最新記事
映画

「先住民の魂」と「厳しい現実」が交差する...映画『ファンシー・ダンス』はミクロの視点からマクロな問題に切り込んだ秀作

Gladstone’s Great New Movie

2024年7月26日(金)16時20分
デーナ・スティーブンズ(映画評論家)
ジャックス(グラッドストーン)

ジャックス(グラッドストーン)は先住民女性としての現実に直面する APPLE TV+

<監督が高らかに宣言しなくても、登場人物の選択に社会システムが影響しているのを感じ取ることができる>

これはロードムービーか、それとも青春物語か、はたまたノワールの香り漂う警察小説なのか──

そんな新作映画『ファンシー・ダンス』は、テレビドラマシリーズ『レザベーション・ドッグス』の脚本・監督も務めたドキュメンタリー作家エリカ・トレンブレイの長編デビュー作だ。

トレンブレイとミシアナ・アリスによる脚本は、高い評価を得た『レザベーション・ドッグス』に似たところがある。どちらの作品も、米オクラホマ州の居留地で暮らす先住民の若者の生活と憧れを描いている。

『レザベーション・ドッグス』はマスコギー族を扱っていたが、『ファンシー・ダンス』はセネカ・カユーガ族の土地とその周辺が主な舞台で、カユーガ語のせりふもある。


伯母と姪の奇妙な旅路

しかし『ファンシー・ダンス』では、先住民の女性が殺されたり行方不明になったりする事件が全米に広がっているという不吉な背景の下、居留地の子供たちの法に反する悪ふざけが悲劇につながっていく。

ジャックス(リリー・グラッドストーン)は妹のタウイ(ハウリ・スー・グレイ)が突然姿を消したため、タウイの13歳の娘ロキ(イザベル・ディロン・オルセン)の面倒を見ることになる。

ジャックスは忠実な姉であり、ロキにとっては愛情深い伯母だが、独立心が旺盛で、時に周りに不快感を与える一匹狼だ。彼女はちっぽけな悪さを続けて食いつなぎ、経済的に苦しくなると犯罪組織のために麻薬を売っている。

ジャックスは些細な犯罪で服役したこともあった。それは、ロキの生活状況を調べに来た児童保護局の調査官にとって、彼女を居留地の家から連れ出し、白人の祖父(シェー・ウィガム)と、善意の持ち主だが不器用で無神経なその妻(オードリー・バシレフスキ)に預けるための、薄っぺらだが法的には正当な口実になった。

ジャックスは、ロキが先住民の大規模な祭り「パウワウ」に参加したいと心から望んでいることを知っていた。そこで夜中に祖父の家からこっそり彼女を連れ出し、ドライブ旅行に出かける。

居留地外の白人警官にしてみれば、この旅行はロキが同意したものだとしても未成年者の誘拐事件と見なすことができ、タウイの不可解な失踪より捜査に値する。

ジャックスの異母弟JJ(ライアン・ビゲイ)は居留地の警官で、家出人たちの窮状に理解を示すが、彼もジャックスが保護者として頼れるかどうかは疑っている。警察が家出した伯母と姪のペアに迫ろうとするなかで、JJはタウイの居場所を調べ始める。

あわせて読みたい
ニュース速報

ワールド

ハンガリー、ICC脱退を表明 ネタニヤフ氏訪問受け

ワールド

ミャンマー地震、死者3000人超える、猛暑と雨で感

ビジネス

サントリーなど日本企業、米関税に対応へ 「インパク

ワールド

韓国、米関税で企業に緊急支援措置策定 米と交渉へ
あわせて読みたい
MAGAZINE
特集:引きこもるアメリカ
特集:引きこもるアメリカ
2025年4月 8日号(4/ 1発売)

トランプ外交で見捨てられ、ロシアの攻撃リスクにさらされるヨーロッパは日本にとって他人事なのか?

メールマガジンのご登録はこちらから。
人気ランキング
  • 1
    あまりにも似てる...『インディ・ジョーンズ』の舞台になった遺跡で、映画そっくりの「聖杯」が発掘される
  • 2
    自らの醜悪さを晒すだけ...ジブリ風AIイラストに「大はしゃぎ」する人に共通する点とは?
  • 3
    中居正広は何をしたのか? 真相を知るためにできる唯一の方法
  • 4
    8日の予定が286日間に...「長すぎた宇宙旅行」から2…
  • 5
    【クイズ】世界で最も「レアアースの埋蔵量」が多い…
  • 6
    アメリカで「最古の銃」発見...いったい誰が何のため…
  • 7
    イラン領空近くで飛行を繰り返す米爆撃機...迫り来る…
  • 8
    磯遊びでは「注意が必要」...6歳の少年が「思わぬ生…
  • 9
    博士課程の奨学金受給者の約4割が留学生、問題は日…
  • 10
    「最後の1杯」は何時までならOKか?...コーヒーと睡…
  • 1
    【クイズ】世界で最も「レアアースの埋蔵量」が多い国はどこ?
  • 2
    自らの醜悪さを晒すだけ...ジブリ風AIイラストに「大はしゃぎ」する人に共通する点とは?
  • 3
    中居正広は何をしたのか? 真相を知るためにできる唯一の方法
  • 4
    ロシア空軍基地へのドローン攻撃で、ウクライナが「…
  • 5
    ガムから有害物質が体内に取り込まれている...研究者…
  • 6
    8日の予定が286日間に...「長すぎた宇宙旅行」から2…
  • 7
    一体なぜ、子供の遺骨に「肉を削がれた痕」が?...中…
  • 8
    磯遊びでは「注意が必要」...6歳の少年が「思わぬ生…
  • 9
    現地人は下層労働者、給料も7分の1以下...友好国ニジ…
  • 10
    あまりにも似てる...『インディ・ジョーンズ』の舞台…
  • 1
    中国戦闘機が「ほぼ垂直に墜落」する衝撃の瞬間...大爆発する機体の「背後」に映っていたのは?
  • 2
    「さようなら、テスラ...」オーナーが次々に「売り飛ばす」理由とは?
  • 3
    「テスラ時代」の崩壊...欧州でシェア壊滅、アジアでも販売不振の納得理由
  • 4
    「一夜にして死の川に」 ザンビアで、中国所有の鉱山…
  • 5
    テスラ失墜...再販価値暴落、下取り拒否...もはやス…
  • 6
    「今まで食べた中で1番おいしいステーキ...」ドジャ…
  • 7
    市販薬が一部の「がんの転移」を防ぐ可能性【最新研…
  • 8
    テスラ販売急減の衝撃...国別に見た「最も苦戦してい…
  • 9
    テスラの没落が止まらない...株価は暴落、業績も行き…
  • 10
    【クイズ】世界で最も「レアアースの埋蔵量」が多い…
トランプ2.0記事まとめ
日本再発見 シーズン2
CHALLENGING INNOVATOR
Wonderful Story
MOOK
ニューズウィーク日本版別冊
ニューズウィーク日本版別冊

好評発売中