赤ちゃんは痛みを感じない、と30年前まで考えられていた
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<小さな頭の中では何が起きている? 行動観察や脳スキャンデータで判明した赤ちゃん脳の6つの不思議。本誌SPECIAL ISSUE「0歳からの教育 発達編」より>
意思伝達力の弱い赤ちゃんの脳について理解することは難しい。何を考え、どう感じているかを本人に聞くことはできないから、行動観察や脳のスキャンデータに頼るしかない。それにもかかわらず、小さな脳の解明は近年、急速に進んでいる。新たな6つの発見を紹介すると......。
1. 大人と同じように痛みを感じる
87年の臨床試験で証明されるまで、多くの専門家が赤ちゃんは痛みを感じないと考えていた。その常識が覆されても、痛みの処理状況は不明だった。
しかし15年、オックスフォード大学の研究チームがfMRI(機能的磁気共鳴映像法)を用いて痛みの刺激に対する脳の反応を観察。それによれば、痛みを加えたときに乳幼児も大人と同じ脳の領域が活発になっていた。チクチク刺すようなかすかな痛みに対しても、その4倍の痛みを与えた大人と同様の反応を示すことが判明。つまり痛みを感じやすいことが分かった。
2. 親の愛には痛みを軽減する効果あり
ニューヨーク大学のチームが行った研究では、子供のラットが痛みを感じたとき数百の遺伝子が発現するのが確認された。だが母親のラットがそばにいるときには、遺伝子の発現は100以下だったという。
この研究は、母親の存在が、苦痛を感じる乳幼児の脳に短期的な影響を及ぼせることを初めて明らかにした。研究チームは長期的効果も検証。すると母親がそばにいる安心感は、幼い発達途上の脳の神経回路を修正する働きがあることが分かった。
3. 夫婦げんかの悪影響
子供の前で争い、怒りの声を上げるのは、脳の発達に影響を及ぼす可能性がある。赤ちゃんは言葉が分からなくても、声のトーンの違いに敏感だ。オレゴン大学の研究では、乳幼児は「眠っているときでさえ、感情的な口調に脳の特定の領域が反応した」。また、争いの多い家の子供ほど、視床下部などストレスと関連する脳の領域が怒りの口調に強く反応した。
4. 思った以上に早くから表情を認識する
スウェーデンの研究チームが人間の顔のアニメを使った実験を行ったところ、赤ちゃんは生後2〜3日から表情の違いを見分けられた。ただし、ごく至近距離の場合だ。