「奨学金880万円」借りて大学進学した彼女が東京で見つけた仕事とは
小さくはない出費を抱える今、志保さんは切り詰めた生活をしている......のかと言うと、そういうわけでもないようだ。
「私、節約ができないんです。服とか、高い買い物はさすがに控えていますけど、食費を切り詰めたりすることはできないし、しかも、在宅勤務が多いので、ついついUber Eatsとかも頼んじゃう。そのせいか、クレジットカードの支払いも、家賃や奨学金とは別で毎月15万円くらいあります。『貯金しなきゃな』とは思っているのですが、一回上げた金銭感覚を下げるのって難しいんですよね」
金銭感覚はさまざまである。ゆえに、月の支出がいくら以上なら散財しているなどと、わかりやすい基準で判断することはできないが、「自分でもそこまで使っている気がしない、何に使っているのかわからないんです」とのことで、どうやらちょこちょこ小さな出費を積み重ねるタイプらしい。
さて、ここで出てくるのが、志保さんが「借りすぎた」とインタビュー冒頭で語った奨学金の金額である。大学在学中、志保さんは第1種、第2種を合計して月々18万4000円借りていた。そこに、バイト代が平均で8万円ほど加わる。合計すると26万円強という数字になり、これは、志保さんの新卒時代の手取りよりも多い数字だった。
もちろんここから、授業料の自身の負担分や、家賃、交通費などを支払うので、全額を自由に使えるわけではなかったが、それでも毎月10万円程度は生活費や娯楽費に使っていたようだ。
この数字が多いか少ないかは人によって判断が分かれそうだが、「友達と旅行に行ったり、わかりやすい散財をした記憶はないんですよ」とのこと。
大きな出費をドカンとするより、小さな出費をコツコツ積み重ねるほうが記憶に残りにくいし、結果的に散財にもなりうる......という教訓話を、志保さんは地でいっているのかもしれない。
お金というものは概して、使うのは簡単な反面、稼ぐのは難しいものだ。そして、そのことを親や教師が教えてくれるとは限らない。
どの程度バイトできるかは、学業の忙しさにも影響を受けるため、実際に大学生活が始まる前に想像するのもなかなか難しいかもしれないが、今後奨学金を借りようと考えている高校生は、志保さんの例を参考にしてみてほしい。
千駄木 雄大
編集者/ライター
1993年、福岡県生まれ。出版社に勤務する傍ら、「ARBAN」や「ギター・マガジン」(リットーミュージック)などで執筆活動中。