勝利に飢えた大谷をニューヨークは待っている 片思いのヤンキースが笑う日
A LOVE CALL FROM NEW YORK
「大谷の多元的な魅力を考えると、取材陣の規模は松井や田中のときすらも上回るだろう。大谷は日本人有名選手というより、有名選手そのものだ。スターはブロードウェイで最も輝く。才能にあふれ、ルックスがよく、カリスマ性のある大谷は大舞台に欠かせない逸材だ」
大谷獲得への期待が高まり過ぎるのを前に、ヤンキース関係者は、コロナ禍で全てが一変したとクギを刺した。巨額を投じて超大物FA選手を獲得してきたチームの資金力も、その1つ。大谷が本塁打王を争い、今年のMLBオールスターゲームでアメリカンリーグの先発投手を務め、左打者に有利なヤンキー・スタジアムにぴったりのスイングをしようが、ヤンキースの懐事情は変わらない。
いずれ大谷獲得を目指す球団は、年俸総額の高騰を抑制するMLBの新たな包括的労働協約を考慮に入れる必要もある。大谷の今季年俸は300万ドルで、来シーズンは550万ドルに跳ね上がる。今後も体調良好で、スプリングスティーン級の動員数を維持するなら、相応の報酬が支払われるべきだ。
MLBは、他チーム所属選手の潜在的な獲得可能性や契約について公言することを禁じている。あるヤンキース幹部はオフレコで、2年先のことではあるが、球団は大谷の今後の行動に強い関心を持っていると筆者に明かした。ただし、彼は数時間後に再度電話をくれ「この史上最高の選手が何を考え、何を望んでいるかを知りたいファンの1人として」大谷を見守っていると言い直した。
ヤンキースと日本人選手の過去のロマンスが参考になるなら、ピンストライプのユニフォームに着替えた大谷は「スペシャル」以上の存在になる可能性がある。
特に予見しやすい例が、松井のヤンキース時代だ。「ゴジラ」松井は09年のワールドシリーズ制覇に貢献した(MVPにも輝いた)だけではない。球団に勢ぞろいするメガ級スターにも、時に注目から逃れる瞬間を提供することになった。
「ヒデキがいるのは大歓迎だ」。ヤンキースの伝説的名選手、デレク・ジーターは日本の取材陣でごった返すクラブハウスを見回して、筆者にそう言ったことがある。田中でもイチローでも、日本人有名選手が加わるたびに同様のことが起きた。
「ヤンキースが大谷と契約したら、彼らの誰よりも大きな事件になるだろう」と、ニューヨークのスポーツ専門ラジオ局WFANで、20年にわたってヤンキース担当記者を務めるスウィーニー・マーティは話す。