フィギュアファン歴30年の作家も驚く「羽生結弦が見せた神対応」
手紙は、便箋3枚にみっちりと手書きされていた。「昔から応援してくれてありがとうございます」「昔のように対応できなくてごめんなさい」「今は練習を頑張っています」と、現状の説明とファンへの想いが丁寧に記されている。
読んでいて、泣けてきた。真摯に言葉を紡いで、一文字ずつしたためて、どれだけ時間をかけたのだろうか。私は男女ジャンル問わず、フィギュアスケート選手全体を幅広く応援するタイプだが、目の前の彼女に対しては「あなたは羽生選手だけを応援してほしい」と思ってしまった。
栄光の日々とこれから
ライブビューイングでは、最後の演目となるアンコールの「パリの散歩道」の後に、挨拶を映した。画面の羽生選手は「みなさんのために頑張っていく」と語った。
私は、今でもたまに「この稀有な選手をアマチュア界に留めるためには、何が必要だったのだろうか」と考える。PCS(演技構成点)で、体操競技のように「10点満点の壁」を取り払えばよかったのだろうか。満点が決まっていると10点が要求する演技は年々変わり、どうしても他の選手との相対評価になりがちだ。
しかし、プロに転向しても、羽生選手はそれまで以上にアスリートだった。「プロローグ」では、シーズン中に試合に臨む選手のように身体ができあがっていて、4回転ジャンプもスピンの切れも良い。
過去の競技プログラムのステップは今のほうが進化しているほどで、10年前の衣装もサイズ直しせずに着こなしている。「試合がなくなったから、これからは好きなものをいっぱい食べて、ゆっくりして」と思っていた自分が恥ずかしくなる。
ファンの声を聞きながら、ショーを作り上げていく。演技で自分の生き様を見せて、力をくれたファンに恩返しをする。羽生選手にとっては、栄光に包まれたアマチュア時代がプロローグに向けた助走期間で、今、やっと最もやりたかったことに着手できたのかもしれない。
奇跡的に、八戸公演のチケットは入手できた。羽生結弦選手は横浜公演から1カ月を経て、さらに成長した姿を見せてくれるはずだ。しっかりと彼のスケートを目に焼き付け、メッセージを受け取りたいと思う。
※羽生結弦さんは、プロ転向後も「選手と呼んでほしい」と話しているため、本記事では選手の呼称を使いました。
【公式動画】『羽生結弦 アマチュア時代 全記録』
『羽生結弦 アマチュア時代 全記録』
CCCメディアハウス[編]
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