男のニッチな需要をエロスが支える睡眠ストリーム配信
Sleep, It’s a Thing
視聴者のニーズに応えるうちに映像が過激になる傾向はネットコンテンツの王道でもある PHOTO ILLUSTRATION BY SLATE. PHOTOS BY KAIPONG/ISTOCKーGETTY IMAGES PLUSーSLATE AND INSTA_PHOTOS/ISTOCKーGETTY IMAGES PLUSーSLATE
<「寝ている間も稼げる」夢の仕事? 画面の向こうの寝姿に癒やされる人、興奮する人>
フィンランドの映画監督ユハ・リリャは2004年後半にヘルシンキの映画祭で、アンディ・ウォーホルの『スリープ』(1963年)を初めて鑑賞した。この「映画へのアンチテーゼ」の上映時間は5時間20分。ただひたすら、裸の男性(ウォーホルの当時の恋人で詩人のジョン・ジョルノ)が寝ている姿が流れる。
その9年後、リリャは『スリープ』の50周年に合わせてオマージュを制作した。ウォーホルは30分間のオリジナル映像をスローとループ再生で流し続けた。一方、リリャは彼のカメラで連続撮影できる最長の1時間を8夜にわたり撮影した。粗いモノクロ映像はほとんどがリリャのむき出しの尻だが、風景やバイクの走行シーンも挿入されている。
上映してくれる美術館が見つからず、リリャはYouTubeに投稿した。メインチャンネルに加えて20年からはサブアカウントでも流すと、再生回数が一気に伸びて16万1000回に達した。
「『愛してる』とか『すごくセクシー』とか何百件もコメントが来た」。大半はゲイの「クマ」からで、リリャのようなぽっちゃりした毛むくじゃらの男性に共感して興奮するらしい。
これが動画配信の新しいトレンド、欲情的な睡眠のライブ配信だ。半裸の男性がまどろんでいる動画が世界中で投稿され、勃起の瞬間を求めて目を凝らす熱狂的なファンもいる。
ボクサーパンツ姿でペニスをアピールする人もいれば、投稿サイトの会員制機能を利用して、より露出度の高い下着やTバックの寝姿を有料配信する人もいる。性的コンテンツの投稿が多い会員制SNS「オンリーファンズ」のように月額の視聴料を自分で設定できるプラットフォームもあるが、大多数の配信者はシンプルに、キャプションに支払い先のリンクを追加してチップをもらう。
日常生活をシェアする
奇妙なことに、この手のコンテンツを投稿するのはほとんどが男性だ。今年2月だけで数百人がYouTubeで寝姿をストリーミング配信している。「Male sleep stream(男性睡眠ストリーム)」や「sleep stream」で検索すればすぐに見つかるだろう。
【動画】ボクサーパンツ姿...途中で股間が? 男性の睡眠ストリーム動画
ストリーミング配信の進化の過程で、日常の最もありふれた場面を共有することは、自然の流れでもある。
19年に22歳のマイケル・ゲーリーが、シャワーやセックス、自慰行為も含めて自分の生活を1年間、ノンストップでストリーミング配信した。本人いわく「世界で初めての試み」だった。