株価乱高下でも平常心を保つヒント。損切りとパニック売りの違い、プロスペクト理論、参照点依存性...
東京株式市場は8月5日の過去最大の下落幅から、6日には急反発して過去最大の上げ幅へ Willy Kurniawan-REUTERS
<8月5日に4451円と過去最大の下落、6日には一転して3217円と過去最大の上昇を記録した日経平均。投資におけるメンタルの重要性を改めて知った人も多いかもしれない>
株式投資においては、ファンダメンタルズやテクニカル分析といった専門知識と同じくらい、メンタルのコンディションが重要です。どんなに知識が豊富で経験を十分に積んだ投資家でも、〇〇ショックといった暴落のときに冷静な判断ができずに市場から退出してしまうこともあるのです。
投資で失敗しないためには、「投資心理学」を学んでおくことも大切です。私は、平常心を保つために「瞑想(メディテーション)」を取り入れています。
プロスペクト理論とは
人には損失を避けようとする傾向があり、状況に応じて判断が変わる、という意思決定の理論を「プロスペクト理論」と言います。プロスペクト理論によれば、人は不確実な状況であっても「見込み」で期待を歪め、客観的な事実だけで合理的な意思決定をすることができなくなります。
プロスペクト理論は行動経済学の一部であり、心理学者のダニエル・カーネマンとエイモス・トベルスキーによって提唱されました。彼らの業績は行動経済学の基礎を築き、その功績から2002年にノーベル経済学賞を受賞しています。
ナンピン買いの弊害
このプロスペクト理論の中心をなす考えが「損失回避性」です。これは、同じ金額でも損失の苦痛は利益の喜びの2倍になる、という考えです。
損失回避性の代表が「ナンピン買い」です。ナンピン買いとは、株価下落時に追加投資を行い、平均取得コストを下げることです。ナンピン買いによって、元の購入価格に戻った場合には利益を得ることができます。ナンピン買いは、相場全体が悪化している場合には効果的な手段となることもあります。
ただし、企業の業績悪化など個別の要因による株価下落の場合には、ナンピン買いを行ってもリスクを増大させるだけです。そうであったとしても、損失の苦痛を和らげるためにナンピン買いをしてしまう投資家が多いのです。
さらにナンピン買いでは、「参照点依存性」という心理的な要素も影響します。投資家は、絶対値ではなく購入価格(=参照点)からの変化に基づいて判断する傾向があるからです。本来ならば、企業の業績などをもとに株価が割安かどうかを判断すべきでしょう。
しかし、購入価格が参照点となって、その価格からの下落があれば「割安」と判断してナンピン買いを行ってしまう傾向があるのです。
(参考記事)株価はどこまで下がるのか? 「節目」がわかれば暴落だって怖くない!
損切りと狼狽売りの違い
初心者は損切り(ロスカット)が苦手だとよくいわれます。損失が出てもそのまま保有し、株価が戻るのを待つ傾向があるからです。しかし、損失を確定してでも売るべきタイミングを見極めることが投資判断の鍵です。だからこそ、初心者は損切りをためらわないようにアドバイスされるのです。