最新記事

アメリカが愛する大谷翔平

【大谷翔平MVP】アメリカに愛され尊敬される二刀流 ショーヘイはいかに「唯一無二」か

IT’S SHO-TIME FOR THE MLB

2021年11月19日(金)11時30分
スコット・ミラー(MLB専門スポーツジャーナリスト)

MLBの元内野手で、エンゼルスのテレビ中継で解説者を長年務めているホセ・モタは、大谷の楽しげな表情を見るのが好きだと言う。「試合前に準備している姿が好きなんだ。エンゼルスのチームメイトや監督のジョー、そしてMLBの環境に敬意を払っていることがよく分かる」

モタの父親のマニーは、20シーズンにわたりMLBでプレーし、ロサンゼルス・ドジャースでは代打で活躍した人物で、ホセの弟であるアンディもMLBの元内野手だ。大谷は、MLBでも有名な野球一家の一員であるモタのハートもつかんだのだ。

ドミニカ共和国出身のリリーフ投手ハンセル・ロブレスがエンゼルスに在籍していたとき、大谷がドミニカ共和国の音楽を教わっていた姿が印象に残っていると、モタは言う。

モタ自身も大谷との異文化交流を楽しんでいる。大谷が毎週1つずつ日本語の単語をモタに教えているのだ。ある日、モタが携帯電話をいじっているところに大谷が通り掛かり、モタの手元を指さして「ケータイデンワ」と笑顔で言った。「ずいぶんと長い呼び名だね」とモタが言い、2人で大笑いしたという。

大谷は、チームメイトとゲームの対戦で盛り上がることも多い。特にお気に入りなのは携帯ゲームの『クラッシュ・ロワイヤル』だ。同僚投手のブレイク・パーカーによれば、大谷はゲームで相手の機先を制する方法を熟知しているとのことだ。

211012P18_OTN_05.jpg

大勢の子供たちに囲まれてサインに応じる姿は珍しくない EVAN HABEEBーUSA TODAY SPORTSーREUTERS

大谷は、日本球界のスーパースターだからといって全く特別扱いされていないと、モタは言う。「大谷はMLBで評価を勝ち取ろうとしてきた。いまチームメイトたちは、大谷の『ショータイム』を、とりわけマウンドに立っている時間を楽しんでいる。その点は間違いない」

モタは、日本からやって来るファンと大谷との交流を見るのが楽しいという。「スタンドで日本語のボードを掲げているファンに気付くと、大谷はそちらに目を向け、胸に手を当てて『ありがとう』と言う」

この数カ月は、誰もが──大谷自身も、エンゼルスの仲間たちも、対戦相手も、そして球場やテレビで見守ったMLBファンも──忘れることのできない時間になった。

目を閉じれば、ヤンキース戦の衝撃的なホームスチールがありありと目に浮かぶ人もいるだろう。

「顔を上げたら、ショーヘイがホームに滑り込んでいた」と、そのとき左のバッターボックスに入っていた内野手のジャレド・ウォルシュは振り返る。「『ワオ! まじかよ』と思った」

ウォルシュは言う。「ショーヘイがものすごいことをやってのけたのは、この日だけではない。毎日、すぐそばでショーを見られるのは最高のご褒美だ」

(筆者はMLB専門のスポーツジャーナリスト。取材歴30年。ロサンゼルス・タイムズ紙やCBSスポーツなどのMLB担当記者・コラムニストを歴任。共著に『野球の90%はメンタル』〔邦訳・春秋社〕)

※本誌10月12日号「アメリカが愛する大谷翔平」特集号より掲載。記事中の記録は現地時間10月1日現在のものです。

<関連記事>
【大谷翔平MVP】取材歴35年MLBベテラン記者が語る「野球の神様ベーブ・ルースを超える偉業」
勝利に飢えた大谷をニューヨークは待っている 片思いのヤンキースが笑う日
【独占インタビュー】マドン監督が語る大谷翔平「やっとショーヘイという人間が分かってきた」

今、あなたにオススメ
ニュース速報

ビジネス

米バークシャー、24年は3年連続最高益 日本の商社

ワールド

トランプ氏、中国による戦略分野への投資を制限 CF

ワールド

ウクライナ資源譲渡、合意近い 援助分回収する=トラ

ビジネス

ECB預金金利、夏までに2%へ引き下げも=仏中銀総
今、あなたにオススメ
MAGAZINE
特集:ウクライナが停戦する日
特集:ウクライナが停戦する日
2025年2月25日号(2/18発売)

ゼレンスキーとプーチンがトランプの圧力で妥協? 20万人以上が死んだ戦争が終わる条件は

メールマガジンのご登録はこちらから。
人気ランキング
  • 1
    口から入ったマイクロプラスチックの行く先は「脳」だった?...高濃度で含まれる「食べ物」に注意【最新研究】
  • 2
    人気も販売台数も凋落...クールなEVテスラ「オワコン化」の理由
  • 3
    メーガン妃が「アイデンティティ危機」に直面...「必死すぎる」「迷走中」
  • 4
    細胞を若返らせるカギが発見される...日本の研究チー…
  • 5
    深夜の防犯カメラ写真に「幽霊の姿が!」と話題に...…
  • 6
    1888年の未解決事件、ついに終焉か? 「切り裂きジャ…
  • 7
    がん細胞が正常に戻る「分子スイッチ」が発見される…
  • 8
    ソ連時代の「勝利の旗」掲げるロシア軍車両を次々爆…
  • 9
    トランプが「マスクに主役を奪われて怒っている」...…
  • 10
    私に「家」をくれたのは、この茶トラ猫でした
  • 1
    口から入ったマイクロプラスチックの行く先は「脳」だった?...高濃度で含まれる「食べ物」に注意【最新研究】
  • 2
    がん細胞が正常に戻る「分子スイッチ」が発見される【最新研究】
  • 3
    人気も販売台数も凋落...クールなEVテスラ「オワコン化」の理由
  • 4
    戦場に「北朝鮮兵はもういない」とロシア国営テレビ.…
  • 5
    動かないのに筋力アップ? 88歳医大名誉教授が語る「…
  • 6
    朝1杯の「バターコーヒー」が老化を遅らせる...細胞…
  • 7
    7年後に迫る「小惑星の衝突を防げ」、中国が「地球防…
  • 8
    ビタミンB1で疲労回復!疲れに効く3つの野菜&腸活に…
  • 9
    「トランプ相互関税」の範囲が広すぎて滅茶苦茶...VA…
  • 10
    飛行中の航空機が空中で発火、大炎上...米テキサスの…
  • 1
    週刊文春は「訂正」を出す必要などなかった
  • 2
    中居正広は何をしたのか? 真相を知るためにできる唯一の方法
  • 3
    【一発アウト】税務署が「怪しい!」と思う通帳とは?
  • 4
    口から入ったマイクロプラスチックの行く先は「脳」…
  • 5
    「健康寿命」を延ばすのは「少食」と「皮下脂肪」だ…
  • 6
    1日大さじ1杯でOK!「細胞の老化」や「体重の増加」…
  • 7
    がん細胞が正常に戻る「分子スイッチ」が発見される…
  • 8
    戦場に「北朝鮮兵はもういない」とロシア国営テレビ.…
  • 9
    世界初の研究:コーヒーは「飲む時間帯」で健康効果…
  • 10
    「DeepSeekショック」の株価大暴落が回避された理由
トランプ2.0記事まとめ
日本再発見 シーズン2
CHALLENGING INNOVATOR
Wonderful Story
MOOK
ニューズウィーク日本版別冊
ニューズウィーク日本版別冊

好評発売中