最新記事

0歳からの教育

男女の違いは「生まれ」か「育ち」か、専門家がたどり着いた結論は?

Fighting Gender Bias

2021年12月16日(木)18時25分
井口景子(ジャーナリスト)
お人形遊びが好きな男の子、車に夢中な女の子

お人形遊びが好きな男の子、車に夢中な女の子――典型的な男女の規範とは逆の方向に後押ししてあげるのもいい FROM LEFT: TATYANA VYC-SHUTTERSTOCK, OKSANA SHUFRYCH-SHUTTERSTOCK

<好きな遊びや行動パターン、男女の違いは生まれつき? 男らしさ/女らしさの過度な押し付けは有害になることもある。>

玩具売り場といえば、人形やままごとセットが並ぶ女の子向けコーナーと、怪獣のフィギュアやラジコンカーが並ぶ男の子向けコーナーに区分けされているもの──そんな常識が変わりつつある。

米小売り大手のターゲット社は男女別だった陳列棚を統合し、玩具専門店トイザらスは多くの国で商品に付ける性別表記を廃止。バービー人形で知られる米マテル社が発売した「ジェンダーフリー」の人形シリーズも人気を博している。

こうした変化は最近のパパママ世代の意識の変化を反映している。

多様性やLGBTの権利を重んじる教育を受けて育った世代が親になるにつれ、伝統的な男らしさ/女らしさを押し付けないジェンダー・ニュートラルな子育てをしたいという考え方が欧米を中心に急速に広がっている。

一方で、いざ親になってみると困惑の声も上がる。わが子をジェンダーの型にはめないよう細心の注意を払っているのに、2歳の娘はぬいぐるみと絵本が大好きで、4歳の息子は電車と戦いごっこに夢中。

やっぱり女の子と男の子には生まれつき、異なるOSがインストールされているのだろうか。

男女の違いが「生まれ」か「育ち」かという疑問は長年の論争の的だが、脳科学や心理学の専門家がたどり着いた結論は多くの親の直感とは異なるかもしれない。

確かに、男女間には生物学的な差異が存在する。例えば右脳と左脳をつなぐ脳梁(のうりょう)は女性のほうが大きく、幼児期の脳の発達の仕方や速度にも差がある。

だが、そうした違いが男女の能力や行動の違いに直結することを示す証拠は見つかっておらず、性別による違いより個人間の差異のほうがずっと大きいという見方が圧倒的に優勢だ。

それでもなお幼い男の子が冒険好きで、女の子にピンクの服を好む傾向が顕著に見られるとしたら、それは周囲の大人の反応や社会的な圧力によって小さな違いがじわじわと補強された影響かもしれないと、『ジェンダー化された脳』の著者で英アストン大学名誉教授のジーナ・リッポンは指摘する。

人形で遊ぶ女児に「女の子は優しいね」と声を掛ければ「女の子は常に優しくあるべき」という価値観が強化される。一方、乱暴な言動を「男の子だから仕方がない」と見逃せば、「好き勝手に振る舞っていい」という誤ったシグナルを送りかねない。

しかも大半の人は、自身のジェンダーバイアスに無自覚だ。

生後11カ月の赤ちゃんに傾斜の異なるスロープではいはいをさせた実験では、女児の親はわが子の運動能力を低めに、男児の親は高めに予測する傾向があった(実際の運動能力に男女差はなかった)。

今、あなたにオススメ
ニュース速報

ビジネス

ECB高官、トランプ関税は世界経済の安定脅かすと警

ビジネス

英サービスPMI、3月52.5に下方改定 米関税や

ビジネス

アングル:トランプ波乱の中で「光明」か、三菱商の還

ワールド

焦点:米相互関税に政治リスク、中間選挙へ共和党に逆
今、あなたにオススメ
MAGAZINE
特集:引きこもるアメリカ
特集:引きこもるアメリカ
2025年4月 8日号(4/ 1発売)

トランプ外交で見捨てられ、ロシアの攻撃リスクにさらされるヨーロッパは日本にとって他人事なのか?

メールマガジンのご登録はこちらから。
人気ランキング
  • 1
    あまりにも似てる...『インディ・ジョーンズ』の舞台になった遺跡で、映画そっくりの「聖杯」が発掘される
  • 2
    自らの醜悪さを晒すだけ...ジブリ風AIイラストに「大はしゃぎ」する人に共通する点とは?
  • 3
    中居正広は何をしたのか? 真相を知るためにできる唯一の方法
  • 4
    8日の予定が286日間に...「長すぎた宇宙旅行」から2…
  • 5
    【クイズ】世界で最も「レアアースの埋蔵量」が多い…
  • 6
    アメリカで「最古の銃」発見...いったい誰が何のため…
  • 7
    イラン領空近くで飛行を繰り返す米爆撃機...迫り来る…
  • 8
    磯遊びでは「注意が必要」...6歳の少年が「思わぬ生…
  • 9
    博士課程の奨学金受給者の約4割が留学生、問題は日…
  • 10
    「最後の1杯」は何時までならOKか?...コーヒーと睡…
  • 1
    【クイズ】世界で最も「レアアースの埋蔵量」が多い国はどこ?
  • 2
    自らの醜悪さを晒すだけ...ジブリ風AIイラストに「大はしゃぎ」する人に共通する点とは?
  • 3
    中居正広は何をしたのか? 真相を知るためにできる唯一の方法
  • 4
    ロシア空軍基地へのドローン攻撃で、ウクライナが「…
  • 5
    ガムから有害物質が体内に取り込まれている...研究者…
  • 6
    8日の予定が286日間に...「長すぎた宇宙旅行」から2…
  • 7
    一体なぜ、子供の遺骨に「肉を削がれた痕」が?...中…
  • 8
    磯遊びでは「注意が必要」...6歳の少年が「思わぬ生…
  • 9
    現地人は下層労働者、給料も7分の1以下...友好国ニジ…
  • 10
    あまりにも似てる...『インディ・ジョーンズ』の舞台…
  • 1
    中国戦闘機が「ほぼ垂直に墜落」する衝撃の瞬間...大爆発する機体の「背後」に映っていたのは?
  • 2
    「さようなら、テスラ...」オーナーが次々に「売り飛ばす」理由とは?
  • 3
    「テスラ時代」の崩壊...欧州でシェア壊滅、アジアでも販売不振の納得理由
  • 4
    「一夜にして死の川に」 ザンビアで、中国所有の鉱山…
  • 5
    テスラ失墜...再販価値暴落、下取り拒否...もはやス…
  • 6
    「今まで食べた中で1番おいしいステーキ...」ドジャ…
  • 7
    市販薬が一部の「がんの転移」を防ぐ可能性【最新研…
  • 8
    テスラ販売急減の衝撃...国別に見た「最も苦戦してい…
  • 9
    テスラの没落が止まらない...株価は暴落、業績も行き…
  • 10
    【クイズ】世界で最も「レアアースの埋蔵量」が多い…
トランプ2.0記事まとめ
日本再発見 シーズン2
CHALLENGING INNOVATOR
Wonderful Story
MOOK
ニューズウィーク日本版別冊
ニューズウィーク日本版別冊

好評発売中