BTSはただのアイドルではない、ARMYは世界規模で「善」を促進する
BTS SAVING THE WORLD?
むしろ問題は社会的な孤立や経済的不安、長期にわたる孤独などだ。社会的孤立は「既にある怒りや恨みを増幅させ、人々を過激主義に追いやりがち」だと、極右主義分析センターという団体は警告している。
新型コロナウイルスのパンデミックによるロックダウン(都市封鎖)中にいくつもの奇妙な陰謀説が広まったのも、こうした理由によるのだろう。
孤独を抱えている人が、みんな陰謀論や過激思想に走ると言うつもりはない。しかしパンデミックやテクノロジーによって孤立化と細分化がますます進んだ現代の社会には、いくつものリスクが伴う。そして20世紀の偉大な政治哲学者であるハンナ・アーレントは、このことを十分に理解していた。
アーレントは、社会の「競争的な構造とそれに付随する孤独感」がいかに「社会の細分化」を進ませるかを指摘していた。そしてこの細分化の結果、「とりわけ暴力的なナショナリズムが促進され、それに染まった大衆のリーダーが人々を扇動する」のだと。
彼女がこう書いたのは第2次大戦のすぐ後だが、まるでトランプ以後の米共和党の状況を述べているかに見える。
私が言いたいのは、Kポップファンは極右主義者と同様に「カルト的」で「極端」というレッテルを貼られがちだが、彼らのアクティビズムは過激化を止める方向の運動と言えるのではないか、ということだ。
極右の活動家とKポップファンのアクティビストは違う。何といっても、後者は世界の征服ではなく、世界を守ることを目指している。
音楽としてのKポップが俗受けを狙った人工的なもので、グローバル資本主義の生み出したポストモダンな商品であることは確かだ。でも、いいじゃないか。音楽だもの、ノリが良くて何が悪い!
フェミニスト活動家のエマ・ゴールドマンだって、今の時代に生きていれば自分の集会にBTSを招待して演奏させただろう。大衆的な音楽を毛嫌いしていたドイツの哲学者テオドール・アドルノだって、今ならBTSのファンになったかもしれない。
そしてメンバーの中では、きっとJ-HOPE(ジェイ・ホープ)を好きになる。
いつだって、人はHOPE(希望)を選びたいものだから。
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