羽生結弦がいま「能登に伝えたい」思い...被災地支援を続ける羽生が語った、3.11の記憶と震災を生きる意味

Lending a Helping Hand

2024年10月4日(金)17時11分
小暮聡子、大橋 希(本誌記者)

9月15日のチャリティー演技会では「春よ、来い」を披露した羽生結弦

9月15日のチャリティー演技会では「春よ、来い」を披露した ©TORU YAGUCHI

──今日のソロ演技は「春よ、来い」でした。昨年3月、被災地から希望を発信したい、と宮城県で開催したアイスショー『ノッテステラータ(イタリア語で〔満天の星〕の意味)』でも披露していましたが、今回も迷わずこの曲を選びましたか。

そうですね、もうこれしかない、と。みなさんに優しい気持ちになってほしいっていうのが一番でした。僕がいま滑っている曲の中で、一番心に届きやすい、なじみ深いメロディーを持っているのは、「春よ、来い」だなって思っていましたし。

この曲は阪神・淡路大震災のあった年に、朝ドラで使われていたんです(94~95年のNHK連続テレビ小説『春よ、来い』の主題歌)。そして松任谷由美さんが東日本大震災からの復興を応援するチャリティー企画で歌われた曲でもあるので、そういう縁みたいなものを感じて選びました。


──今日の演技会のタイトルは『挑戦~チャレンジ』でした。羽生さんにとって今の挑戦とは。

もう日々挑戦だな、って。やっぱりいい演技をしたいとか、それを見て何かを感じてもらいたいって考えたときに、たとえ同じ演技をしたとしてもその中で進化がないと、「良かった」と思ってもらえることが少ないだろうから。

自分の中で完成したと思うところから進化し続けるのはとても大変なことで、それが自分にとっては挑戦ですね。

今こうやって生きていることや、日々過ごすということ自体も、ある意味では挑戦し続けている、自分の命を守ることに挑戦し続けていることなんだと思います。能登のことを考えたり、3.11のことを思い出したりすると、そういうことなのかなと。

──戦い続けることや、挑戦し続けることで、疲弊したり孤独を感じることはありませんか。

例えばみなさんの日常でも、仕事を終えて帰ってきて、「疲れた」と感じている時点ですごく頑張ったんじゃないかなって僕は思っちゃうんですけど(笑)。

僕はやっていることが派手だから、一挙手一投足が注目されたり、こんなことをやりましたと報道されることもあります。でも言ってみれば、僕にとってこれは生活の一部でしかないんですよね。

みんなそれぞれ、日常には大変なことばかりじゃないですか。褒められることなんてめったにないし。今日もご飯を作ってくれてありがとう!とか、今日もお仕事頑張ってきたね、偉い!なんて、そんなに簡単に言ってもらえるわけでもない。生活ってそういうものだと思います。

みんな一生懸命毎日を戦っている。僕の場合はそれがみなさんの目に見えているだけです。

あわせて読みたい
ニュース速報

ビジネス

中国製EV価格、即時変更の公算小 EUの追加関税で

ワールド

イラン、レバノン停戦を条件付きで支持 外相がベイル

ビジネス

米9月雇用25.4万人増、失業率4.1%に改善 年

ワールド

イスラエル軍がガザ全域空爆、29人死亡 ハマスはロ
あわせて読みたい
MAGAZINE
特集:大谷の偉業
特集:大谷の偉業
2024年10月 8日号(10/ 1発売)

ドジャース地区優勝と初の「50-50」を達成した大谷翔平をアメリカはどう見たか

メールマガジンのご登録はこちらから。
人気ランキング
  • 1
    ベッツが語る大谷翔平の素顔「ショウは普通の男」「自由がないのは気の毒」「野球は超人的」
  • 2
    アラスカ上空でロシア軍機がF16の後方死角からパッシング、信じられない映像を米軍が公開
  • 3
    NewJeansミンジが涙目 夢をかなえた彼女を待っていたのは......
  • 4
    米軍がウクライナに供与する滑空爆弾「JSOW」はロシ…
  • 5
    【独占インタビュー】ロバーツ監督が目撃、大谷翔平…
  • 6
    野原の至る所で黒煙...撃退された「大隊規模」のロシ…
  • 7
    オアシス再結成で露わになる搾取...「ダイナミック・…
  • 8
    ウクライナに供与したF16がまた墜落?活躍する姿はど…
  • 9
    大谷翔平と愛犬デコピンのバッテリーに球場は大歓声…
  • 10
    年収600万円、消費者金融の仕事は悪くなかったが、債…
  • 1
    ベッツが語る大谷翔平の素顔「ショウは普通の男」「自由がないのは気の毒」「野球は超人的」
  • 2
    ウクライナに供与したF16がまた墜落?活躍する姿はどこに
  • 3
    ウクライナ軍、ドローンに続く「新兵器」と期待する「ロボット犬」を戦場に投入...活動映像を公開
  • 4
    エコ意識が高過ぎ?...キャサリン妃の「予想外ファッ…
  • 5
    漫画、アニメの「次」のコンテンツは中国もうらやむ…
  • 6
    【独占インタビュー】ロバーツ監督が目撃、大谷翔平…
  • 7
    アラスカ上空でロシア軍機がF16の後方死角からパッシ…
  • 8
    大谷翔平と愛犬デコピンのバッテリーに球場は大歓声…
  • 9
    NewJeansミンジが涙目 夢をかなえた彼女を待ってい…
  • 10
    【クイズ】「バッハ(Bach)」はドイツ語でどういう…
  • 1
    「LINE交換」 を断りたいときに何と答えますか? 銀座のママが説くスマートな断り方
  • 2
    ベッツが語る大谷翔平の素顔「ショウは普通の男」「自由がないのは気の毒」「野球は超人的」
  • 3
    「まるで別人」「ボンドの面影ゼロ」ダニエル・クレイグの新髪型が賛否両論...イメチェンの理由は?
  • 4
    「もはや手に負えない」「こんなに早く成長するとは.…
  • 5
    ウクライナに供与したF16がまた墜落?活躍する姿はど…
  • 6
    漫画、アニメの「次」のコンテンツは中国もうらやむ…
  • 7
    森ごと焼き尽くす...ウクライナの「火炎放射ドローン…
  • 8
    国立西洋美術館『モネ 睡蓮のとき』 鑑賞チケット5組…
  • 9
    北朝鮮、泣き叫ぶ女子高生の悲嘆...残酷すぎる「緩慢…
  • 10
    ウクライナ軍、ドローンに続く「新兵器」と期待する…
日本再発見 シーズン2
CHALLENGING INNOVATOR
Wonderful Story
MOOK
ニューズウィーク日本版別冊
ニューズウィーク日本版別冊

好評発売中