最新記事
K-POP

「謹んで故人の冥福を祈ります」 SMなど音楽事務所への葬儀花輪テロは韓国K-POPファンの変質の象徴?

2024年10月31日(木)14時10分
ニューズウィーク日本版ウェブ編集部

謹弔花輪デモは違法?

日本では考えられない韓国K-POPファンの謹弔花輪デモだが、実はK-POPファンだけがやっているわけではない。保守と革新の対立が激しい韓国では政治の分野でも謹弔花輪が使われることがあり、昨年、最大野党の共に民主党のイ・ジェミョン代表に対する拘束令状を棄却したソウル中央地裁の判事に対して、保守系団体が最高裁の前に数百個の謹弔花輪を立てたのが代表的な事例だという。

こういった謹弔花輪デモが広がるにつれて、警察と区役所なども対応策を用意した。現行の韓国の法律では、屋外集会またはデモの主催者は、開始48時間前に管轄する警察署に事前申告書を提出しなければならないが、この時、垂れ幕など集会で使う用品を書かなければならない。これに花輪も含めたのだ。警察庁関係者は「謹弔花輪は集会用品と見る。申告時に使用個数を事前に明示しなければならない」と説明した。 個数などが申告内容と異なる場合、管轄区庁による戒告処分がありうるという。

ただ、今回問題になったRIIZEファンによるSMエンターテインメント本社前での謹弔花輪デモについては、このような手続きが十分に取られていなかったことが知られている。SNSでの謹弔花輪デモを呼びかける投稿のなかには「(申告をしなくても)いったん送れ」と誘導する書き込みもあった。このため、警察や区役所が事前に把握したものより大量の花輪がSMエンターテインメント本社前に並ぶ事態が発生したのだ。

一方で、HYBEに謹弔花輪を送ったNewJeansファンたちは事前申告手続きを守り、現場で花輪を管理する人材まで雇用して常駐させたという。HYBEの本社がある龍山区庁関係者は「花輪を管理する担当者が警察、区庁と連絡をとりながら、申告された時間外には片付けるなどして花輪デモが比較的秩序よく進行された」と説明した。

問題は手続きを守らなくても罰則などがないという点だ。警察関係者は「花輪はガスボンベなどの危険物品ではなく、事前申告がなかったからといって片付けたりするのは難しい」と話した。また業者を通じて配達されるため、送り主を特定するのが難しく、取締りがしづらい。

城東区役所の関係者は「花輪を配送業者だけが行き来し、実際の注文者とは接触できない状況が続いた」と明かした。不法に置かれた物であっても私的財産と見る余地があり、むやみに片付けることもできない。花輪デモの2日後の13日、スンハン脱退の報道が伝えられてから、配達業者等が一部の花輪を回収していく前まで城東区役所には「通行に邪魔になる」「都心の真ん中に葬儀の花輪がぎっしり詰まっていてぞっとする」等、関連苦情だけで30件余りが受け付けられたという。

試写会
カンヌ国際映画祭受賞作『聖なるイチジクの種』独占試写会 50名様ご招待
あわせて読みたい
ニュース速報

ワールド

アングル:もう賄賂は払わない、アサド政権崩壊で夢と

ワールド

アングル:政治的権利に目覚めるアフリカの若者、デジ

ワールド

尹大統領の逮捕状発付、韓国地裁 本格捜査へ

ワールド

アングル:フィリピンの「ごみゼロ」宣言、達成は非正
あわせて読みたい
MAGAZINE
特集:トランプ新政権ガイド
特集:トランプ新政権ガイド
2025年1月21日号(1/15発売)

1月20日の就任式を目前に「爆弾」を連続投下。トランプ新政権の外交・内政と日本経済への影響は?

メールマガジンのご登録はこちらから。
人気ランキング
  • 1
    「拷問に近いことも...」獲得賞金は10億円、最も稼いでいるプロゲーマーが語る「eスポーツのリアル」
  • 2
    【クイズ】世界で1番マイクロプラスチックを「食べている」のは、どの地域に住む人?
  • 3
    「搭乗券を見せてください」飛行機に侵入した「まさかの密航者」をCAが撮影...追い出すまでの攻防にSNS爆笑
  • 4
    感染症に強い食事法とは?...食物繊維と腸の関係が明…
  • 5
    女性クリエイター「1日に100人と寝る」チャレンジが…
  • 6
    【クイズ】次のうち、和製英語「ではない」のはどれ…
  • 7
    フランス、ドイツ、韓国、イギリス......世界の政治…
  • 8
    失礼すぎる!「1人ディズニー」を楽しむ男性に、女性…
  • 9
    オレンジの閃光が夜空一面を照らす瞬間...ロシア西部…
  • 10
    本当に残念...『イカゲーム』シーズン2に「出てこな…
  • 1
    ティーバッグから有害物質が放出されている...研究者が警告【最新研究】
  • 2
    体の筋肉量が落ちにくくなる3つの条件は?...和田秀樹医師に聞く「老けない」最強の食事法
  • 3
    睡眠時間60分の差で、脳の老化速度は2倍! カギは「最初の90分」...快眠の「7つのコツ」とは?
  • 4
    「拷問に近いことも...」獲得賞金は10億円、最も稼い…
  • 5
    メーガン妃のNetflix新番組「ウィズ・ラブ、メーガン…
  • 6
    轟音に次ぐ轟音...ロシア国内の化学工場を夜間に襲う…
  • 7
    【クイズ】世界で1番マイクロプラスチックを「食べて…
  • 8
    北朝鮮兵が「下品なビデオ」を見ている...ロシア軍参…
  • 9
    ドラマ「海に眠るダイヤモンド」で再注目...軍艦島の…
  • 10
    【クイズ】次のうち、和製英語「ではない」のはどれ…
  • 1
    ティーバッグから有害物質が放出されている...研究者が警告【最新研究】
  • 2
    大腸がんの原因になる食品とは?...がん治療に革命をもたらす可能性も【最新研究】
  • 3
    体の筋肉量が落ちにくくなる3つの条件は?...和田秀樹医師に聞く「老けない」最強の食事法
  • 4
    夜空を切り裂いた「爆発の閃光」...「ロシア北方艦隊…
  • 5
    インスタント食品が招く「静かな健康危機」...研究が…
  • 6
    TBS日曜劇場が描かなかった坑夫生活...東京ドーム1.3…
  • 7
    「涙止まらん...」トリミングの結果、何の動物か分か…
  • 8
    膝が痛くても足腰が弱くても、一生ぐんぐん歩けるよ…
  • 9
    「戦死証明書」を渡され...ロシアで戦死した北朝鮮兵…
  • 10
    「腹の底から笑った!」ママの「アダルト」なクリス…
日本再発見 シーズン2
CHALLENGING INNOVATOR
Wonderful Story
MOOK
ニューズウィーク日本版別冊
ニューズウィーク日本版別冊

好評発売中