ガスマスクを股間にくくり付けた悪役...常軌を逸した『マッドマックス』最新作の正しい楽しみ方
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派手で陽気なグロテスク
今回は『怒りのデス・ロード』のように圧縮された簡潔なストーリーテリングとノンストップの展開こそないが、「マッドマックス」シリーズのもう1つの特徴である常軌を逸した美術とスリリングなアクションに関しては、一切手を抜いていない。
フォルクスワーゲンのキャンピングカーのルーフトップをボディーに溶接したマッスルカーが、スズ細工やクロームめっきの巨大な頭蓋骨でド派手に飾り立てた「ウォー・リグ」と砂漠でカーチェイスを繰り広げる。
車、バイク、パラセール、スケートボードのようなギミックに乗った十数人が一度に登場するスタントシーンは壮観だ。
「マッドマックス」シリーズはコミックが原作ではないが、エネルギー論と物理学を凌駕するコミック流のマニアックな空間理論を踏襲している。
『フュリオサ』の最初の1時間以上は、主人公の幼少期に焦点を当てる。母権社会のオアシス「グリーン・プレイス(緑の地)」で育ったフュリオサは、10歳頃にバイカー軍団に誘拐される。
彼らはフュリオサを不気味な暴君、ディメンタス将軍(クリス・ヘムズワース)に引き渡し、ディメンタスは彼女に執着して、恐ろしい蛮行を目撃させる。
資源が枯渇した世界で豊富な食料と水を持つ「グリーン・プレイス」がどこにあるのか、フュリオサは決して口を割らない。しかし、栄養たっぷりに育った健康的な子供である彼女は、その存在自体が貴重な財産となっている。
ディメンタスがウェイストランドの絶対的支配者イモータン・ジョー(ラッキー・ヒューム)にフュリオサを引き渡した後、彼女は逃亡して復讐を果たす計画を練る。
追っ手から逃れるフュリオサを、私たちは応援せずにいられない。彼女に共感して仲間に加わる警護隊長ジャック(トム・バーク)。サディスティックでうぬぼれが強く、しかし妙に彼女を意識しているディメンタスと対峙するクライマックス。
もっとも、冗長でわざとらしく感じられる場面も多く、唐突なスローダウンがあるなど、どこか物足りないところもある。
前作より長い上映時間を細かい人物描写に無駄遣いせずに(例えば、フュリオサとジャックのロマンチックなつながりは暗示されるだけで、それ以上の説明はない)、フュオリサの誰にも止められない復讐心など、もっと核心を掘り下げてほしかった。