最新記事
映画

「映画よ、もっと気候変動を語れ」 ディカプリオ主演作や『マッドマックス』の功績とは?

Climate Reality in Cinema

2024年6月21日(金)15時03分
ジェフ・ヤング(本誌環境担当記者)
『マッドマックス:フュリオサ』の場面写真

日本公開中の『マッドマックス:フュリオサ』は環境破壊と気候変動で砂漠化した世界が舞台 ©2024 WARNER BROS. ENTERTAINMENT INC. ALL RIGHTS RESERVED.

<人気映画250作品のうち気候変動を描いたのはわずか9.6%。現実世界が架空のディストピアに近づく今日、映画による世論喚起が不可欠だ>

『マッドマックス』シリーズの最新作『マッドマックス:フュリオサ』で、ジョージ・ミラー監督は、壊滅的な環境破壊と激しい気候変動によって砂漠化したディストピアの世界に私たちを引き戻した。

ミラーがシリーズ第1作で、砂漠化の進んだ世界で水とガソリンを追い求めて疾走するギャングを描いたのは1979年のこと。

あれからおよそ45年、ニューヨーク・タイムズ紙の映画評論家マノーラ・ダージスが指摘したように、「ミラーの描く焼け焦げた世界と現実世界の距離はだいぶ縮まった」。

実際、最も主要な温室効果ガスである二酸化炭素の大気中濃度は、79年には340ppmを少し下回る程度だったが、現在は420ppmを突破している。それに伴い、世界の平均気温も上昇してきた。

2023年は、観測史上最も暑い1年だった。世界中で激しい嵐や熱波、山火事のニュースが相次いだ。にもかかわらず、映画の世界では気候変動を目の当たりにする機会は少ない。

この点は問題だと、気候変動活動家のアナ・ジェーン・ジョイナーは本誌に語る。彼女が創設した団体「グッドエネルギー」は、ハリウッド映画における気候変動問題の存在感を高めることを目指す活動に取り組んでいる。

「映画は、今日の世界で最も強力にストーリーを伝えることのできる手段だ」と、ジョイナーは言う。「映画に気候変動を登場させることの重要性は本当に大きい」

世論喚起のカギを握る

グッドエネルギーは、米コルビー大学のバック気候環境研究所と協力して、13~22年に公開された250作の人気映画を対象に、作品内で気候変動の現実が描かれているかどうかを調べた。

具体的には、ストーリーで描かれる世界に気候変動が存在しているか、そして登場人物が気候変動を認識しているかを点検した。

すると、この「気候現実テスト」に合格した作品は全体のわずか9.6%にすぎなかったという。

動画配信サービスが台頭してほかの娯楽との競争が激化するなか、映画産業は近年、苦境に立たされている。そうした状況で、硬い社会問題を取り上げる作品を作る意欲が落ち込んでいるのかもしれない。

この4月には、気候変動をはじめとする社会性の高い映画を製作してきたパーティシパント・メディアが廃業を決めた。

あわせて読みたい
ニュース速報

ワールド

訂正-米テキサス州のはしか感染20%増、さらに拡大

ワールド

米民主上院議員、トランプ氏に中国との通商関係など見

ワールド

対ウクライナ支援倍増へ、ロシア追加制裁も 欧州同盟

ワールド

ルペン氏に有罪判決、次期大統領選への出馬困難に 仏
あわせて読みたい
MAGAZINE
特集:引きこもるアメリカ
特集:引きこもるアメリカ
2025年4月 8日号(4/ 1発売)

トランプ外交で見捨てられ、ロシアの攻撃リスクにさらされるヨーロッパは日本にとって他人事なのか?

メールマガジンのご登録はこちらから。
人気ランキング
  • 1
    中居正広は何をしたのか? 真相を知るためにできる唯一の方法
  • 2
    ガムから有害物質が体内に取り込まれている...研究者が警鐘【最新研究】
  • 3
    【クイズ】世界で最も「レアアースの埋蔵量」が多い国はどこ?
  • 4
    ロシア空軍基地へのドローン攻撃で、ウクライナが「…
  • 5
    磯遊びでは「注意が必要」...6歳の少年が「思わぬ生…
  • 6
    自らの醜悪さを晒すだけ...ジブリ風AIイラストに「大…
  • 7
    3500年前の粘土板の「くさび形文字」を解読...「意外…
  • 8
    メーガン妃のパスタ料理が賛否両論...「イタリアのお…
  • 9
    8日の予定が286日間に...「長すぎた宇宙旅行」から2…
  • 10
    なぜ「猛毒の魚」を大量に...アメリカ先住民がトゲの…
  • 1
    テスラの没落が止まらない...株価は暴落、業績も行き詰った「時代遅れ企業」の行く末は?【アニメで解説】
  • 2
    【クイズ】世界で最も「レアアースの埋蔵量」が多い国はどこ?
  • 3
    「一夜にして死の川に」 ザンビアで、中国所有の鉱山ダムから有毒の水が流出...惨状伝える映像
  • 4
    【独占】テスラ株急落で大口投資家が本誌に激白「取…
  • 5
    800年前のペルーのミイラに刻まれた精緻すぎるタトゥ…
  • 6
    ロシア空軍基地へのドローン攻撃で、ウクライナが「…
  • 7
    ガムから有害物質が体内に取り込まれている...研究者…
  • 8
    一体なぜ、子供の遺骨に「肉を削がれた痕」が?...中…
  • 9
    「この巨大な線は何の影?」飛行機の窓から撮影され…
  • 10
    現地人は下層労働者、給料も7分の1以下...友好国ニジ…
  • 1
    中国戦闘機が「ほぼ垂直に墜落」する衝撃の瞬間...大爆発する機体の「背後」に映っていたのは?
  • 2
    「テスラ時代」の崩壊...欧州でシェア壊滅、アジアでも販売不振の納得理由
  • 3
    「さようなら、テスラ...」オーナーが次々に「売り飛ばす」理由とは?
  • 4
    「一夜にして死の川に」 ザンビアで、中国所有の鉱山…
  • 5
    テスラ失墜...再販価値暴落、下取り拒否...もはやス…
  • 6
    「今まで食べた中で1番おいしいステーキ...」ドジャ…
  • 7
    市販薬が一部の「がんの転移」を防ぐ可能性【最新研…
  • 8
    テスラ販売急減の衝撃...国別に見た「最も苦戦してい…
  • 9
    テスラの没落が止まらない...株価は暴落、業績も行き…
  • 10
    【クイズ】アメリカを貿易赤字にしている国...1位は…
トランプ2.0記事まとめ
日本再発見 シーズン2
CHALLENGING INNOVATOR
Wonderful Story
MOOK
ニューズウィーク日本版別冊
ニューズウィーク日本版別冊

好評発売中