自社株買いでストップ高!「日本株」の評価が変わり始めた理由とは?
直近の大規模な自社株買い
2023年に入って発表された大規模な自社株買いを確認しておきましょう。
■大日本印刷<7912>■
大日本印刷<7912>は、3月9日に3か年の中期経営計画の骨子を発表しました。その中で、発行済み株式数の約15%に当たる4000万株の大規模な自社株買いの取得枠を設定するとしました。同時に、発行済み株式数7.88%相当の2500万株の自社株消却も発表しています。
中期経営計画の骨子では、グループの目標としてROE10%、PBR1倍を早期に超えることが大々的に書かれており、東証の取り組みが反映されるかたちとなりました。
株価は、翌10日に昨年来高値4160円を付けましたが、その後はいったん売られています。
■岡三証券グループ<8609>■
岡三証券グループ<8609>も、自社株買いを巡る派手な値動きがみられました。
3月24日に発表されたのは、2024年3月期からの新たな中期経営計画の期間中に、PBR1倍を超えるまで年間10億円以上の自社株買いを継続的に実施する、という内容でした。新たな中期経営計画は28年3月期までなので向こう5年間は、継続的に自社株買いを続けるという宣言です。
これを受けて、翌25日の株価はストップ高となりました。
日本株、ついに変化の時を迎えるか
アメリカ株の長期の上昇を支えてきた要因のひとつは、巨額の自社株買いでした。最近はコロナ禍で落ち着きをみせていますが、なかには、株価を上昇させるために、借入金をしてまで自社株買いを行う経営者も多くいました。
日本でも、東証によるPBR1倍割れ企業の是正の取り組みなどもあり、2023年も引き続き、自社株買いを発表する企業はさらに増えるとみられています。
日本企業は内部留保率も高く、株主資本が潤沢な企業も多いため、株主還元による日本株の評価はまさにこれから変わろうとしている、と予感させる流れが起きているのです。株主還元が本格化する足音を、しっかりと聞き逃さないようにしましょう。
[執筆者]
佐々木達也(ささき・たつや)
金融機関で債券畑を経験後、証券アナリストとして株式の調査に携わる。市場動向や株式を中心としたリサーチやレポート執筆などを業務としている。ファイナンシャルプランナー資格も取得し、現在はライターとしても活動中。株式個別銘柄、市況など個人向けのテーマを中心にわかりやすさを心がけた記事を執筆。