映画『テンダー・バー』に反映される、バーで成長したクルーニー監督の思い出
Clooney's Own Bar Life

クルーニーの友人アフレック(左)がJR(右)の叔父役を好演 Ⓒ2021 AMAZON CONTENT SERVICES LLC
<少年時代をバーで「大人と一緒に」過ごしていたジョージ・クルーニー監督が、自身の経験を重ねて映画化した『僕を育ててくれたテンダー・バー』>
父と疎遠な少年が、母方の叔父が営むバーに出入りし、大人の振る舞いを親身な叔父から教わって成長し、小説家を目指していく──。
『僕を育ててくれたテンダー・バー』(アマゾンプライム・ビデオで配信中)は、ジャーナリストであるJ・R・モーリンガーの自伝を下敷きにした映画だが、監督であるジョージ・クルーニー自身の少年時代のバーでの経験も重ねられている。
クルーニーは今、イギリス南部オックスフォードシャー州で暮らしている。16世紀から続くパブ「ブル・イン」がお気に入りだが、そこは彼が少年時代を過ごしたアメリカのバーとは大違いだ。
「『ブル』は風情がある。多感な少年時代に私が大人の世界を感じたバーは、ケンタッキー州の町にあって、母はそこを『血だまり』と呼んでいた」とクルーニーは本誌に語った。銃声が聞こえることも珍しくない場所だったという。『テンダー・バー』は、母子家庭で育つ少年JR(ダニエル・ラニエリ)が叔父チャーリー(ベン・アフレック)の「ディケンズ・バー」に入り浸る日々を通じて理想の父親像を探す物語だ。
大人と触れ合える世界
「JRと同じ12歳くらいのころ、『血だまり』バーの上階に住むジョージおじさんと一緒に競馬場で働いていた」とクルーニーは言う。「おじさんのタバコを買いにバーへ行き、そこで個性的な人たちに出会った。楽しかった」
一方で、少年時代をバーで過ごすという自身の経験が普通ではないことも承知している。「成長過程の子供がバーで過ごすのを奨励する気はないが、大人と触れ合える貴重な時間だったとは思う」
クルーニーは後に、演劇クラスで長年の制作パートナーになるグラント・ヘスロフと出会う。2人は映画制作会社スモークハウス・ピクチャーズを設立し、名作『アルゴ』を送り出した(今度の『テンダー・バー』も同社の作品)。「僕は頭脳で、彼はルックス。完璧なコンビだよ」と言ってヘスロフは笑った。「出会ったのは僕が19で、彼が21のとき。それで、いつも言っていた。『楽しめなくなったら、すぐにやめようぜ』って」