韓国著作権団体、ノーベル賞受賞の韓江に教科書掲載料を1ウォンも払わず 「連絡先分からず」と苦しい言い訳
5年以上受け取らなければ協会が使用可能
当然ながらこの著作権料の未払いで被害を被ったのは、ハン・ガンだけではなかった。 最近10年間(2014〜23年)支給されなかった補償金は合計104億8,700万ウォン(約11億5000万円)に達すると見積もられている。実に毎年約10億ウォン(約1億1000万円)の補償金が著作者に支払われないまま協会に積み立てられているという。
原因としては不合理な補償手続きが大きいという。韓国の著作権法では、教科書に掲載される著作物の場合、文化体育観光部(日本の文科省に相当)が指定した補償金受領団体(今回問題となった文著協)を通じて、出版後に著作権者に補償することになっている。出版社から著作権料を先に徴収し、それを後から著作権者に分配する仕組みだ。
このシステムでは補償金を受け取るためには作家自らが直接申請しなければ保証金を受け取れない可能性が高い。とはいえ、自分の作品が使われたかどうかを把握するのは難しく、大部分が受領できないため不合理なシステムだという指摘が出ている。
実際、『韓国が嫌いで』などのヒット作で知られる人気作家チャン·ガンミョンは、フェイスブックに「自分の文章が教科書に載せられたということを著者がこのように後になってから知っている現状がおかしい」と投稿。「著者が申請しなければ著作権料を支払わない慣例は不条理だ」と指摘した。
5年経過すると支払わなくてもいい?
さらに問題なのは、この受領されないまま宙に浮いた補償金は5年が過ぎれば、文著協が文化体育観光部の承認の下に公益目的で使用が可能になっているという点だ。このシステムを利用する形で文著協が使った補償金は約138億ウォン(約15億円)にのぼり、内訳は△補償金分配システム改善に25億2,000万ウォン(約2億7500万円)△著作権使用実態調査に15億2,000万ウォン(約1億6000万円)△著作権者広報キャンペーンに7億4,000万ウォン(約8000万円)となっていることが分かった。
また、補償金の分配に消極的な文著協が、自分たちの収入を増やす徴収にだけ気を使っているという指摘も出ている。文氏協は8月、著作権信託管理手数料に対する徴収対象を教科書以外にも広げる規則改正計画を知らせるパブリックコメントの手続きに入っている。 改正案によると、文著協が管理手数料を賦課できる対象は8件から17件まで拡大する可能性があり、このままでは著作権者への保証金未払い問題が更に拡大する可能性も否定できない。
今回の問題を指摘したキム議員は「ハン・ガンさんの連絡先が分からなくて著作権料を支給しなかったという文著協の釈明は非常に荒唐無稽だ。著作権補償金は作家たちの権利を保護し創作活動を支援するための制度だが、文著協がこれを疎かにしたまま自分たちの収益増大だけに重点を置くことは深刻な問題」として「著作権者たちが正当な代価を受けられるよう即刻措置が必要だ」と話している。
今回問題となった文著協を管轄する韓国文化体育観光部は、ハン・ガンのノーベル賞受賞を契機として韓国文学の普及を図ろうと10月15日、当初計画になかった「韓国文学海外進出拡大方案を模索する」という題名の資料を緊急に発表して翻訳者育成を加速させようとしているが、翻訳者の育成以前に作家たちへの正当な支払をやるべきではないだろうか。