歌手の伝記映画で「俳優に歌わせるな」...歌姫エイミー・ワインハウスの映画は「悲惨なレベルの駄作」に
I Hate Music Biopics!
そんな凡庸な歌い手に当代きっての名シンガーとたたえられ愛された人物を演じさせるのは、根本が間違っている。しかも映画はワインハウスの歌声を観客に聞かせないという、おかしなミスを犯した。
本作が描くとおりワインハウスは酒と薬物に溺れ、若くして死去した。だがそんなことは誰にでも起こり得る。誰にもまねできないのは、その歌だ。なのに製作側は本人の歌声を使わず、アベラのカラオケを聞かせることを選んだ。
口パクのほうがリアル
音楽系伝記映画は安定してヒットが見込めるジャンルだ。そして最近はテクノロジーの進化により、古い音源からボーカルを抜き出し映画に組み込むのも楽になった。それでも俳優に物まねをさせる習慣はなくならない。
ヒット曲満載でエルトン・ジョンの人生を追う『ロケットマン』は新鮮な娯楽作だが、彼の比類なきテノールボイスを使わず主演のタロン・エガートンに歌わせた。これは弁解の余地のない過ちだ。
主演に偉大な歌手を迎えた場合であっても物まねは得策ではない。『リスペクト』でアレサ・フランクリンを演じたジェニファー・ハドソンはトップクラスの歌い手だが、アレサではない。誰もアレサにはなれない。だからこそアレサはソウルの女王だったのだ。