スポーツでの脳震盪が「鬱や自殺」に繋がることも...選手の脳を守る「血液検査」の可能性
TACKLE THE ISSUE AHEAD OF THE GAME
これはNFLだけの話ではない。例えばNHL(北米プロアイスホッケーリーグ)は、相手チームの選手に後ろから体当たりする行為や頭部への打撃を根絶しようとしている。
サッカー界でも、頭部のけがが疑われる選手に対して「脳震盪による選手交代」が通常の交代枠とは別に認められるようになった。子供たちのヘディングを制限する動きも広がっている。
脳震盪を含む外傷性脳損傷は、スポーツの世界でもそれ以外の場所でも珍しくない。アメリカでは、外傷性脳損傷が原因の救急搬送が年に480万件に上る。
適切な治療と支援がないと、脳震盪は記憶障害や人格変容、睡眠障害、心の問題、認知症などの神経変性疾患といった長期的な影響を残す可能性がある。頭部への衝撃が繰り返される場合は、なおさらだ。
問題は、プロの選手だけにとどまらない。ダートマス大学のアメフトチームで活躍していたパトリック・リシャ(Patrick Risha)がいい例だ。「私たち家族は2014年、パトリックを自殺で失った」と語るのは、母でパトリック・リシャCTE啓発財団(Patrick Risha CTE Awareness Foundation)の代表を務めるカレン・ジーゲルだ。
「当時は自分たちが抱えている問題の正体が分からなかった。息子には鬱やADHD(注意欠陥・多動性障害)、依存の問題、不安、睡眠障害の明らかな症状があったが、スポーツをやっていたせいだとは思いもしなかった。CTE(慢性外傷性脳症)のことも、脳を調べたほうがいいと言われて初めて知った」