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男性の平均寿命トップから36位へ 沖縄があっという間に「短命県」になったシンプルな理由

実は私たちはもっと早いうちから食生活の変化に気付いていました。沖縄は米軍基地の駐留地でもあることから、早くからファストフード店が入ってきており、食の欧米化がどんどん進んでいました。それとともに肥満が増え、健診の数値も悪化していっていました。

まさに沖縄が短命になるプロセスを目の当たりにしてきたわけです。長寿宣言は1995年でしたが、その前から変化は徐々に表れていたのです。それはきっと県側も気づいていたことでしょう。「今出さなければ、今後はもう出すことができない」というギリギリのタイミングで行ったのが長寿宣言だったのではないかと思うのです。

実際、沖縄が長寿県1位の座から陥落したのはこの長寿宣言から5年後のことでした。最新の調査(2015年)は男性36位、女性7位と、さらに順位を下げています。さらには65歳未満(30~64歳)、いわゆる働き盛り世代の死亡率は男性でワースト5位、女性も同じくワースト4位と、健康状態がひじょうに厳しい状況にあることがうかがい知れます。

沖縄の健康を取り戻す計画が進行中

今、長寿・沖縄を取り戻す計画が進行しています。名付けて「元気沖縄プログラム」です。琉球大学の益崎裕章教授や、本書の監修者である東海大学・森真理准教授とともに、2040年までに沖縄の長寿を取り戻す取り組みを行っています。

まず小学生の尿検査を行い、一人一人にデータを返します。この「データを返す」ということが重要です。ナトリウムが多いから塩辛いものを食べている、カリウムが足りないから野菜が足りないと、子どもにも自分の食事の不足や過剰がわかります。

それから数カ月してまた検査をすると、みんな数値がよくなっているのです。検査をするというだけで栄養状態が改善しているのです。子どもの食事が変わるということは、家庭の食事が変わるということです。すると当然、大人も変わっていきます。

こうして子どものうちから正しい食生活を身につけ、なおかつ沖縄の伝統料理を取り戻すことで、長寿県沖縄が復活してくれることを心から願っています。

わずか14年で平均寿命が10年も短くなったエクアドルの長寿地域

長寿地域が消滅していった例として沖縄をご紹介しました。ほかにも、すばらしい長寿文化が失われていくケースがありました。エクアドルのビルカバンバなどもその例です。

世界有数の長寿村だったのですが、「ビルカバンバで暮らせば長生きできる」とアメリカ人が大挙して押し寄せ、たくさんのリゾートホテルができたりした結果、現地の人々の生活にどんどんアメリカ文化が入ってきました。

食生活もアメリカンスタイルに変化してしまいました。そのために、わずか14年で平均寿命が約10歳も短くなるほどの衝撃的な健診データが出たのです。このビルカバンバも含め、どの地域にも共通しているのはほんの数年から十数年の間に食文化が崩壊していることです。

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