最新記事

環境

東京から生まれる、森林資源の好循環

2021年12月15日(水)11時00分
※TOKYO UPDATESより転載
森林資源

NurPhoto/Getty Images

<全国各地の木材が使われた選手村ビレッジプラザ、国産木材をふんだんに使用した新国立競技場、日本の「木の文化」を表現した開会式のパフォーマンス......。一年遅れで開催された東京2020大会は、「森の国・ニッポン」を世界に知らしめる機会となった>

全国63の自治体から提供された木材

新型コロナウイルス感染防止のため、厳戒態勢下で行われた東京2020大会。各国の選手が東京で過ごす期間、その生活を支えていたのが東京都中央区に設けられた交流施設「選手村ビレッジプラザ」だ。

選手村ビレッジプラザは5棟の木造の施設から成り、カフェや郵便局、クリーニング店、美容室、メディアセンターなど、さまざまな目的で利用されていた。

この施設に使われていた木材は、全国63の自治体から無償で借り入れがされたもの。そのなかには、東京都の木も含まれていた。実は東京都の面積のおよそ4割が森林で、古くから林業が盛んだったのだ。

これまでの大会で選手村に使用された建物や仮施設は、大会後に取り壊されることが多かった。しかし、今回のビレッジプラザは木材をパズルのように組み合わせて使用することで、大会後に木材を解体し、各地に戻すことで再利用を促す計画になっていた。なぜなら木は加工された後も長期間にわたり炭素を蓄えることができ、地球温暖化の対策として重要な役割を果たすからだ。

各自治体への返却は2022年2月までに随時行われるという。木材には、「多様性と調和」を表現する大会のエンブレムをあしらった焼き印が押されている。各地に戻った木材が東京2020大会を語り継ぐきっかけになるとともに、木材の再利用が活性化されることで、2050年までに世界が目指す「脱炭素社会」の実現にも一役買うことは間違いない。

「環境」と「持続可能性」が重要なテーマとなった本大会。ビレッジプラザの木材も東京2020大会が残すレガシー(遺産)のひとつになるだろう。

tokyoupdates211215_2.jpg

Clive Rose/Getty Images

日本建築の技術が応用された新国立競技場

本大会では、ビレッジプラザ以外にも日本の木材や木造建築が活用された。代表的なものはメインスタジアムとなった新国立競技場だ。

新国立競技場には随所に木材や緑が使用され、自然の恵みを生かした緑豊かな建造物となった。明治神宮外苑の自然とも調和し、「杜のスタジアム」とも呼ばれている。建造には日本建築の特徴である軒庇を使用。日射しを和らげて風の流れを促し、空調設備を必要としないというエコロジーな仕組みになっている。

今、あなたにオススメ
ニュース速報

ビジネス

ビットコインが10万ドルに迫る、トランプ次期米政権

ビジネス

シタデル創業者グリフィン氏、少数株売却に前向き I

ワールド

米SEC委員長が来年1月に退任へ 功績評価の一方で

ワールド

北朝鮮の金総書記、核戦争を警告 米が緊張激化と非難
今、あなたにオススメ
MAGAZINE
特集:超解説 トランプ2.0
特集:超解説 トランプ2.0
2024年11月26日号(11/19発売)

電光石火の閣僚人事で世界に先制パンチ。第2次トランプ政権で次に起きること

メールマガジンのご登録はこちらから。
人気ランキング
  • 1
    日本人はホームレスをどう見ているのか? ルポに対する中国人と日本人の反応が違う
  • 2
    Netflix「打ち切り病」の闇...効率が命、ファンの熱が抜け落ちたサービスの行く末は?
  • 3
    「1年後の体力がまったく変わる」日常生活を自然に筋トレに変える7つのヒント
  • 4
    【ヨルダン王室】生後3カ月のイマン王女、早くもサッ…
  • 5
    NewJeans生みの親ミン・ヒジン、インスタフォローをす…
  • 6
    元幼稚園教諭の女性兵士がロシアの巡航ミサイル「Kh-…
  • 7
    ウクライナ軍、ロシア領内の兵器庫攻撃に「ATACMSを…
  • 8
    「会見拒否」で自滅する松本人志を吉本興業が「切り…
  • 9
    北朝鮮兵が「下品なビデオ」を見ている...ロシア軍参…
  • 10
    若者を追い込む少子化社会、日本・韓国で強まる閉塞感
  • 1
    朝食で老化が早まる可能性...研究者が「超加工食品」に警鐘【最新研究】
  • 2
    自分は「純粋な韓国人」と信じていた女性が、DNA検査を受けたら...衝撃的な結果に「謎が解けた」
  • 3
    「会見拒否」で自滅する松本人志を吉本興業が「切り捨てる」しかない理由
  • 4
    北朝鮮兵が「下品なビデオ」を見ている...ロシア軍参…
  • 5
    朝鮮戦争に従軍のアメリカ人が写した「75年前の韓国…
  • 6
    アインシュタイン理論にズレ? 宇宙膨張が示す新たな…
  • 7
    沖縄ではマーガリンを「バター」と呼び、味噌汁はも…
  • 8
    クルスク州の戦場はロシア兵の「肉挽き機」に...ロシ…
  • 9
    メーガン妃が「輝きを失った瞬間」が話題に...その時…
  • 10
    中国富裕層の日本移住が増える訳......日本の医療制…
  • 1
    朝食で老化が早まる可能性...研究者が「超加工食品」に警鐘【最新研究】
  • 2
    北朝鮮兵が「下品なビデオ」を見ている...ロシア軍参加で「ネットの自由」を得た兵士が見ていた動画とは?
  • 3
    外来種の巨大ビルマニシキヘビが、シカを捕食...大きな身体を「丸呑み」する衝撃シーンの撮影に成功
  • 4
    朝鮮戦争に従軍のアメリカ人が写した「75年前の韓国…
  • 5
    自分は「純粋な韓国人」と信じていた女性が、DNA検査…
  • 6
    北朝鮮兵が味方のロシア兵に発砲して2人死亡!? ウク…
  • 7
    「会見拒否」で自滅する松本人志を吉本興業が「切り…
  • 8
    足跡が見つかることさえ珍しい...「超希少」だが「大…
  • 9
    モスクワで高層ビルより高い「糞水(ふんすい)」噴…
  • 10
    ロシア陣地で大胆攻撃、集中砲火にも屈せず...M2ブラ…
日本再発見 シーズン2
CHALLENGING INNOVATOR
Wonderful Story
MOOK
ニューズウィーク日本版別冊
ニューズウィーク日本版別冊

好評発売中