「奨学金880万円」借りて大学進学した彼女が東京で見つけた仕事とは
その後、大学を卒業した志保さんは、1社を経て現在も勤務する会社に中途で入社することになる。名画座通いをしていたことを考えると、映画会社なども志望しそうだが......尋ねると、「一時期考えていたこともありましたけど、やめたんです」とのこと。
「大学時代はひとりでいることも多くて、そのせいか、鬱っぽくなった時期もあったんです。そんな時、自分を支えてくれたのが本でした。映画よりも、寄り添ってくれている感じがしたんです。だから、本に関わる仕事がしたいと思うようになって。
あと、友人の誘いで、映画作りに関わったことも影響しています。映画はひとりで見られるけど、作るのは大人数じゃないですか。だから、『自分には合わないな』って気づいたんです。今までに触れてきた数は映画のほうが多かったけど、仕事にしたいな、できそうだなと思ったのは本だったというか。自分としても、意外な発見でしたね」
そんな、本に関わる現在の日々は、給料こそ、そこまで高くはないものの、「それでも今の仕事は楽しいです」とのことだ。
「高校生までは将来のことなんて、何にも考えていませんでした。でも、東京の大学に来たことで、今の仕事につきたいと思うようになった。ずっと地元に住んでいたら、名画座通いも出版社でのバイトも自主映画製作の手伝いもできなかっただろうし、そうなると、今の仕事も浮かばなかっただろうなって。選択肢が増えたという意味では、奨学金もらっておいてよかったなとは思います」
地元を出て、東京の大学に進学したことによって、自分のやりたいことを発見し、今はやりたかった仕事をしている。それは、奨学金を借りたことでかなったといっても過言ではないだろう。
金銭感覚に変化はあった?
もっとも、そんな"美談"めいた話は、奨学金返済にはなんら関係のない事情である。媒体特性上、大人の読者が多いことは理解しつつ、本連載は「高校生が参考にできる、リアルな事例を積み上げる」ことを目的のひとつとしているので、あえてねちっこく、お金の部分に切り込んでいきたい。
まず現在、志保さんは毎月約3万7000円を返済している。結果、社会人生活のなかで返済に困ることもあったようだ。
「今は給料も上がったので『月々4万円弱の出費はデカいけど、思ったより大丈夫』という感じです。ただ社会人1年目のときは、給料もそんなにもらえていなかったので『デカい出費だな』と思っていましたね」