CDが売れない2000年代に入り、韓国の音楽産業だけがやったこと
そしてK‒POP界は今も時代の変化に柔軟に対応し、いかに時代を先取るかということを悩み続けていると感じます。いい意味でチャレンジャーたちだと思いますが、この話の最後に、日本でも参考にしやすい最新事例を紹介します。
Wonder Girls、TWICE、ITZY、NiziUなど大人気のK‒POPガールズグループを生み出し続けているJYPエンターテインメントが最近仕掛けている新しいガールズグループの話です。
こちらの新しいグループ名は、NMIXX(エンミックス)。2022年2月にデビューすることを発表し、その半年前の2021年8月にYouTubeチャンネル「JYPn」を開設しました。もちろん日本でもアイドルグループのデビュー前にYouTubeチャンネルなどのデジタルコンテンツでお披露目をすることはありますが、世界に向けて高画質の洗練された動画を、しかも半年も前から始めるのは珍しいことだと思います。
そしてこちらのYouTubeチャンネルでは何カ月もかけて順番に一人ひとりのメンバーを公開する動画をアップし、それぞれのメンバーのダンスや歌唱力などを披露して期待感を高めました。まだ世に出る前から熱狂的なファンを獲得するための新たなアプローチだと思いますが、最初に公開された動画は3カ月ほどで300万回(2021年11月時点)の再生を超えるほど注目を集めました(注10)。
※注10:NMIXXがデビューするまでは「JYPn」という仮の名で公開され、2022年2月のデビューとともにNMIXXという正式なグループ名に変更されました。2022年2月22日にシングル「AD MARE」でデビュー。デビューして3カ月あまりでYouTubeチャンネル登録者数が100万人を超えました。
また、その前の2021年7月にはNMIXXのデビューシングル限定版として「ブラインドパッケージ」を数量限定で発売し、そのパッケージの中にはメンバー全員のフォトブック、フォトカード、ポスターなどが入っているため、まだメンバーの顔が知らされていないままファンを集めるという面白い企画を仕掛けました。限定版のアルバムを購入してくれた人にだけ優先してメンバーの顔や年齢、出身などの情報を明かすという仕掛けも用意されました。
ガールズグループの名家と言われるJYPエンターテインメントならではの自信の表われだと思いますが、先行注文数が6万枚以上を達成し、まだ顔も知らないガールズグループへの高い関心や期待感を証明しました。
このようなやり方は大きく仕組みを変えるほどではないかもしれませんが、デジタル上でどのように話題を作ることができるのかなど、参考になるよい事例ではないでしょうか。
『コンテンツ・ボーダーレス』
カン・ハンナ 著
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