エネルギーと魅力に溢れた2人をずっと見ていたくなる青春映画『リコリス・ピザ』
The Immaculate Vibes
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ゲーリー(左)とアラナは、ぶつかりながらもエネルギッシュに前へ前へと進み続ける ©2021 METRO-GOLDWYN-MAYER PICTURES INC. ALL RIGHTS RESERVED.
<P・T・アンダーソン監督の新作映画『リコリス・ピザ』は、大物俳優も脇役としてこぞってサポートする>
ポール・トーマス・アンダーソン監督の新作『リコリス・ピザ』は、1970年代のハリウッドが舞台の青春映画だ。ただし映画業界の内幕を描くのではない。映画製作スタジオが集まるサンフェルナンドバレー地区に住む高校生の、はちゃめちゃながらも愛すべき成長物語だ。
映画の舞台と同じエリアで映画関係者に囲まれて育ったアンダーソン(51)にとって、本作はこれまでで最も自伝に近い作品のように感じられる。ただし実際に物語のベースとなったのは、子役スター転じて現在は映画プロデューサーとして活躍するゲーリー・ゴーツマン(69)の生い立ちについて、アンダーソンが直接聞いた話だ。
主人公ゲーリー・バレンタインは、サンフェルナンドバレーの高校に通う15歳。アンダーソンはこのキャラクターに特別な愛着を感じているようで、数多くのアンダーソン作品に出演した故フィリップ・シーモア・ホフマンの息子、クーパー・ホフマン(19)をこの役に起用した。
ゲーリーが恋に落ちるのは、10歳も年上のアラナ・ケイン。演じるのは、人気抜群の3人姉妹ポップロックバンド「ハイム」の末っ子であるアラナ・ハイムだ。アラナはゲーリーの通う高校の証明写真撮影日に、カメラマンのアシスタントとしてやって来る。
頭の回転が速くて皮肉屋で、ちょっぴり高飛車だけれど自分が何になりたいか分からなくて、どこか弱さを秘めたアラナは最高に魅力的なキャラクターだ。ミニスカートにウェッジサンダル姿で登場するアラナに、ゲーリー(と観客)は一目ぼれする。
大スターが続々と出演
さっそくアラナにアプローチするゲーリーだが、年上の彼女は笑って相手にしない。だが食事を一緒にすると、2人はすぐに友達兼ビジネスパートナーの関係になる。
ゲーリーが端役で出演した映画のプロモーションのためにニューヨークを訪問することになったときは、シングルマザーで多忙なゲーリーの母親に代わって、アラナがゲーリーの保護者として同行することになる。
これを機にアラナは女優を目指すことを考えるようになる。ゲーリーは少ないツテを駆使して懸命にサポートしようとするが、うまくいかない。その一方で、彼は当時大流行したウオーターベッドの販売事業を立ち上げ、意外にも好調なスタートを切る。
この映画の中盤では、大スターが続々と登場して、実在した大スターとおぼしきキャラクターを喜々として演じる。