最新記事

映画

36年たっても昇進していない、「あの男」が帰ってきた

A Great Summer Movie

2022年6月7日(火)14時41分
デーナ・スティーブンズ(映画評論家)
トム・クルーズ

「超高速飛行」の見せ場は変わらず ©2022 PARAMOUNT PICTURES. CORPORATION ALL RIGHTS RESERVED.

<前作を見ていなくても、十分に楽しめる。スタントマンも特撮も嫌いな59歳、いぶし銀のトム・クルーズが魅せる、21世紀版『トップガン』>

来るべき未来に「おまえの居場所はないぞ」。相変わらず平気でルールを無視する戦闘機乗りの「マーヴェリック」ことピート・ミッチェル(トム・クルーズ)に、厳格な上官(ジョン・ハム)はそう通告した。さらに上官の海軍少将(エド・ハリス)も「おまえみたいなのは絶滅危惧種だ」と言い渡す。だが不屈の戦闘機乗りは瞳を輝かせ、こう答えるのだった。

「そのとおりです。が、まだ絶滅してません」

トム・クルーズの出世作『トップガン』が36年ぶりに戻ってきた。創業110年の老舗パラマウントが1億5200万ドルの製作費を投じた、今夏の意欲作だ。

1986年公開の元祖『トップガン』は時代錯誤な愛国映画と見なされ、決して事前の評価は高くなかった。しかし公開されるや想定外の大ヒットとなり、サウンドトラックのアルバムも歴史に残るベストセラーになった。

もちろん、その後の年月で映画の製作や配給、そして映画の鑑賞体験を取り巻く状況は一変した。今の時代に生身の中年男を主人公とし、アニメのスーパーヒーローも登場しないアクション映画に巨費を投じるのは無謀だった。その「中年男」が、トム・クルーズでない限りは。

36年もたったのに、『トップガン マーヴェリック』のオープニングは昔とほとんど同じだ。インタータイトルの文言や書体もそっくりだし、音楽はケニー・ロギンスの、そう「デンジャー・ゾーン」。これがまた実に懐かしくて、往年のファンなら思わず全身が震えだすはずだ。さあ、準備はいいかな、いざ超音速の冒険が始まるぞ。

危険な飛行シーンは健在

海軍航空隊に入隊してから40年近い歳月が流れても、異端児マーヴェリックはちっとも昇進していない。型破りな言動は相変わらずで、ある問題行動を理由に降格処分となった彼は、なぜか自らが新人時代に所属したパイロット養成チーム「トップガン」で教官を務めることになった。

彼が担当するのは、国外での特殊任務のために選び抜かれた若きパイロット集団。中には唯一の女性フェニックス(モニカ・バルバロ)もいれば、若い頃のマーヴェリック同様にうぬぼれ屋で自信過剰なハングマン(グレン・パウエル)もいる。

今、あなたにオススメ
ニュース速報

ビジネス

ECBに追加利下げ余地、インフレ見通し「心強い」と

ワールド

韓国憲法裁、尹大統領弾劾審判で最終弁論 罷免の可否

ワールド

ロシアのレアアース資源は豊富、米との協力に前向き=

ビジネス

トヨタ、監査等委員会設置会社に 岡本元財務次官を社
今、あなたにオススメ
MAGAZINE
特集:破壊王マスク
特集:破壊王マスク
2025年3月 4日号(2/26発売)

「政府効率化省」トップとして米政府機関に大ナタ。イーロン・マスクは救世主か、破壊神か

メールマガジンのご登録はこちらから。
人気ランキング
  • 1
    富裕層を知り尽くした辞めゴールドマンが「避けたほうがいい」と断言する金融商品
  • 2
    細胞を若返らせるカギが発見される...日本の研究チームが発表【最新研究】
  • 3
    障がいで歩けない子犬が、補助具で「初めて歩く」映像...嬉しそうな姿に感動する人が続出
  • 4
    がん細胞が正常に戻る「分子スイッチ」が発見される…
  • 5
    日本人アーティストが大躍進...NYファッションショー…
  • 6
    人気も販売台数も凋落...クールなEVテスラ「オワコン…
  • 7
    見逃さないで...犬があなたを愛している「11のサイン…
  • 8
    口から入ったマイクロプラスチックの行く先は「脳」…
  • 9
    国連総会、ウクライナと欧州作成の決議案採択...米露…
  • 10
    メーガン妃が「アイデンティティ危機」に直面...「必…
  • 1
    口から入ったマイクロプラスチックの行く先は「脳」だった?...高濃度で含まれる「食べ物」に注意【最新研究】
  • 2
    がん細胞が正常に戻る「分子スイッチ」が発見される【最新研究】
  • 3
    人気も販売台数も凋落...クールなEVテスラ「オワコン化」の理由
  • 4
    細胞を若返らせるカギが発見される...日本の研究チー…
  • 5
    障がいで歩けない子犬が、補助具で「初めて歩く」映…
  • 6
    動かないのに筋力アップ? 88歳医大名誉教授が語る「…
  • 7
    ビタミンB1で疲労回復!疲れに効く3つの野菜&腸活に…
  • 8
    飛行中の航空機が空中で発火、大炎上...米テキサスの…
  • 9
    【クイズ】世界で1番マイクロプラスチックを「食べて…
  • 10
    ソ連時代の「勝利の旗」掲げるロシア軍車両を次々爆…
  • 1
    週刊文春は「訂正」を出す必要などなかった
  • 2
    中居正広は何をしたのか? 真相を知るためにできる唯一の方法
  • 3
    【一発アウト】税務署が「怪しい!」と思う通帳とは?
  • 4
    口から入ったマイクロプラスチックの行く先は「脳」…
  • 5
    「健康寿命」を延ばすのは「少食」と「皮下脂肪」だ…
  • 6
    1日大さじ1杯でOK!「細胞の老化」や「体重の増加」…
  • 7
    がん細胞が正常に戻る「分子スイッチ」が発見される…
  • 8
    戦場に「北朝鮮兵はもういない」とロシア国営テレビ.…
  • 9
    人気も販売台数も凋落...クールなEVテスラ「オワコン…
  • 10
    「DeepSeekショック」の株価大暴落が回避された理由
トランプ2.0記事まとめ
日本再発見 シーズン2
CHALLENGING INNOVATOR
Wonderful Story
MOOK
ニューズウィーク日本版別冊
ニューズウィーク日本版別冊

好評発売中