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日本人は「小ぶりなライフスタイル」を誇りに思っていい

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2022年8月2日(火)20時05分
アズビー・ブラウン(建築家、作家)

路地を「庭」に変える匠の技

同様の都市と比べると公園や緑地はそれほど多くないが、裏通りは植物や花々でいっぱいだ。家周りのわずかな隙間に、美しいミニガーデンを出現させる工夫には目を見張る。

ここにも、狭い庭に天然光やすだれの効果を組み合わせて、空間をより広く見せた江戸由来の知恵が生きている。鉢植えをたくさん置いて近所を「緑化」する手法もしかりだ。

立地の良さを追求し続ける東京の住民は、世界のほかの場所ではあり得ないと却下されるはずの空間もすみかにする。

私が訪れた何軒かの美しく快適な家は、わずか数区画分の駐車スペース跡に建てられていた。しばらく前に話題になった狭小住宅「9坪ハウス」は、優れた建築家らが生み出した驚くべき成果だ。

日本の建築家は誰もが当初から、限られたスペースという難題と格闘している。驚異的な設計ノウハウはそのたまものだ。

浴室やキッチンの必要最小限のサイズは? 階段や床下を収納場所にする方法は? 空間的制約を巧みに処理する技を世界が目にするなか、日本では当たり前のコンパクトな住まいが、外国の人口過密都市に登場し始めている。

日本の人々、なかでも東京人は「小ぶりなライフスタイル」の知恵を誇りに思っていい。

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アズビー・ブラウン(建築家、作家)/1985年から日本在住。著書に『寺社建築の秘密』(未邦訳)、『江戸に学ぶエコ生活術』(CCCメディアハウス)など Photo: Mitsue Nagase

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