最新記事

舞台

「70年代が蘇る...」ロック青春映画『ペニー・レイン』がブロードウェイで復活

The Power of Music

2022年12月9日(金)12時17分
ローレン・ジエラ
あの頃ペニー・レインと

ウィリアム少年(中央)は有力誌に抜擢され、バンドを密着取材することに MATTHEW MURPHY

<傑作映画『あの頃ペニー・レインと』がミュージカルとして生まれ変わった>

今季のブロードウェイには映画を基にした新作がいくつかお目見えする。『あの頃ペニー・レインと』もその1つ。映画のミュージカル化に新風を吹き込もうと、キャストもスタッフも気合が入る。

ストーリーは映画監督で脚本家のキャメロン・クロウの体験を下敷きにしている。1970年代、クロウは弱冠16歳でオールマン・ブラザーズ・バンドのコンサートツアーに密着し、記事を書いた。

今回クロウは脚本と劇中歌の歌詞を書き下ろした。既成曲で通すミュージカルもいいが、実体験に深く根差したストーリーには、テーマを明確に表すためにもオリジナル曲が必要だと考えたのだ。「これは音楽ファンについての物語。当時の曲を流すだけでは足りない」と、彼は語る。

クロウは音楽ジャーナリストとして働いた後、映画界に転身。『セイ・エニシング』(89年)、『シングルス』(92年)、『ザ・エージェント』(96年)でX世代の肖像を描いた後、自らの体験を取り上げたのが名作として今も愛される『あの頃ペニー・レインと』(2000年)だった。

この音楽青春映画で、俳優ビリー・クラダップは一躍脚光を浴びた。ケイト・ハドソンは「グルーピー」ならぬバンドを支える「バンドエイド」の少女ペニー・レインを演じて、アカデミー賞助演女優賞の候補になった。クロウはアカデミー賞脚本賞に輝き、名曲ぞろいのサウンドトラックはグラミー賞を獲得した。

ミュージカル版はサンディエゴ公演を経て、11月3日にブロードウェイのバーナード・B・ジェーコブズ劇場で幕を開けた。映画の精神を引き継ぎながら、新しい観客を引き付けるにはどうしたらいいのか。舞台化にはバランス感覚が求められたという。

カリスマ的なヒロイン、ペニー・レインに扮したソレア・ファイファーは「(オリジナルに)とことん忠実で誠実で、最高に楽しい舞台を作ろうと心を砕いた」と語る。

「オリジナルの物語を伝えつつ、これは舞台作品だという事実を踏まえて、劇場ならではの強みを生かそうとした」と、演出家のジェレミー・ヘリンは言う。

地味なキャラにも脚光

主人公ウィリアムはロックを熱愛し、音楽ジャーナリストを志す15歳。ローリングストーン誌に才能を買われ新進バンド、スティルウォーターのツアーの取材を任されたことから自己発見の旅に出る。

登場人物の描き方は映画版より細やかで、ペニー・レインのトレードマークである毛皮のコートの来歴も明かされる。新しい場面も追加され、キャラクターたちはオリジナル曲に乗ってそれぞれのストーリーを存分に表現する。

今、あなたにオススメ
ニュース速報

ワールド

中国軍が東シナ海で実弾射撃訓練、空母も参加 台湾に

ビジネス

再送-EQT、日本の不動産部門責任者にKJRM幹部

ビジネス

独プラント・設備受注、2月は前年比+8% 予想外の

ビジネス

イオン、米国産と国産のブレンド米を販売へ 10日ご
今、あなたにオススメ
MAGAZINE
特集:引きこもるアメリカ
特集:引きこもるアメリカ
2025年4月 8日号(4/ 1発売)

トランプ外交で見捨てられ、ロシアの攻撃リスクにさらされるヨーロッパは日本にとって他人事なのか?

メールマガジンのご登録はこちらから。
人気ランキング
  • 1
    自らの醜悪さを晒すだけ...ジブリ風AIイラストに「大はしゃぎ」する人に共通する点とは?
  • 2
    8日の予定が286日間に...「長すぎた宇宙旅行」から2人無事帰還
  • 3
    中居正広は何をしたのか? 真相を知るためにできる唯一の方法
  • 4
    【クイズ】世界で最も「レアアースの埋蔵量」が多い…
  • 5
    あまりにも似てる...『インディ・ジョーンズ』の舞台…
  • 6
    磯遊びでは「注意が必要」...6歳の少年が「思わぬ生…
  • 7
    ロシア空軍基地へのドローン攻撃で、ウクライナが「…
  • 8
    「隠れたブラックホール」を見つける新手法、天文学…
  • 9
    イラン領空近くで飛行を繰り返す米爆撃機...迫り来る…
  • 10
    【クイズ】アメリカの若者が「人生に求めるもの」ラ…
  • 1
    【クイズ】世界で最も「レアアースの埋蔵量」が多い国はどこ?
  • 2
    自らの醜悪さを晒すだけ...ジブリ風AIイラストに「大はしゃぎ」する人に共通する点とは?
  • 3
    ロシア空軍基地へのドローン攻撃で、ウクライナが「最大の戦果」...巡航ミサイル96発を破壊
  • 4
    中居正広は何をしたのか? 真相を知るためにできる…
  • 5
    800年前のペルーのミイラに刻まれた精緻すぎるタトゥ…
  • 6
    ガムから有害物質が体内に取り込まれている...研究者…
  • 7
    テスラの没落が止まらない...株価は暴落、業績も行き…
  • 8
    一体なぜ、子供の遺骨に「肉を削がれた痕」が?...中…
  • 9
    「この巨大な線は何の影?」飛行機の窓から撮影され…
  • 10
    8日の予定が286日間に...「長すぎた宇宙旅行」から2…
  • 1
    中国戦闘機が「ほぼ垂直に墜落」する衝撃の瞬間...大爆発する機体の「背後」に映っていたのは?
  • 2
    「テスラ時代」の崩壊...欧州でシェア壊滅、アジアでも販売不振の納得理由
  • 3
    「さようなら、テスラ...」オーナーが次々に「売り飛ばす」理由とは?
  • 4
    「一夜にして死の川に」 ザンビアで、中国所有の鉱山…
  • 5
    テスラ失墜...再販価値暴落、下取り拒否...もはやス…
  • 6
    「今まで食べた中で1番おいしいステーキ...」ドジャ…
  • 7
    市販薬が一部の「がんの転移」を防ぐ可能性【最新研…
  • 8
    テスラ販売急減の衝撃...国別に見た「最も苦戦してい…
  • 9
    テスラの没落が止まらない...株価は暴落、業績も行き…
  • 10
    【クイズ】世界で最も「レアアースの埋蔵量」が多い…
トランプ2.0記事まとめ
日本再発見 シーズン2
CHALLENGING INNOVATOR
Wonderful Story
MOOK
ニューズウィーク日本版別冊
ニューズウィーク日本版別冊

好評発売中