スポーツでの脳震盪が「鬱や自殺」に繋がることも...選手の脳を守る「血液検査」の可能性

TACKLE THE ISSUE AHEAD OF THE GAME

2024年12月25日(水)15時26分
ジョー・コズラウスキー、パンドラ・デワン(いずれも本誌記者)

研究員

より簡便で正確な検査技術の開発が急ピッチで進む AP/AFLO

だが状況は変わりつつあるのかもしれない。米食品医薬品局は18年2月、外傷性脳損傷を診断するアメリカ初の血液検査を認可した。今年4月にアボット・ラボラトリーズが発表した持ち運び可能な機器なら、患者のベッドの脇に運んで使用できる。

現在は研修を受けた医療従事者が医療機関で使うことしかできない。だがアボットの広報担当者によれば、同社はこの検査機器を「必要などんな場所でも、自動車事故や衝突事故の現場やスポーツイベントでも」使える未来を思い描いているという。


この検査の仕組みについて、イスラエルのシェバ医療センターの神経学者で臨床研究責任者のラケル・ガードナーはこう説明する。

「この技術の柱となっているのは2つのタンパク質だ。いずれも脳の損傷もしくは中枢神経系の損傷を示し、血液検査で測定できる。(タンパク質の)1つは神経の損傷に関係するマーカーで、もう1つは脳細胞を支える神経膠(しんけいこう)の損傷を示している」

クリアすべき課題は山積み

ガードナーの言う2種のタンパク質とは、脱ユビキチン化酵素の1種とグリア線維性酸性タンパク質だ。

「外傷性の脳損傷を受けて脳内で出血が起きると、この2種のタンパク質の血中濃度が上昇する」と、ガードナーは言う。「この2種のバイオマーカーは1つの検査で測定でき、負傷の直後と24時間後に脳の外傷を評価できる」

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