シニア男性の死亡リスク、独身は既婚より2~3倍高く 幸福感を左右する存在とは?
一人暮らしの高齢男性は幸福を感じにくくなる? goc - iStockphoto
幸せな老後を送れるのはどんな人か。批評家の杉田俊介さんは「配偶者と同居している男性のほうが、一人暮らしの男性より幸福度が高いという調査結果がある。もともと仕事中心だった男性たちが退職や熟年離婚、妻との死別などで孤立し、幸福を感じにくくなるからだろう」という――。
男性高齢者の「最後にやり残したこと」
高齢者男性についての意識調査や統計を調べてみると、高齢者男性たちの意識が不思議なほどに年齢とともに「成熟」も「成長」もしていかないということに、いささか驚かされてしまう。
高齢になっても若い女性との何らかの性的な関係を望んだり、妻にケアされて精神的に支えてもらえる人生が幸せ、という感じのままなのだ。
たとえば社会学者、坂爪真吾の『セックスと超高齢社会──「老後の性」と向き合う』(NHK出版新書、2017年)によれば、人生の「最後にやり残したこと」として、情熱的な恋愛をあげる男性高齢者が想像以上に多いという。
さらにそうした男性高齢者のニーズに対し、「シニアのための性愛講座」「下半身のアンチ・エイジング」など、「死ぬまでセックス」という風潮を煽るマーケットが存在する。坂爪が例示するのは、愛人契約市場、高齢者専門風俗、アダルトコンテンツの高齢化......などのケースである。高齢者ストーカーも問題になっているという。
年を取れば自然と達観していくわけではない
その背後には、日本の高齢男性たちが置かれた孤独感がある。
相応に年を取っていけば、性欲や承認欲求の問題は自然と解決して、人生に対して達観していく。漠然とそう考えている人も多いかもしれない。しかし、それほど都合よくはいかないのだ。これはもちろん一部の権力や地位を持った男性たちの問題に限らない。それはグロテスクなことに思える。
たとえば、パートナーを失うと、男性はガクッときて、幸福度がものすごく下がることが知られている。
これに対し、女性たちは、夫が死んでもそれほど幸福度が下がらない。これは、人生の中で積み上げてきた女性同士の友達関係や、地域コミュニティとの関係がそれなりにあると言われる。そもそも女性は、夫ひとりに依存していない。地域にもそこそこ根ざして、夫との死別後も楽しくやっていける。男性よりもそうした割合が多い。
既婚男性と独身男性、それぞれの幸福度は?
厚生労働省の統計によると、50歳以上の夫婦の離婚件数は、1970年は5416件だった。これが1990年から2000年にかけて急増し、近年は6万件前後で推移している。40年間で約10倍という計算である。