「命令される側になりたい...」女性CEO×年下男性のSM欲、映画『ベイビーガール』の「普通じゃないセックス」
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それでも、本作が説教くさくも深刻ぶってもいないのは、セックスに対するユーモアと遊び心のおかげだ。
確かに、ロミーは結婚生活と仕事上の評判を破壊しかねない危険なゲームをしている。彼女は支離滅裂な選択の報いを受けるのか。そうであれば、どんな形で? そんな緊張感があるせいで、本作を「エロチックスリラー」と定義する向きもある。
だが、サスペンスは比較的小さな要素にすぎない。結局のところ、本作はエロチックコメディーだ。新たなプレイを仕掛けるサミュエルは大抵、薄笑いを浮かべている。
物語の展開に物足りないところはあるが、抑圧状態のロミーを解放しようとするサミュエルの行動の裏に、より卑劣な動機がある可能性はほのめかされている。
2人のいたちごっこがサミュエルにとって魅力的なのは、彼自身の「倒錯」のせいか。それとも、上司である女性との力関係が逆転しているからか。
パワハラの被害者ではないかという指摘を笑い飛ばす様子なのは、虚勢を張っているからか。あるいは、主導権を握っているのは自分だと確信しているからなのか。
サミュエルが最後に登場するのはロミーの視点から描く幻想の中で、彼の内面はうかがえない。女性の欲望に焦点を当てたテーマに忠実な選択だが、サミュエルは不透明な存在で、ロミーにも観客にも手が届きそうで届かない。