最新記事
日本社会

警察すら動かない「日本の沈黙」が助長させた...「堕ちた帝国」の進むべき道とは?

The Rise and Fall of a Dynasty

2023年9月11日(月)14時00分
ロブ・シュワルツ(ビルボード誌記者、元東京支局長)

230919P38NW_JNS_02.jpg

9月7日にジャニーズ事務所が行った記者会見には多くの報道陣が詰めかけた KIM KYUNG-HOONーREUTERS

私も全く同感だ。そして、この点は日本のメディア全般の問題点を象徴しているように思える。

この業界幹部は、国際NGO「国境なき記者団」の2022年版「報道の自由度ランキング」で日本が71位だった(23年は68位)ことにショックを受けたと述べたが、私に言わせれば71位でも高すぎるくらいだ。

「なぜメディアが沈黙していたのか、誰の命令で沈黙していたのかについて、政府が調査すべきだ」と、ある音楽業界幹部は言う。この人物は、権力層が共謀して、力のある人たちが守られるようにしているのではないかと示唆する。

この音楽業界幹部は、喜多川の問題とは別に、性的暴行事件の刑事捜査が中止されたケースがあったことに言及した。例えば、週刊新潮の報道によると、ジャーナリストである伊藤詩織に対する性的暴行事件の捜査は、中村格警視庁刑事部長(当時)の指示によって打ち切られた。

過ちを繰り返さないため

日本では最近、性犯罪に対する罰則が厳格化されたが、それで十分かは疑わしい。

ここで私が提案したいのは、性的虐待、レイプ、パワハラなどの被害申し立てについて調べる独立機関を設けることだ。この機関の監督と運営は、人権活動家や研究者など、警察と結び付きのない人物に担わせる必要がある。

最後に、ジャニーズ事務所の今後に触れておこう。藤島が社長を辞任しただけでは、とうてい不十分だ。喜多川と同族関係にある人物は会社の株式を保有すべきでない。藤島は株式を全て売却して、その売却益を被害者への補償と、前述の独立機関の設置資金に充てるべきだ。

事務所の幹部だった人物は、ひとり残らず辞めさせなくてはならない。また、幹部たちは全員、隠蔽の実態を明らかにするために、メディアの取材を受けるべきだ。

あわせて読みたい
ニュース速報

ビジネス

テスラ車販売、3月も欧州主要国で振るわず 第1四半

ビジネス

トランプ氏側近、大半の輸入品に20%程度の関税案 

ビジネス

ECB、インフレ予想通りなら4月に利下げを=フィン

ワールド

米、中国・香港高官に制裁 「国境越えた弾圧」に関与
あわせて読みたい
MAGAZINE
特集:引きこもるアメリカ
特集:引きこもるアメリカ
2025年4月 8日号(4/ 1発売)

トランプ外交で見捨てられ、ロシアの攻撃リスクにさらされるヨーロッパは日本にとって他人事なのか?

メールマガジンのご登録はこちらから。
人気ランキング
  • 1
    中居正広は何をしたのか? 真相を知るためにできる唯一の方法
  • 2
    自らの醜悪さを晒すだけ...ジブリ風AIイラストに「大はしゃぎ」する人に共通する点とは?
  • 3
    【クイズ】世界で最も「レアアースの埋蔵量」が多い国はどこ?
  • 4
    ガムから有害物質が体内に取り込まれている...研究者…
  • 5
    ロシア空軍基地へのドローン攻撃で、ウクライナが「…
  • 6
    磯遊びでは「注意が必要」...6歳の少年が「思わぬ生…
  • 7
    8日の予定が286日間に...「長すぎた宇宙旅行」から2…
  • 8
    3500年前の粘土板の「くさび形文字」を解読...「意外…
  • 9
    メーガン妃のパスタ料理が賛否両論...「イタリアのお…
  • 10
    なぜ「猛毒の魚」を大量に...アメリカ先住民がトゲの…
  • 1
    テスラの没落が止まらない...株価は暴落、業績も行き詰った「時代遅れ企業」の行く末は?【アニメで解説】
  • 2
    【クイズ】世界で最も「レアアースの埋蔵量」が多い国はどこ?
  • 3
    「一夜にして死の川に」 ザンビアで、中国所有の鉱山ダムから有毒の水が流出...惨状伝える映像
  • 4
    【独占】テスラ株急落で大口投資家が本誌に激白「取…
  • 5
    ロシア空軍基地へのドローン攻撃で、ウクライナが「…
  • 6
    800年前のペルーのミイラに刻まれた精緻すぎるタトゥ…
  • 7
    ガムから有害物質が体内に取り込まれている...研究者…
  • 8
    中居正広は何をしたのか? 真相を知るためにできる…
  • 9
    一体なぜ、子供の遺骨に「肉を削がれた痕」が?...中…
  • 10
    「この巨大な線は何の影?」飛行機の窓から撮影され…
  • 1
    中国戦闘機が「ほぼ垂直に墜落」する衝撃の瞬間...大爆発する機体の「背後」に映っていたのは?
  • 2
    「テスラ時代」の崩壊...欧州でシェア壊滅、アジアでも販売不振の納得理由
  • 3
    「さようなら、テスラ...」オーナーが次々に「売り飛ばす」理由とは?
  • 4
    「一夜にして死の川に」 ザンビアで、中国所有の鉱山…
  • 5
    テスラ失墜...再販価値暴落、下取り拒否...もはやス…
  • 6
    「今まで食べた中で1番おいしいステーキ...」ドジャ…
  • 7
    市販薬が一部の「がんの転移」を防ぐ可能性【最新研…
  • 8
    テスラ販売急減の衝撃...国別に見た「最も苦戦してい…
  • 9
    テスラの没落が止まらない...株価は暴落、業績も行き…
  • 10
    【クイズ】世界で最も「レアアースの埋蔵量」が多い…
トランプ2.0記事まとめ
日本再発見 シーズン2
CHALLENGING INNOVATOR
Wonderful Story
MOOK
ニューズウィーク日本版別冊
ニューズウィーク日本版別冊

好評発売中