最新記事

映画

36年たっても昇進していない、「あの男」が帰ってきた

A Great Summer Movie

2022年6月7日(火)14時41分
デーナ・スティーブンズ(映画評論家)

220614p50_TGN_02.jpg

訓練生には女性も ©2022 PARAMOUNT PICTURES. CORPORATION ALL RIGHTS RESERVED.

マーヴェリックにとって最も扱いにくい生徒はルースター(マイルズ・テラー)だ。かつて飛行訓練中の事故で命を落としたマーヴェリックの相棒グース(アンソニー・エドワーズ)の息子で、何らかの理由でずっとマーヴェリックに恨みを抱いている。

前作でマーヴェリックのライバルだったアイスマン(バル・キルマー)との再会もある。順調に出世したアイスマンは、実はマーヴェリックが問題を起こすたびに彼を守り、除隊処分だけは免れるように尽力していた。

36年前と同様、今度もマーヴェリックは恋をする。お相手は、バーテンダーでシングルマザーのペニー(ジェニファー・コネリー)。ルースターが前作での父親同様に、ピアノで「火の玉ロック」の弾き語りをする場面もある。

そして前作同様、今回の訓練生たちも空中で危険を冒し、上官たちに厳しく叱責されるものの、空に出れば再び同じことを繰り返す。予想外の展開はないが、彼らが交わす会話は楽しく、飛行シーンも興奮をかき立てられる。2時間17分の上映時間はあっという間に過ぎていく。

そしてこれも前作同様、重要任務が展開される場所がどこかは意図的に伏せられている。トップガン・チームが「排除」を命じられるウラン精製施設がある「ならず者国家」の国名は明かされず、雪深い山岳地帯だということしか分からない。

そして後半戦に入ると、撃墜された仲間を救出する決死の任務で敵前を横切るクルーズは、あのトレードマークの全力疾走を披露する。両手をブンブンと振り、両脚をピストンのように高速回転させて走る、あのシーンだ。

さびない銀幕のスター

ご承知のように、彼はスタントマンを使わないし、特撮も嫌い。だから本当に自分で走って撮影した。とても59歳とは思えない(正確に言えば撮影当時は56歳ぐらいだったが)走りだ。これぞさびない鋼鉄のスター。

ハリス演じる生真面目な少将をはじめとする軍の高官たちは、今はどんなに危険な任務も遠隔操作で遂行できる高性能ドローンの時代だから、老いぼれた生身のヒーローなどはアナログ時代の遺物だと考えたがる。

だが21世紀の戦争でも、マーヴェリックはドローンに負けなかった。クルーズも21世紀のハリウッドで、アニメのスーパーヒーローに負けていない。たとえけがや老化や避け難い死のリスクを抱えていても、まだ生身のヒーローの出番はある。その証拠がトム・クルーズだ。

今、あなたにオススメ
ニュース速報

ビジネス

アメリカン航空、今年の業績見通しを撤回 関税などで

ビジネス

日産の前期、最大の最終赤字7500億円で無配転落 

ビジネス

FRBの独立性強化に期待=共和党の下院作業部会トッ

ビジネス

現代自、関税対策チーム設置 メキシコ生産の一部を米
今、あなたにオススメ
MAGAZINE
特集:独占取材 カンボジア国際詐欺
特集:独占取材 カンボジア国際詐欺
2025年4月29日号(4/22発売)

タイ・ミャンマーでの大摘発を経て焦点はカンボジアへ。政府と癒着した犯罪の巣窟に日本人の影

メールマガジンのご登録はこちらから。
人気ランキング
  • 1
    教皇死去を喜ぶトランプ派議員「神の手が悪を打ち負かした」の真意
  • 2
    トランプ政権はナチスと類似?――「独裁者はまず大学を攻撃する」エール大の著名教授が国外脱出を決めた理由
  • 3
    【クイズ】「地球の肺」と呼ばれる場所はどこ?
  • 4
    日本の10代女子の多くが「子どもは欲しくない」と考…
  • 5
    「スケールが違う」天の川にそっくりな銀河、宇宙初…
  • 6
    【クイズ】世界で最もヒットした「日本のアニメ映画…
  • 7
    アメリカは「極悪非道の泥棒国家」と大炎上...トラン…
  • 8
    「生はちみつ」と「純粋はちみつ」は何が違うのか?.…
  • 9
    【クイズ】世界で1番「iPhone利用者」の割合が高い国…
  • 10
    健康寿命は延ばせる...認知症「14のリスク要因」とは…
  • 1
    「生はちみつ」と「純粋はちみつ」は何が違うのか?...「偽スーパーフード」に専門家が警鐘
  • 2
    【クイズ】世界で最も「半導体の工場」が多い国どこ? 1位は意外にも...!?
  • 3
    しゃがんだ瞬間...「えっ全部見えてる?」ジムで遭遇した「透けレギンス」投稿にネット騒然
  • 4
    「スケールが違う」天の川にそっくりな銀河、宇宙初…
  • 5
    【クイズ】「地球の肺」と呼ばれる場所はどこ?
  • 6
    【渡航注意】今のアメリカでうっかり捕まれば、裁判…
  • 7
    女性職員を毎日「ランチに誘う」...90歳の男性ボラン…
  • 8
    【クイズ】売上高が世界1位の「半導体ベンダー」はど…
  • 9
    教皇死去を喜ぶトランプ派議員「神の手が悪を打ち負…
  • 10
    『職場の「困った人」をうまく動かす心理術』は必ず…
  • 1
    【話題の写真】高速列車で前席のカップルが「最悪の行為」に及ぶ...インド人男性の撮影した「衝撃写真」にネット震撼【画像】
  • 2
    健康寿命を伸ばすカギは「人体最大の器官」にあった...糖尿病を予防し、がんと闘う効果にも期待が
  • 3
    【クイズ】世界で最も「レアアースの埋蔵量」が多い国はどこ?
  • 4
    【心が疲れたとき】メンタルが一瞬で “最…
  • 5
    テスラの没落が止まらない...株価は暴落、業績も行き…
  • 6
    中居正広は何をしたのか? 真相を知るためにできる…
  • 7
    間食はなぜ「ナッツ一択」なのか?...がん・心疾患・抜…
  • 8
    自らの醜悪さを晒すだけ...ジブリ風AIイラストに「大…
  • 9
    北朝鮮兵の親たち、息子の「ロシア送り」を阻止する…
  • 10
    【クイズ】世界で最も「半導体の工場」が多い国どこ…
トランプ2.0記事まとめ
日本再発見 シーズン2
CHALLENGING INNOVATOR
Wonderful Story
MOOK
ニューズウィーク日本版別冊
ニューズウィーク日本版別冊

好評発売中