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「戦争に芸術をつぶさせるわけにはいかない」ウクライナ国立バレエを率いる日本人、寺田宜弘の「戦いの舞台」

Nobuhiro Terada

2023年8月18日(金)13時30分
高木由美子(本誌記者)

そう、今度の彼に期待されるのも「新しい時代をつくる」ことだ。国民感情に配慮してチャイコフスキーなどロシア作品の上演を控える今、寺田は現代作品にも果敢に取り組む。今年はハンス・ファン・マーネン(オランダ)ら優れた振付家と協力し、新作を上演した(写真はマーネン作『ファイブ・タンゴ』。劇場のダンサーたちと寺田)。今冬は日本初演の『雪の女王』を披露する。

寺田と約15年を共に過ごす同バレエ団プリンシパルのニキータ・スハルコフは、「この先も、彼なしにはできないさらに興味深い初演が実現するだろう」と言う。

戦時下でもウクライナの伝統的な芸術を守り、新たな試みを続けていくと寺田は決意している。「戦争に芸術をつぶさせるわけにはいかない。私の戦う場所は、舞台。舞台の上で戦い、平和を求める」

寺田の戦いの舞台は、誰もがつかの間戦争を忘れられる、夢の舞台になるだろう。

寺田宜弘
Nobuhiro Terada
ウクライナ国立バレエ芸術監督

●ウクライナ国立バレエ(旧キエフ・バレエ)来日公演情報
https://www.koransha.com/ballet/ukraine_ballet/2023-24/

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