「名前覚えたからな。夜道、気をつけろ」 ゴネ得知る迷惑客がコールセンターで執拗に食い下がるワケ
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携帯電話料金を延滞すると「利用停止予告」が送られてくる。予告書には電話番号が書かれており、コールセンターには、さまざまなお客から「支払い延期の依頼」の電話がかかってくる。一体どんなやりとりが繰り広げられているのか。実録ルポ『コールセンターもしもし日記』(三五館シンシャ)より紹介しよう――。
コールセンター勤務初日 執拗にゴネる客
ついにオペレーターデビューの日が来た。
ただひたすらに緊張しかない。緊張のしすぎで指先が冷たくなっている。やさしいお客ならいいが、怒鳴りつけてくるような人に当たったらどうすればいいのか。できることならコールセンターのどこかに障害が発生して、電話が鳴らないまま1日が終わってほしい。そんなことまで考えてしまう。
障害など発生するわけもなく、業務が始まる。
電話は半分以上が支払い延期の依頼(※1)だった。料金を払わないと利用停止予告が自動的に送付される。それにはこのままだと○月○日に電波がとまると記されている。お客はそれを見ると電話してくる。
※1:「今月の料金が払えないから支払いを待ってくれ」という依頼。コールセンターに勤めて、支払えない人がこんなにも多いのかと実感した。携帯だけでなく、ガス・電気・水道までとめられたという人をときどきテレビで観る。私も貧乏生活ではあるが、幸いにしてどれも止められたことはない。
「手紙が届いたんだけどさ。必ず払うからさ。少し待ってくれ」
利用者の情報を画面に出せば、支払い状況やこれまでの応対内容がわかる。延期の依頼が初めてであれば、オペレーターがその場で3日程度の支払い延期に応ずることができる。その場合は「延期は今回限り」と約束してもらう。
しかし、何度も延期しているような人には断る。だが、ゴネればどうにかできる(※2)ことを知っている人は、執拗(しつよう)に食い下がる。
※2:コールセンターで働いてわかったのはゴネることの大切さだ。ゴネる人は物わかりのいい人よりも得をしている気がする。
「前回延期した際に、今回限りとお約束していただいてますね?」
「それはわかるんだよ。わかるけど頼む。仕事で使ってるんだ。頼むよ」
「本来できないことを前回やったわけですから......」
「わかる。わかるけど頼む。お願い。お願いします」
こんな人はまだいい。中にはしてもらって当たり前という人もいる。
怒鳴られたり脅されたり...利用停止日の悪夢
「払えねえから支払い日を延ばせ」
「今回限りと先月お約束......」
「ガタガタ言ってんじゃねえよ! 10日には払うって言ってんだろ!」
「それでしたらお支払い後の利用再開となり......」
「ふざけんなこの野郎! おめえじゃ話になんねえ! 上に代われ!(※3)」
各グループにはSVと呼ばれるスーパーバイザーが2人ずつ配置されている。この料金センターを運営しているドコモサービス(※4)の正社員もいれば派遣社員もいる。年齢も性別もさまざまだが、SVはこうした難しいお客をあしらうことが仕事だ。SVがお客と1時間以上やり合うことは珍しくなかった。
※3:「上に代われ!」と怒鳴られて、SVを探すが、全員応対中だったことがある。「上の者がみな話し中なので、私で勘弁してください」と頼んだら、「おめえしかいねえのか。しょうがねえなあ」と納得した。変なところで物わかりのいいクレーマーもいる。
※4:ドコモの料金業務や人材派遣業を営んでいたドコモのグループ企業。吸収合併され、現在はドコモCSとなる。