羽生結弦がいま「能登に伝えたい」思い...被災地支援を続ける羽生が語った、3.11の記憶と震災を生きる意味
Lending a Helping Hand
──今日のソロ演技は「春よ、来い」でした。昨年3月、被災地から希望を発信したい、と宮城県で開催したアイスショー『ノッテステラータ(イタリア語で〔満天の星〕の意味)』でも披露していましたが、今回も迷わずこの曲を選びましたか。
そうですね、もうこれしかない、と。みなさんに優しい気持ちになってほしいっていうのが一番でした。僕がいま滑っている曲の中で、一番心に届きやすい、なじみ深いメロディーを持っているのは、「春よ、来い」だなって思っていましたし。
この曲は阪神・淡路大震災のあった年に、朝ドラで使われていたんです(94~95年のNHK連続テレビ小説『春よ、来い』の主題歌)。そして松任谷由美さんが東日本大震災からの復興を応援するチャリティー企画で歌われた曲でもあるので、そういう縁みたいなものを感じて選びました。
──今日の演技会のタイトルは『挑戦~チャレンジ』でした。羽生さんにとって今の挑戦とは。
もう日々挑戦だな、って。やっぱりいい演技をしたいとか、それを見て何かを感じてもらいたいって考えたときに、たとえ同じ演技をしたとしてもその中で進化がないと、「良かった」と思ってもらえることが少ないだろうから。
自分の中で完成したと思うところから進化し続けるのはとても大変なことで、それが自分にとっては挑戦ですね。
今こうやって生きていることや、日々過ごすということ自体も、ある意味では挑戦し続けている、自分の命を守ることに挑戦し続けていることなんだと思います。能登のことを考えたり、3.11のことを思い出したりすると、そういうことなのかなと。
──戦い続けることや、挑戦し続けることで、疲弊したり孤独を感じることはありませんか。
例えばみなさんの日常でも、仕事を終えて帰ってきて、「疲れた」と感じている時点ですごく頑張ったんじゃないかなって僕は思っちゃうんですけど(笑)。
僕はやっていることが派手だから、一挙手一投足が注目されたり、こんなことをやりましたと報道されることもあります。でも言ってみれば、僕にとってこれは生活の一部でしかないんですよね。
みんなそれぞれ、日常には大変なことばかりじゃないですか。褒められることなんてめったにないし。今日もご飯を作ってくれてありがとう!とか、今日もお仕事頑張ってきたね、偉い!なんて、そんなに簡単に言ってもらえるわけでもない。生活ってそういうものだと思います。
みんな一生懸命毎日を戦っている。僕の場合はそれがみなさんの目に見えているだけです。