「アートのライセンスビジネスが日本の生きる道」──平田オリザが語る「こまばアゴラ後」の活動
集中して創作ができる豊岡
──東京はアトリエ春風舎*は残りますけども、青年団の活動拠点としてはほぼ完全に豊岡の江原河畔劇場にシフトされます。
そうですね。アゴラより広いです。定員140名くらいです。
*板橋区向原にある青年団の稽古場兼アトリエ兼劇場。客席数はこまばアゴラ劇場と同じ60席。芸術監督は大池容子。
──その違いはこれから先の創作に何かしら影響を与えますか?
いや、そんなにはないですね。ただ、江原のほうが集中して作れることは間違いない。利賀村*に似ているのでノイズも少ない。豊岡に移住した劇団員は12、13人くらいで、家族を入れると30数名います。劇場近くに劇団でもっているアパートもあるので、新作を作るときは東京在住者はそこに宿泊して集中して稽古できるので、それは環境としては断然いい。自然もあるし。
それと、すでにこの十年ほど新作はKIACで作っていたし、実はその前も利賀村で作っていたりしていました。東京で新作を作らないとこだわっているわけではないですが、アゴラの稽古場はちょっと狭いんですよね。
*富山県東礪波郡にある過疎の村。世界的な演出家・鈴木忠志が劇団の拠点を1976年に移し、1982年から世界演劇祭を開催したことで、合掌造りの過疎の村が世界的にその名を知られることになった。2004年周辺町村と合併、現在は南砺市の一部。
──江原河畔劇場は、ウェブサイトを拝見するだけではあまり公演のスケジュールが出てなくて、一見すると稼働していないように思えますが。
そうですね。地方なので豊岡演劇祭を中心に動いています。たじま児童劇団*や障害者向けの劇団のワークショップとかも多くて、毎週末何かしらやっているんですけど、公演としては年間で4、5本かな。あと、公開リハーサルとか、そういうのもあります。最近は、芸術文化観光専門職大学の学生もサークルでちらほら使うようになってきました。
*江原河畔劇場を拠点に活動する小学生4年から高校生までが在籍する劇団。小学生は劇場での発表会、中高生は本格的な公演を行っている。