最新記事
映画

「ミステリーを超えた法廷ドラマ」カンヌ・パルムドール作品の監督が語る創作魂

A Very French Interview

2024年2月16日(金)19時21分
ダン・コイス(スレート誌エディター)

240220p54_RKG_02.jpg

ジュスティーヌ・トリエ監督 ©YANN RABANIER

──そういう微妙な点について、主演のヒュラーにはどんな演技指導を?

とにかく謎解きゲームにしないでって頼んだ。ミステリーというジャンル映画で定番のばかげた謎解きゲームにだけはしたくないと。

観客にも、犯人が誰かなんて考えさせたくなかった。

だから、とにかく無実って感じで演じてほしいと言った。

もしかして犯人?と思わせちゃいけない。

絶対に私は殺してない。そう言える人物になり切ってもらった。

──50セントの曲「P.I.M.P.」をスチールドラムで演奏したバージョンを何度も流しているのはなぜ?

最初の脚本では、ドリー・パートンの「ジョリーン」を使う予定だった。

でも撮影の1カ月前にエージェントから「この曲は使わないで」と言われた。ショックだった。

法廷の場面では、この歌の詞をやたら分析することにしていたので。それを全部やり直さねばならなかった。

50セントのこの曲は、3年前から私のコンピューターに入っていて、何度も聴いていた。

それに、あまり知られていないバージョンだった。

オリジナルの曲を使おうとしたら、きっと使用料が高すぎて手が出なかったと思う。それに、重すぎたかもしれない。

次善の策だったけど、結果としてはよかった。

──長年のパートナーであるアルチュール・アラリも共同脚本家として参加している。この映画のようにまさに芸術と実生活が混在しているが、他人のアイデアを盗む盗まないの話は彼とした?

そうね、まだ私が若くてフランスの美術学校に通っていた頃は、「誰かに自分のアイデアを盗まれた」みたいな話をよく耳にした。

でも経験を積んだ今は分かる。他人のアイデアを盗むなんて、絶対にできっこないと。

映画を撮るとき、もちろんテーマは大事だけれど、もっと大事なのは形、スタイルだと思う。

小説でもそうだけど、中身よりスタイル。

子供が死んだ、ママが死んだ、パパが死んだみたいな映画や本はたくさんある。でも、それだけじゃ面白くないし、オリジナリティーもない。

素材の拝借みたいなことは、私とアルチュールの間でもあるけどけんかにはならない。

いまアルチュールが書いてる脚本には、私の母の話が出てくる。

それで「なんで私のことを?」って聞いたら、彼は「いいじゃないか。面白いし、単なる挿話さ」って。

あわせて読みたい
ニュース速報

ワールド

アングル:もう賄賂は払わない、アサド政権崩壊で夢と

ワールド

アングル:政治的権利に目覚めるアフリカの若者、デジ

ワールド

尹大統領の逮捕状発付、韓国地裁 本格捜査へ

ワールド

アングル:フィリピンの「ごみゼロ」宣言、達成は非正
あわせて読みたい
MAGAZINE
特集:トランプ新政権ガイド
特集:トランプ新政権ガイド
2025年1月21日号(1/15発売)

1月20日の就任式を目前に「爆弾」を連続投下。トランプ新政権の外交・内政と日本経済への影響は?

メールマガジンのご登録はこちらから。
人気ランキング
  • 1
    「拷問に近いことも...」獲得賞金は10億円、最も稼いでいるプロゲーマーが語る「eスポーツのリアル」
  • 2
    【クイズ】世界で1番マイクロプラスチックを「食べている」のは、どの地域に住む人?
  • 3
    「搭乗券を見せてください」飛行機に侵入した「まさかの密航者」をCAが撮影...追い出すまでの攻防にSNS爆笑
  • 4
    感染症に強い食事法とは?...食物繊維と腸の関係が明…
  • 5
    女性クリエイター「1日に100人と寝る」チャレンジが…
  • 6
    【クイズ】次のうち、和製英語「ではない」のはどれ…
  • 7
    フランス、ドイツ、韓国、イギリス......世界の政治…
  • 8
    失礼すぎる!「1人ディズニー」を楽しむ男性に、女性…
  • 9
    オレンジの閃光が夜空一面を照らす瞬間...ロシア西部…
  • 10
    本当に残念...『イカゲーム』シーズン2に「出てこな…
  • 1
    ティーバッグから有害物質が放出されている...研究者が警告【最新研究】
  • 2
    体の筋肉量が落ちにくくなる3つの条件は?...和田秀樹医師に聞く「老けない」最強の食事法
  • 3
    睡眠時間60分の差で、脳の老化速度は2倍! カギは「最初の90分」...快眠の「7つのコツ」とは?
  • 4
    「拷問に近いことも...」獲得賞金は10億円、最も稼い…
  • 5
    メーガン妃のNetflix新番組「ウィズ・ラブ、メーガン…
  • 6
    轟音に次ぐ轟音...ロシア国内の化学工場を夜間に襲う…
  • 7
    【クイズ】世界で1番マイクロプラスチックを「食べて…
  • 8
    北朝鮮兵が「下品なビデオ」を見ている...ロシア軍参…
  • 9
    ドラマ「海に眠るダイヤモンド」で再注目...軍艦島の…
  • 10
    【クイズ】次のうち、和製英語「ではない」のはどれ…
  • 1
    ティーバッグから有害物質が放出されている...研究者が警告【最新研究】
  • 2
    大腸がんの原因になる食品とは?...がん治療に革命をもたらす可能性も【最新研究】
  • 3
    体の筋肉量が落ちにくくなる3つの条件は?...和田秀樹医師に聞く「老けない」最強の食事法
  • 4
    夜空を切り裂いた「爆発の閃光」...「ロシア北方艦隊…
  • 5
    インスタント食品が招く「静かな健康危機」...研究が…
  • 6
    TBS日曜劇場が描かなかった坑夫生活...東京ドーム1.3…
  • 7
    「涙止まらん...」トリミングの結果、何の動物か分か…
  • 8
    膝が痛くても足腰が弱くても、一生ぐんぐん歩けるよ…
  • 9
    「戦死証明書」を渡され...ロシアで戦死した北朝鮮兵…
  • 10
    「腹の底から笑った!」ママの「アダルト」なクリス…
日本再発見 シーズン2
CHALLENGING INNOVATOR
Wonderful Story
MOOK
ニューズウィーク日本版別冊
ニューズウィーク日本版別冊

好評発売中