巨匠コンビによる「戦争観が古すぎる」ドラマ『マスターズ・オブ・ザ・エアー』...今どき「ありがとう、アメリカの皆さん!」はない
Masters of the Air, in Red, White, and Blue
バッキー(中央)たち第100爆撃群の面々はドイツ占領地域に出撃する APPLE TV+ーSLATE
<スピルバーグとハンクスが再びタッグを組んだ「第2次大戦もの」だが、描写が時代遅れすぎる>
B17爆撃機のガタガタとうるさく寒い機内には、10人の米軍兵士が乗っている。対空砲火の中、敵の戦闘機の攻撃をかいくぐって飛ぶのが彼らの(私だったら絶対に引き受けたくない危険な)任務だ。
彼らは上空の凍るような寒さに耐え、呼吸のために革製の酸素マスクを装着している。敵からの攻撃や乗員のひどいけがにも平常心を保たなければならないし、部品や乗員を失った場合には臨機応変に対応することを余儀なくされる。
標的の位置を特定するには紙とペンを使った計算が必要で、爆弾を落としたら急いで基地に戻らなければならない。もしできなければ、敵の占領下の土地にパラシュートで脱出しなければならなくなる。
実にドラマチックな要素ぞろいだし、アップルTVプラスで配信中のドラマ『マスターズ・オブ・ザ・エアー』は、それを存分に生かしている。本作で描かれるのは、第2次大戦における米軍の第8航空軍に属する第100爆撃群の活躍。
同爆撃群は対ドイツ戦で大きな犠牲を出したことと、個性的なメンバーぞろいだったことで知られる。スティーブン・スピルバーグとトム・ハンクスがこのドラマの制作に取りかかったのは実に11年前のことだ。
細部まで作り込まれた美しい映像を見ていると、自分の愛する時代への若い世代の関心を高めたいと願う年配の家族と一緒に歴史博物館を見にきたような気分になる。
ドイツ上空で1週間に何機が失われたと思う? 作戦前にはこんなに豪華な朝食が出たんだぞ! 飛行中の状況確認は目視頼みだったんだからすごいだろう?と、肘をつかまれて言われているみたいな感じなのだ。そういう話に疎い人にとっては、本作は学びの機会を与えてくれる。
スピルバーグとハンクスといえば、かつて第2次大戦を描いたドラマ『バンド・オブ・ブラザース』や『ザ・パシフィック』でもタッグを組んだコンビだ。だが本作の雰囲気は前の2作とは異なっており、それが幅広い視聴者の獲得につながるかもしれない。
第100爆撃群はイギリス東部にある基地に駐屯していたが、出撃の合間に主人公たちは長い時間をここで過ごす。食事をしたり出かけたり、酒を飲んだり......。外のバーで女性に会うこともあり、本作にはラブシーンまである。