最新記事

スポーツ

プロ転向を表明した、羽生結弦の「第2章」がいよいよ開演

A New Freedom To Shine

2022年7月27日(水)12時41分
茜 灯里(作家、科学ジャーナリスト)
羽生結弦

羽生の「決意表明」会見は温かい雰囲気の中で行われた(7月19日) KIM KYUNG-HOONーREUTERS

<フィギュアスケートの「一つの時代」は終わった。しかし、他者との戦いから自由になることで、「自分しかできないジャンプ」と「自分が目指す表現者」をより追求できるようになり、さらなる高みへ>

7月19日17時、フィギュアスケート選手の羽生結弦(27)は前日に告知した「決意表明」の記者会見を始めた。関係者や集まった記者らに謝意を伝えると、すぐに「プロのアスリートとして、スケートを続けていくことを決意いたしました」と語った。

つまり競技生活を終え、アイスショーなどで活躍するプロスケーターに転向するということだ。羽生は「引退する」という言葉を決して使わなかった。

フィギュアスケートでは、競技会に出場する選手は全てアマチュアだ。プロ転向で選手登録を外れると、五輪や世界選手権などへの出場資格はなくなる。

現在の規定では、プロに転向しても1度だけアマチュアに復帰できるが、羽生は「(競技会から離れる)寂しさは全然ないです。今後は試合という限られた場でなく、もっといろいろな方法で自分のスケートを見てもらえる」と晴れやかな顔で語った。

ソチ、平昌(ピョンチャン)の五輪2連覇、男子初のスーパースラム(五輪、世界選手権、四大陸選手権、グランプリファイナル〔GPF〕、世界ジュニア選手権、ジュニアGPFで優勝)の達成、世界記録を通算19回更新、北京五輪で五輪史上初の4回転半(4A)ジャンプ挑戦──数々の偉業を成し遂げた「絶対王者」が、競技会から去った。この日、フィギュアスケートの一つの時代が終わった。

【関連記事】文中で紹介した演技の詳細解説はこちら

「ニース落ち」が続出

仙台市で生まれ育った羽生は、姉の影響で4歳からフィギュアスケートを始めた。ぜんそくの持病があり、改善が目的の1つだった。小2からは都築章一郎コーチに師事し、順調に実力を伸ばしていく。

都築コーチの指導はジャンプの正しい回転軸を重視するもので、羽生の代名詞である美しいジャンプの礎となった。9歳で全日本ノービスB(9~10歳)優勝、2カ月後には初参加の国際大会で優勝した。

しかし、直後にホームリンクが閉鎖。離れたリンクに練習拠点を移さざるを得ず、2007年までの約2年半は競技成績が停滞した。

ホームリンクの営業再開後、羽生の快進撃が始まった。振り付けもできる阿部奈々美コーチに師事すると、全日本ノービスA(11~12歳)で優勝。08-09年シーズンにジュニアクラスになると、全日本ジュニア優勝。翌シーズンは国際試合で全勝し、髙橋大輔、織田信成、小塚崇彦に続く4人目かつ日本人男子最年少の世界ジュニア王者となった。

今、あなたにオススメ
ニュース速報

ワールド

米国との建設的な対話に全面的にコミット=ゼレンスキ

ワールド

米、ロシアが和平合意ならエネルギー部門への制裁緩和

ワールド

トランプ米政権、コロンビア大への助成金を中止 反ユ

ワールド

ミャンマー軍事政権、2025年12月―26年1月に
今、あなたにオススメ
MAGAZINE
特集:進化し続ける天才ピアニスト 角野隼斗
特集:進化し続ける天才ピアニスト 角野隼斗
2025年3月11日号(3/ 4発売)

ジャンルと時空を超えて世界を熱狂させる新時代ピアニストの「軌跡」を追う

メールマガジンのご登録はこちらから。
人気ランキング
  • 1
    テスラ失墜...再販価値暴落、下取り拒否...もはやステータスではなく「負債」?
  • 2
    メーガン妃が「菓子袋を詰め替える」衝撃映像が話題に...「まさに庶民のマーサ・スチュアート!」
  • 3
    「これがロシア人への復讐だ...」ウクライナ軍がHIMARS攻撃で訓練中の兵士を「一掃」する衝撃映像を公開
  • 4
    同盟国にも牙を剥くトランプ大統領が日本には甘い4つ…
  • 5
    テスラ離れが急加速...世界中のオーナーが「見限る」…
  • 6
    うなり声をあげ、牙をむいて威嚇する犬...その「相手…
  • 7
    テスラ大炎上...戻らぬオーナー「悲劇の理由」
  • 8
    「テスラ時代」の崩壊...欧州でシェア壊滅、アジアで…
  • 9
    ラオスで熱気球が「着陸に失敗」して木に衝突...絶望…
  • 10
    【クイズ】ウランよりも安全...次世代原子炉に期待の…
  • 1
    「テスラ時代」の崩壊...欧州でシェア壊滅、アジアでも販売不振の納得理由
  • 2
    テスラ失墜...再販価値暴落、下取り拒否...もはやステータスではなく「負債」?
  • 3
    テスラ離れが急加速...世界中のオーナーが「見限る」ワケ
  • 4
    アメリカで牛肉さらに値上がりか...原因はトランプ政…
  • 5
    イーロン・マスクの急所を突け!最大ダメージを与え…
  • 6
    「浅い」主張ばかり...伊藤詩織の映画『Black Box Di…
  • 7
    メーガン妃が「菓子袋を詰め替える」衝撃映像が話題…
  • 8
    ニンジンが糖尿病の「予防と治療」に効果ある可能性…
  • 9
    「コメが消えた」の大間違い...「買い占め」ではない…
  • 10
    著名投資家ウォーレン・バフェット、関税は「戦争行…
  • 1
    テスラ離れが急加速...世界中のオーナーが「見限る」ワケ
  • 2
    「テスラ時代」の崩壊...欧州でシェア壊滅、アジアでも販売不振の納得理由
  • 3
    口から入ったマイクロプラスチックの行く先は「脳」だった?...高濃度で含まれる「食べ物」に注意【最新研究】
  • 4
    テスラ失墜...再販価値暴落、下取り拒否...もはやス…
  • 5
    「健康寿命」を延ばすのは「少食」と「皮下脂肪」だ…
  • 6
    【一発アウト】税務署が「怪しい!」と思う通帳とは?
  • 7
    がん細胞が正常に戻る「分子スイッチ」が発見される…
  • 8
    戦場に「北朝鮮兵はもういない」とロシア国営テレビ.…
  • 9
    人気も販売台数も凋落...クールなEVテスラ「オワコン…
  • 10
    細胞を若返らせるカギが発見される...日本の研究チー…
トランプ2.0記事まとめ
日本再発見 シーズン2
CHALLENGING INNOVATOR
Wonderful Story
MOOK
ニューズウィーク日本版別冊
ニューズウィーク日本版別冊

好評発売中