数字に驚異的に強いインドと日本の子供たち、放課後にしていたこととは?
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<数字の記憶と暗算の能力が高く、数学の国際コンテストを総なめするインドと日本をはじめとする東アジアの子供たち。しかし、実は知能とは関係ないという......。なぜ数字に強いのか?>
ライオンにクジラ、鳥や魚、カエルや昆虫まで数を数えることができる......。人間だけでなく、あらゆる生物が「数」を把握できることを学問的に迫った、話題書『魚は数をかぞえられるか? 生きものたちが教えてくれる「数学脳」の仕組みと進化』(講談社)より抜粋する。
日本とインドの子どもの数的能力
驚異的なのは、日本、中国、台湾、インドの多くの子どもたちの数的スキルだろう。彼らは、たいてい放課後の塾などで、徹底的に算盤(そろばん)の訓練を受けていた。何年にもわたって何百時間も計画的に訓練を積む子もおり、その多くは競技大会での成功を目指している。
そうした訓練をしばらく続けると、算盤自体が必要なくなり、むしろ邪魔になり始める。熟練者は、頭の中の算盤を使うのだ。
「フラッシュ暗算大会」と呼ばれる競技大会では、出場者は提示された数字を足していくのだが、記憶して処理するどころかほぼ読めないようなスピードで数字がどんどん提示されていく。英国の作家アレックス・ベロスの著書『Alex's Adventures in Numberland(未邦訳:数字の国のアレックスの冒険)』から、一例を紹介しよう。
子どもたちが画面を見つめている。ピーッという予告音が3度鳴ると、下記の数字がものすごい速さで表示されていくので、熟練した数学者のアレックスにもほとんど読めなかった。
164 597 320 872 913 450 568 370 619 482 749 123 310 809 561
最後の数字がさっと映し出された瞬間に、一人の学生が「7907」と解答した。
2012年の世界チャンピオン、小笠原尚良は、0.4秒間ずつ表示される15個の4桁の数字を正確に足し算した。私の知る限り、こうした驚くべき偉業がどのように達成されるのかを、認知理論的に、あるいは、脳機能的に調べた科学研究は存在しない。
頭の中の算盤を使う能力の興味深い特性の1つは、数に関係のない課題なら、並行してもう1つ、こなせる点だ。
アレックスのユーチューブチャンネルでは、9歳の女の子たちが難しい言語ゲームをしながら、20秒間にすばやく連続表示される30個の3桁の数字を足し上げていた。つまり、計算は、ほかの認知機能とは別の思考プロセスであることがわかる。
さて、こうした数にまつわる驚くべき偉業は、知能や記憶力のような天賦の才能によるものだ、と思うかもしれない。