する。
そこでようやく、当事者である私たちが相手とチャットを始めるか、あるいは会ってみるかどうかを決められる。でも話が順調に進んで婚約する場合、また両親の最終的な承諾を得なければならない。
インドでも出会い系の「ティンダー」を使う若者は多いが、親世代は出会い系のアプリを信用しない。インドの文化や伝統に反すると考えているからだ。
インドでは今も、結婚の90%以上が見合い結婚だとされる。結婚相手を紹介するウェブサイトも、20年ほど前からある。
お見合いアプリも数多くあるが、一番人気は「バーラト・マトリモニー」と「シャーディ」だ。スマホの画面をスワイプして候補者を絞り込める点は出会い系アプリと似ているが、お見合いアプリではカーストや星座など、ひどく「客観的」な条件で相手を絞り込める。
プロフィールには写真と経歴が表示されるが、経歴はたいてい親が書いている。親と子が共同でアカウントを管理できるようになっていて、候補者の絞り込みにはどちらからもアクセスできる。
こうしたアプリのホームページには、そこを利用して結ばれ、幸せになったというカップルの「実例」が山ほど掲載されている。当社のアプリを利用して永遠のパートナーに出会った人はこんなにいます、と言いたいのだろう。
まあ、ありふれた売り言葉だが、まんざら嘘ではなさそうだ。新型コロナウイルスのパンデミックで、こうしたアプリの利用者が増えたという報道もある。ありそうなことだ。でもその前に、見合い結婚の是非に関する価値観の相違という問題がある。
お見合いアプリについて、私がばかげていると思う機能の1つは、星座で候補者を絞り込める機能だ。最近も「バンブル」というサイトが、星座による絞り込み機能を追加している。