歌手の伝記映画で「俳優に歌わせるな」...歌姫エイミー・ワインハウスの映画は「悲惨なレベルの駄作」に
I Hate Music Biopics!
無声映画の時代から映画はミュージシャンを題材にし、LPレコードが登場する前から俳優はそうした作品でアカデミー賞を受賞してきた。
だが賞狙いの大作がはやりだしたのは、レイ・チャールズに焦点を当てた2004年の『Ray/レイ』と、ジョニー・キャッシュの生きざまを描いた05年の『ウォーク・ザ・ライン/君につづく道』からだろう。
どちらも本人が死去して間もなく公開されたことも追い風となって興行的に成功し、賞レースでも健闘した。
『レイ』はいい映画だ。テイラー・ハックフォード監督は音楽物が得意で、主演のジェイミー・フォックスは名演技を披露した。脇にもケリー・ワシントン、レジーナ・キングら実力派がそろっていた。
フォックスは優れた歌手だが、製作陣はチャールズの音源に合わせて口パクさせることを選んだ。そのためチャールズの声が響き渡るたびに観客は圧倒され、映画を見に来た理由を再確認した。
一方『ウォーク・ザ・ライン』は冴えない。キャッシュに扮したホアキン・フェニックスのオーバーな演技は見ていてつらく、手あかの付いた描写も目立った。
さらに『レイ』と対照的に、フェニックスと妻ジューン・カーター役のリース・ウィザースプーンに歌わせた。カントリー界のビッグカップルが残した音源をなぜ使わなかったのか、理解に苦しむ。