36年たっても昇進していない、「あの男」が帰ってきた
A Great Summer Movie
マーヴェリックにとって最も扱いにくい生徒はルースター(マイルズ・テラー)だ。かつて飛行訓練中の事故で命を落としたマーヴェリックの相棒グース(アンソニー・エドワーズ)の息子で、何らかの理由でずっとマーヴェリックに恨みを抱いている。
前作でマーヴェリックのライバルだったアイスマン(バル・キルマー)との再会もある。順調に出世したアイスマンは、実はマーヴェリックが問題を起こすたびに彼を守り、除隊処分だけは免れるように尽力していた。
36年前と同様、今度もマーヴェリックは恋をする。お相手は、バーテンダーでシングルマザーのペニー(ジェニファー・コネリー)。ルースターが前作での父親同様に、ピアノで「火の玉ロック」の弾き語りをする場面もある。
そして前作同様、今回の訓練生たちも空中で危険を冒し、上官たちに厳しく叱責されるものの、空に出れば再び同じことを繰り返す。予想外の展開はないが、彼らが交わす会話は楽しく、飛行シーンも興奮をかき立てられる。2時間17分の上映時間はあっという間に過ぎていく。
そしてこれも前作同様、重要任務が展開される場所がどこかは意図的に伏せられている。トップガン・チームが「排除」を命じられるウラン精製施設がある「ならず者国家」の国名は明かされず、雪深い山岳地帯だということしか分からない。
そして後半戦に入ると、撃墜された仲間を救出する決死の任務で敵前を横切るクルーズは、あのトレードマークの全力疾走を披露する。両手をブンブンと振り、両脚をピストンのように高速回転させて走る、あのシーンだ。
さびない銀幕のスター
ご承知のように、彼はスタントマンを使わないし、特撮も嫌い。だから本当に自分で走って撮影した。とても59歳とは思えない(正確に言えば撮影当時は56歳ぐらいだったが)走りだ。これぞさびない鋼鉄のスター。
ハリス演じる生真面目な少将をはじめとする軍の高官たちは、今はどんなに危険な任務も遠隔操作で遂行できる高性能ドローンの時代だから、老いぼれた生身のヒーローなどはアナログ時代の遺物だと考えたがる。
だが21世紀の戦争でも、マーヴェリックはドローンに負けなかった。クルーズも21世紀のハリウッドで、アニメのスーパーヒーローに負けていない。たとえけがや老化や避け難い死のリスクを抱えていても、まだ生身のヒーローの出番はある。その証拠がトム・クルーズだ。