独学で学んだ英語を武器に世界に飛び込む、俳優・福士蒼汰の挑戦
A New Chapter Abroad
キャストでは唯一の日本人。そこに気負いはなかったが、日本人であることに助けられた部分はたくさんあったと福士は言う。日本のアニメや漫画をみんなよく知っていて、「このアニメは見た」「あの漫画を読んだ」といった話題で盛り上がることも多く、そういう意味で、日本の文化がコミュニケーションの支えになったと感じた。
監督のホルヘ・ドラドはスペイン人、プロデューサーのラン・テレムはイスラエル人で、スタッフもキャストもさまざまな国から集まった。
「みんな違う国から来ていて、それぞれの当たり前が違うから、お互いを知ろうとする力がすごく働いていた。みんな自国にいるときよりちょっと優しくて、ちょっと気を使っている印象だった(笑)」
福士の演じたユウトはコンピューターエンジニア。殺人犯がいる船内で過ごすわけだが、「怯えたり怒ったりする仲間たちの中でも、ユウトは比較的冷静。普段コンピューターを相手にしているからか現実を客観視している人で、そういう部分は自分と似ていると思った」と分析する。
パソコンが得意でアニメ好きという設定が、いわゆるステレオタイプの日本人像であり、気になる視聴者もいるかもしれないが......。
「海外から見ると一番分かりやすい日本文化なんだと思う。パソコンの画面に映るアニメの少女はスペインのスタッフが用意してくれたもの。決してバカにしているわけではなく、たぶん彼らが日本のイメージとしてそれしか知らないからで、日本が世界からどう見えているのかを実感した」
演技においても新たな発見があった。少し誇張するよう要求されることもある日本と違い、海外では実際にそれをしている感覚で、と言われる。
「例えば手にライトを持って何かを探す場合、お芝居をしているときと、リアルに探し物をしているときの自分はやっぱり違う。その探し方、ライト(の動き)にパーソナルなものが出るらしいです。リアリティーを求めるお芝居のほうが、逆に自分らしさが出てくることが分かりました」