最新記事

インド

星座で破談は当たり前──親が相手の親とチャットする、インド版「お見合いアプリ」の憂鬱

Marriage by App

2022年11月4日(金)16時25分
ニランジャナ・ラジャラクシミ

欧米諸国などのユーザーには奇異に思える機能かもしれないが、インドでは長年、星座は見合い結婚における重要な要素と考えられてきた。星座が理由で破談になることだって、現実にある。

星座の相性が判断材料に

たいていの親は、わが子と花嫁/花婿候補の星座の相性がよくなければ、交際を次の段階に進めることを許さない。幸いにして私の家族は星占いを信じていないが、わが家はインドでは少数派だ。

年齢や職業など、実際に相性を判断する助けになる条件についても、たいていは本人よりも親が、自分の好みを優先させる。なにしろアプリの主な利用者は親だから。

私たちがパートナーを探す上で、両親の手伝いがプラスになり得ることは否定しない。膨大な数の候補者を絞り込むとき、自分のことをよく知っている人が手伝ってくれるのはありがたい。

でも、親が自分の考えを子供に押し付け、結婚に関する大切な事柄を勝手に決めてしまうのは問題だ。

幸運なことに、私の家族は結婚に関する私の意思を尊重してくれている。うちの家族は、私が候補の男性と時間をかけて交際することを支持してくれていて、結論をせかすこともない。

でも残念ながら、私が知っている多くの家族は違う。たいていの場合、まずは双方の親同士が話をして、まとまってから、子供たちの意向を聞くという流れになる。

親同士の話がまとまる前に当人たちがデートすることは、まず許されない。当人同士で話をできるのは1回か2回だけ。2人きりのデートも、たいていは1回か2回しかできない。

こうした見合い結婚では、相手について自分自身で分析したり理解したりする時間を十分に与えられない。だから私ぐらいの年齢の人たちは、親の決めた結婚を「ひどく嫌なもの」と考える傾向がある。どうみたって息が詰まる取り決めに思えるからだ。

問題は、インドで昔から続く「結婚には親の承諾が不可欠」という考え方だ。お見合いアプリも、この考え方に沿って設計されている。

私自身は、お見合いアプリに加えて、出会い系サイトも利用している。今の出会い系サイトが理想の相手を探すのに最適の場だとは思わないし、多くのリスクが存在することも承知している。でも、相手を選ぶのは親ではなく、自分だ。そこに、せめてもの希望がある。

©2022 The Slate Group

今、あなたにオススメ

関連ワード

ニュース速報

ビジネス

豊田織機の非公開化報道、トヨタ「一部出資含め様々な

ビジネス

中国への融資終了に具体的措置を、米財務長官がアジア

ビジネス

ベッセント長官、日韓との生産的な貿易協議を歓迎 米

ワールド

アングル:バングラ繊維産業、国内リサイクル能力向上
今、あなたにオススメ
MAGAZINE
特集:独占取材 カンボジア国際詐欺
特集:独占取材 カンボジア国際詐欺
2025年4月29日号(4/22発売)

タイ・ミャンマーでの大摘発を経て焦点はカンボジアへ。政府と癒着した犯罪の巣窟に日本人の影

メールマガジンのご登録はこちらから。
人気ランキング
  • 1
    日本旅行が世界を魅了する本当の理由は「円安」ではない
  • 2
    中国で「ネズミ人間」が増殖中...その驚きの正体とは? いずれ中国共産党を脅かす可能性も
  • 3
    トランプ政権の悪評が直撃、各国がアメリカへの渡航勧告を強化
  • 4
    健康寿命は延ばせる...認知症「14のリスク要因」とは…
  • 5
    アメリカ鉄鋼産業の復活へ...鍵はトランプ関税ではな…
  • 6
    関税ショックのベトナムすらアメリカ寄りに...南シナ…
  • 7
    ロケット弾直撃で次々に爆発、ロシア軍ヘリ4機が「破…
  • 8
    ロシア武器庫が爆発、巨大な火の玉が吹き上がる...ロ…
  • 9
    ビザ取消1300人超──アメリカで留学生の「粛清」進む
  • 10
    パニック発作の原因の多くは「ガス」だった...「ビタ…
  • 1
    日本旅行が世界を魅了する本当の理由は「円安」ではない
  • 2
    「生はちみつ」と「純粋はちみつ」は何が違うのか?...「偽スーパーフード」に専門家が警鐘
  • 3
    「スケールが違う」天の川にそっくりな銀河、宇宙初期に発見される
  • 4
    【クイズ】「地球の肺」と呼ばれる場所はどこ?
  • 5
    女性職員を毎日「ランチに誘う」...90歳の男性ボラン…
  • 6
    教皇死去を喜ぶトランプ派議員「神の手が悪を打ち負…
  • 7
    『職場の「困った人」をうまく動かす心理術』は必ず…
  • 8
    自宅の天井から「謎の物体」が...「これは何?」と投…
  • 9
    「100歳まで食・酒を楽しもう」肝機能が復活! 脂肪…
  • 10
    トランプ政権はナチスと類似?――「独裁者はまず大学…
  • 1
    【話題の写真】高速列車で前席のカップルが「最悪の行為」に及ぶ...インド人男性の撮影した「衝撃写真」にネット震撼【画像】
  • 2
    健康寿命を伸ばすカギは「人体最大の器官」にあった...糖尿病を予防し、がんと闘う効果にも期待が
  • 3
    【クイズ】世界で最も「レアアースの埋蔵量」が多い国はどこ?
  • 4
    【心が疲れたとき】メンタルが一瞬で “最…
  • 5
    中居正広は何をしたのか? 真相を知るためにできる…
  • 6
    間食はなぜ「ナッツ一択」なのか?...がん・心疾患・抜…
  • 7
    日本旅行が世界を魅了する本当の理由は「円安」では…
  • 8
    自らの醜悪さを晒すだけ...ジブリ風AIイラストに「大…
  • 9
    北朝鮮兵の親たち、息子の「ロシア送り」を阻止する…
  • 10
    【クイズ】世界で最も「半導体の工場」が多い国どこ…
トランプ2.0記事まとめ
日本再発見 シーズン2
CHALLENGING INNOVATOR
Wonderful Story
MOOK
ニューズウィーク日本版別冊
ニューズウィーク日本版別冊

好評発売中