【大谷翔平MVP】アメリカに愛され尊敬される二刀流 ショーヘイはいかに「唯一無二」か
IT’S SHO-TIME FOR THE MLB
MLBの元内野手で、エンゼルスのテレビ中継で解説者を長年務めているホセ・モタは、大谷の楽しげな表情を見るのが好きだと言う。「試合前に準備している姿が好きなんだ。エンゼルスのチームメイトや監督のジョー、そしてMLBの環境に敬意を払っていることがよく分かる」
モタの父親のマニーは、20シーズンにわたりMLBでプレーし、ロサンゼルス・ドジャースでは代打で活躍した人物で、ホセの弟であるアンディもMLBの元内野手だ。大谷は、MLBでも有名な野球一家の一員であるモタのハートもつかんだのだ。
ドミニカ共和国出身のリリーフ投手ハンセル・ロブレスがエンゼルスに在籍していたとき、大谷がドミニカ共和国の音楽を教わっていた姿が印象に残っていると、モタは言う。
モタ自身も大谷との異文化交流を楽しんでいる。大谷が毎週1つずつ日本語の単語をモタに教えているのだ。ある日、モタが携帯電話をいじっているところに大谷が通り掛かり、モタの手元を指さして「ケータイデンワ」と笑顔で言った。「ずいぶんと長い呼び名だね」とモタが言い、2人で大笑いしたという。
大谷は、チームメイトとゲームの対戦で盛り上がることも多い。特にお気に入りなのは携帯ゲームの『クラッシュ・ロワイヤル』だ。同僚投手のブレイク・パーカーによれば、大谷はゲームで相手の機先を制する方法を熟知しているとのことだ。
大谷は、日本球界のスーパースターだからといって全く特別扱いされていないと、モタは言う。「大谷はMLBで評価を勝ち取ろうとしてきた。いまチームメイトたちは、大谷の『ショータイム』を、とりわけマウンドに立っている時間を楽しんでいる。その点は間違いない」
モタは、日本からやって来るファンと大谷との交流を見るのが楽しいという。「スタンドで日本語のボードを掲げているファンに気付くと、大谷はそちらに目を向け、胸に手を当てて『ありがとう』と言う」
この数カ月は、誰もが──大谷自身も、エンゼルスの仲間たちも、対戦相手も、そして球場やテレビで見守ったMLBファンも──忘れることのできない時間になった。
目を閉じれば、ヤンキース戦の衝撃的なホームスチールがありありと目に浮かぶ人もいるだろう。
「顔を上げたら、ショーヘイがホームに滑り込んでいた」と、そのとき左のバッターボックスに入っていた内野手のジャレド・ウォルシュは振り返る。「『ワオ! まじかよ』と思った」
ウォルシュは言う。「ショーヘイがものすごいことをやってのけたのは、この日だけではない。毎日、すぐそばでショーを見られるのは最高のご褒美だ」
(筆者はMLB専門のスポーツジャーナリスト。取材歴30年。ロサンゼルス・タイムズ紙やCBSスポーツなどのMLB担当記者・コラムニストを歴任。共著に『野球の90%はメンタル』〔邦訳・春秋社〕)
※本誌10月12日号「アメリカが愛する大谷翔平」特集号より掲載。記事中の記録は現地時間10月1日現在のものです。
<関連記事>
【大谷翔平MVP】取材歴35年MLBベテラン記者が語る「野球の神様ベーブ・ルースを超える偉業」
勝利に飢えた大谷をニューヨークは待っている 片思いのヤンキースが笑う日
【独占インタビュー】マドン監督が語る大谷翔平「やっとショーヘイという人間が分かってきた」