スポーツでの脳震盪が「鬱や自殺」に繋がることも...選手の脳を守る「血液検査」の可能性

TACKLE THE ISSUE AHEAD OF THE GAME

2024年12月25日(水)15時26分
ジョー・コズラウスキー、パンドラ・デワン(いずれも本誌記者)
脳震盪で倒れる直前のトゥア・タゴバイロア選手

果敢にファーストダウンを狙ったタゴバイロアはこの後、脳震盪で倒れた AP/AFLO

<元NFL選手の3分の1が脳の慢性疾患を抱えている──検査の進歩で脳震盪の後遺症から選手を救えるかもしれない>

プロのスポーツ選手は現実の世界に生きるスーパーヒーローかもしれないが、不死身ではない。それを象徴したのが、9月12日に行われたNFL(全米プロフットボールリーグ)の試合で、マイアミ・ドルフィンズのスター選手、トゥア・タゴバイロア(Tua Tagovailoa)が倒れた場面だ。

バッファロー・ビルズに31対10とリードされた第3クオーター、クオーターバック(QB)のタゴバイロアはファーストダウンを狙って走った。そしてビルズのディフェンダーに向かって頭を下げて突っ込み、そのまま倒れた。NFLでプレーを始めて3度目の脳震盪(のうしんとう)だった。

脳震盪で倒れたトゥア・タゴバイロア選手



先ごろ発表されたハーバード大学の研究によれば、元NFL選手の3人に1人が「自分は繰り返し頭部を負傷したことに関連する脳の慢性疾患を抱えている」と考えているという。ショッキングな数字だが、この種の脳の疾患を確定診断する方法は、死後の解剖以外にないのが現状だ。

だが将来、血液検査がそうした目にも見えなければCTスキャンにも映らない脳の損傷を診断する一助となるかもしれない。そうすれば、脳の傷が癒えないうちに選手が試合に復帰することも防げるかもしれない。

タゴバイロアがやったことは自らの体を犠牲にしてチームのために戦うという、QBに期待される行動だった。だが、そうした自己犠牲の考え方はもう古い。話が脳への打撃となれば、なおさらだ。

SDGs
使うほど脱炭素に貢献?...日建ハウジングシステムが「竹建築」の可能性に挑む理由
あわせて読みたい
ニュース速報

ビジネス

アングル:保護政策で生産力と競争力低下、ブラジル自

ワールド

焦点:アサド氏逃亡劇の内幕、現金や機密情報を秘密裏

ワールド

米、クリミアのロシア領認定の用意 ウクライナ和平で

ワールド

トランプ氏、ウクライナ和平仲介撤退の可能性明言 進
あわせて読みたい
MAGAZINE
特集:トランプショック
特集:トランプショック
2025年4月22日号(4/15発売)

大規模関税発表の直後に90日間の猶予を宣言。世界経済を揺さぶるトランプの真意は?

メールマガジンのご登録はこちらから。
人気ランキング
  • 1
    しゃがんだ瞬間...「えっ全部見えてる?」ジムで遭遇した「透けレギンス」投稿にネット騒然
  • 2
    【クイズ】売上高が世界1位の「半導体ベンダー」はどこ? ついに首位交代!
  • 3
    【クイズ】世界で最も「半導体の工場」が多い国どこ? 1位は意外にも...!?
  • 4
    「生はちみつ」と「純粋はちみつ」は何が違うのか?.…
  • 5
    【渡航注意】今のアメリカでうっかり捕まれば、裁判…
  • 6
    「2つの顔」を持つ白色矮星を新たに発見!磁場が作る…
  • 7
    「100歳まで食・酒を楽しもう」肝機能が復活! 脂肪…
  • 8
    300マイル走破で足がこうなる...ウルトラランナーの…
  • 9
    今のアメリカは「文革期の中国」と同じ...中国人すら…
  • 10
    トランプ関税 90日後の世界──不透明な中でも見えてき…
  • 1
    間食はなぜ「ナッツ一択」なのか?...がん・心疾患・抜け毛の予防にも役立つ可能性【最新研究】
  • 2
    【クイズ】世界で最も「半導体の工場」が多い国どこ? 1位は意外にも...!?
  • 3
    【心が疲れたとき】メンタルが一瞬で “最強” になる「超短い一言」
  • 4
    しゃがんだ瞬間...「えっ全部見えてる?」ジムで遭遇…
  • 5
    あなたには「この印」ある? 特定の世代は「腕に同じ…
  • 6
    パニック発作の原因とは何か?...「あなたは病気では…
  • 7
    中国はアメリカとの貿易戦争に勝てない...理由はトラ…
  • 8
    北朝鮮兵の親たち、息子の「ロシア送り」を阻止する…
  • 9
    動揺を見せない習近平...貿易戦争の準備ができている…
  • 10
    【渡航注意】今のアメリカでうっかり捕まれば、裁判…
  • 1
    中国戦闘機が「ほぼ垂直に墜落」する衝撃の瞬間...大爆発する機体の「背後」に映っていたのは?
  • 2
    【話題の写真】高速列車で前席のカップルが「最悪の行為」に及ぶ...インド人男性の撮影した「衝撃写真」にネット震撼【画像】
  • 3
    「一夜にして死の川に」 ザンビアで、中国所有の鉱山ダムから有毒の水が流出...惨状伝える映像
  • 4
    「さようなら、テスラ...」オーナーが次々に「売り飛…
  • 5
    「今まで食べた中で1番おいしいステーキ...」ドジャ…
  • 6
    健康寿命を伸ばすカギは「人体最大の器官」にあった.…
  • 7
    【クイズ】世界で最も「レアアースの埋蔵量」が多い…
  • 8
    【心が疲れたとき】メンタルが一瞬で “最…
  • 9
    テスラの没落が止まらない...株価は暴落、業績も行き…
  • 10
    「低炭水化物ダイエット」で豆類はNG...体重が増えな…
トランプ2.0記事まとめ
日本再発見 シーズン2
CHALLENGING INNOVATOR
Wonderful Story
MOOK
ニューズウィーク日本版別冊
ニューズウィーク日本版別冊

好評発売中