大坂なおみが語る「だから私は心の問題を訴えた」
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テニス界の反応は冷ややか
なおみの宣言はパリ時間の深夜にアップされたが、その衝撃はすぐさまネット上に広がり、主流メディアやポップカルチャーの隅々にまで激震が走った。
なおみはBLM(ブラック・ライブズ・マター=黒人の命は大事だ)運動や#MeToo運動が盛り上がる時代の機運にぴったりの形で抗議を行った。
非白人の若い女性が高齢の白人男性が支配するとみられている「残酷で不公正な体制」に挑む、というものだ。
これにはラッパーのニッキー・ミナージュや、歌手で女優のジャネル・モネイら多くのセレブが声援を送った。
なおみの主張は部外者には広く支持されたものの、テニス界の反応は冷ややかだった。
大会関係者や記者、選手たちの間にはいら立ちと当惑が広がった。
なおみの主張だけでなく、発表の方法も関係者の逆鱗に触れた。なおみはSNSへの投稿で連盟に挑戦状をたたき付け、けんかを売ったと見なされたのだ。
関係者の思いはこうだ。
記者会見に不満があるのなら、なぜ自分たちに一言相談しなかったのか。そうすれば、もっと穏便な形で解決する方策が見つかり、テニスというスポーツそのものがたたかれるような事態を招かずに済んだのに......。
記者たちも、これまでずっと敬意を持って彼女を取材してきたつもりだったのに、なぜ自分たちが悪者に仕立てられるのか理解に苦しんだ。
そもそもなぜ、なおみは会見を苦痛に感じたのか。
関係者らはそれも理解できなかった。
最近の記者会見のどの場面で彼女がつむじを曲げたのか、誰もはっきり指摘できなかった。全仏オープンの前哨戦と位置付けられていたイタリア国際で、なおみは初戦でジェシカ・ペグラと対戦して敗れたが、このときは会見が行われなかった。
試合前に行われた会見に取材拒否につながるような問題がなかったか、関係者は改めて質疑応答を点検した。
だが、そこで聞かれたのは9月にニューヨークのメトロポリタン美術館で開催される恒例のファッションの祭典で、なおみがホストの1人を務めることや、会場で歌手のリアーナと会うのが楽しみかといったことばかり。
記者たちにすれば、なおみの会見は長年奇抜かつ新鮮で、チャーミングなものだった。何が変わったのか。
なおみの会見拒否について、選手やエージェントがよく問題にするのは「栄光の絶頂でなぜ?」ということだ。
彼らにすれば、スポンサー契約だけで年5000万ドルも稼ぎながらメディアに注目されたくないなんて、わがままもいいところだ。
注目度も収入もなおみに遠く及ばない選手たち(プロの大半がそうだ)は彼女に同情する気にはなれないだろう。