最新記事
海外ドラマ

巨匠コンビによる「戦争観が古すぎる」ドラマ『マスターズ・オブ・ザ・エアー』...今どき「ありがとう、アメリカの皆さん!」はない

Masters of the Air, in Red, White, and Blue

2024年3月18日(月)16時25分
レベッカ・オニオン
『マスターズ・オブ・ザ・エアー』

バッキー(中央)たち第100爆撃群の面々はドイツ占領地域に出撃する APPLE TV+ーSLATE

<スピルバーグとハンクスが再びタッグを組んだ「第2次大戦もの」だが、描写が時代遅れすぎる>

B17爆撃機のガタガタとうるさく寒い機内には、10人の米軍兵士が乗っている。対空砲火の中、敵の戦闘機の攻撃をかいくぐって飛ぶのが彼らの(私だったら絶対に引き受けたくない危険な)任務だ。

彼らは上空の凍るような寒さに耐え、呼吸のために革製の酸素マスクを装着している。敵からの攻撃や乗員のひどいけがにも平常心を保たなければならないし、部品や乗員を失った場合には臨機応変に対応することを余儀なくされる。

標的の位置を特定するには紙とペンを使った計算が必要で、爆弾を落としたら急いで基地に戻らなければならない。もしできなければ、敵の占領下の土地にパラシュートで脱出しなければならなくなる。

実にドラマチックな要素ぞろいだし、アップルTVプラスで配信中のドラマ『マスターズ・オブ・ザ・エアー』は、それを存分に生かしている。本作で描かれるのは、第2次大戦における米軍の第8航空軍に属する第100爆撃群の活躍。

同爆撃群は対ドイツ戦で大きな犠牲を出したことと、個性的なメンバーぞろいだったことで知られる。スティーブン・スピルバーグとトム・ハンクスがこのドラマの制作に取りかかったのは実に11年前のことだ。

細部まで作り込まれた美しい映像を見ていると、自分の愛する時代への若い世代の関心を高めたいと願う年配の家族と一緒に歴史博物館を見にきたような気分になる。

ドイツ上空で1週間に何機が失われたと思う? 作戦前にはこんなに豪華な朝食が出たんだぞ! 飛行中の状況確認は目視頼みだったんだからすごいだろう?と、肘をつかまれて言われているみたいな感じなのだ。そういう話に疎い人にとっては、本作は学びの機会を与えてくれる。

スピルバーグとハンクスといえば、かつて第2次大戦を描いたドラマ『バンド・オブ・ブラザース』や『ザ・パシフィック』でもタッグを組んだコンビだ。だが本作の雰囲気は前の2作とは異なっており、それが幅広い視聴者の獲得につながるかもしれない。

第100爆撃群はイギリス東部にある基地に駐屯していたが、出撃の合間に主人公たちは長い時間をここで過ごす。食事をしたり出かけたり、酒を飲んだり......。外のバーで女性に会うこともあり、本作にはラブシーンまである。

あわせて読みたい
ニュース速報

ビジネス

仏総合PMI、11月は44.8に低下 新規受注が大

ビジネス

印財閥アダニ、資金調達に支障も 会長起訴で投資家の

ワールド

ハンガリー首相、ネタニヤフ氏に訪問招請へ ICC逮

ビジネス

アングル:中国輸出企業、ドル保有拡大などでリスク軽
あわせて読みたい
MAGAZINE
特集:超解説 トランプ2.0
特集:超解説 トランプ2.0
2024年11月26日号(11/19発売)

電光石火の閣僚人事で世界に先制パンチ。第2次トランプ政権で次に起きること

メールマガジンのご登録はこちらから。
人気ランキング
  • 1
    寿命が延びる、3つのシンプルな習慣
  • 2
    日本人はホームレスをどう見ているのか? ルポに対する中国人と日本人の反応が違う
  • 3
    「1年後の体力がまったく変わる」日常生活を自然に筋トレに変える7つのヒント
  • 4
    Netflix「打ち切り病」の闇...効率が命、ファンの熱…
  • 5
    北朝鮮は、ロシアに派遣した兵士の「生還を望んでい…
  • 6
    NewJeans生みの親ミン・ヒジン、インスタフォローをす…
  • 7
    元幼稚園教諭の女性兵士がロシアの巡航ミサイル「Kh-…
  • 8
    【ヨルダン王室】生後3カ月のイマン王女、早くもサッ…
  • 9
    プーチンはもう2週間行方不明!? クレムリン公式「動…
  • 10
    朝食で老化が早まる可能性...研究者が「超加工食品」…
  • 1
    朝食で老化が早まる可能性...研究者が「超加工食品」に警鐘【最新研究】
  • 2
    自分は「純粋な韓国人」と信じていた女性が、DNA検査を受けたら...衝撃的な結果に「謎が解けた」
  • 3
    「会見拒否」で自滅する松本人志を吉本興業が「切り捨てる」しかない理由
  • 4
    北朝鮮兵が「下品なビデオ」を見ている...ロシア軍参…
  • 5
    朝鮮戦争に従軍のアメリカ人が写した「75年前の韓国…
  • 6
    日本人はホームレスをどう見ているのか? ルポに対す…
  • 7
    アインシュタイン理論にズレ? 宇宙膨張が示す新たな…
  • 8
    クルスク州の戦場はロシア兵の「肉挽き機」に...ロシ…
  • 9
    沖縄ではマーガリンを「バター」と呼び、味噌汁はも…
  • 10
    寿命が延びる、3つのシンプルな習慣
  • 1
    朝食で老化が早まる可能性...研究者が「超加工食品」に警鐘【最新研究】
  • 2
    北朝鮮兵が「下品なビデオ」を見ている...ロシア軍参加で「ネットの自由」を得た兵士が見ていた動画とは?
  • 3
    外来種の巨大ビルマニシキヘビが、シカを捕食...大きな身体を「丸呑み」する衝撃シーンの撮影に成功
  • 4
    朝鮮戦争に従軍のアメリカ人が写した「75年前の韓国…
  • 5
    自分は「純粋な韓国人」と信じていた女性が、DNA検査…
  • 6
    北朝鮮兵が味方のロシア兵に発砲して2人死亡!? ウク…
  • 7
    「会見拒否」で自滅する松本人志を吉本興業が「切り…
  • 8
    足跡が見つかることさえ珍しい...「超希少」だが「大…
  • 9
    モスクワで高層ビルより高い「糞水(ふんすい)」噴…
  • 10
    ロシア陣地で大胆攻撃、集中砲火にも屈せず...M2ブラ…
日本再発見 シーズン2
CHALLENGING INNOVATOR
Wonderful Story
MOOK
ニューズウィーク日本版別冊
ニューズウィーク日本版別冊

好評発売中