最新記事

アメリカが愛する大谷翔平

勝利に飢えた大谷をニューヨークは待っている 片思いのヤンキースが笑う日

A LOVE CALL FROM NEW YORK

2021年10月5日(火)16時45分
リサ・オルソン(スポーツジャーナリスト)

2年後のFAを前に、世紀のスーパースター大谷の決断に注目が集まる JOE CAMPOREALEーUSA TODAY SPORTSーREUTERS

<4年前にヤンキースからの誘いを断った大谷が、ピンストライプの二刀流でニューヨークのファンを沸かせる日は来るのか? 2年後のFAを前に、大谷獲得についてヤ軍幹部が本誌に明かした本音とは>

ニューヨーク・ヤンキースのファンの多くにとって、背筋がぞくぞくする瞬間だった。ロサンゼルス・エンゼルスの「二刀流」天才プレーヤー、大谷翔平が先日、記者会見で移籍について聞かれて興味深い発言をしたのだ。

2017年にMLBへの挑戦を表明した際、熱心に獲得に動いたヤンキースの名前を、大谷が口にしたわけではない。そんなことをすれば、23年まで契約を結ぶ所属チームに対して失礼に当たる。

それでも一部の見方によれば、今や大谷は心変わりを示唆している可能性がある。ニューヨークほど要求が多くない米西海岸の球団でプレーしたい、というMLB挑戦時の考えに変化が生まれているのだろうか。

エンゼルスは00年代に大成功を収めたが、15年以降はポストシーズン進出を逃し続け、今年も駄目だった。大谷が再来年に予定されるフリーエージェント(FA)権取得を見据えて、脱出に向けた「外交活動」を始めたとしても不思議ではない。

「エンゼルスに残留したい気持ちは?」。9月26日、対シアトル・マリナーズ戦での敗北の後、大谷はそう問われると、こう答えた。「もちろんファンの人も好きだし、球団の雰囲気も好き。ただそれ以上に勝ちたいという気持ちのほうが強い。プレーヤーとしては、それのほうが正しいんじゃないかなとは思っている」

現代のベーブ・ルースがついに、運命に導かれてニューヨークに向かうのでは――大谷は再び、そんなヤンキースファンの夢に火を付けた。

思い出してほしい。ヤンキースはかつて、日本人スター選手の本命球団と見なされていた。だからこそ、大谷がエンゼルスと契約したときには球界に衝撃が走ったのだ。

「常勝軍団」ヤンキースは例年どおり、プレーオフ進出に王手をかけているものの、左の強打者が恒常的に不足している。左打ちのスラッガーで右腕投手の大谷が、その素晴らしい存在感をマウンドでも発揮してくれるなら......。ロック歌手ブルース・スプリングスティーンが言ったとおり、あらゆる偉大なパフォーマーがブロードウェイの舞台に立つのには、それなりのわけがある。

松井秀喜や田中将大はいずれも、名野球選手になる運命をヤンキースで実現した。大谷が彼らの後に続くなら、球場には衛星中継用トラックが詰め掛けることになりそうだ。

「ビートルズが(ニューヨークにあった)シェイ・スタジアムにやって来るようなものだ」。ヤンキースの試合を長年実況するアナウンサーのマイケル・ケイは筆者にそう語った。

今、あなたにオススメ
ニュース速報

ワールド

脅迫で判事を警察保護下に、ルペン氏有罪裁判 大統領

ビジネス

貿易分断で世界成長抑制とインフレ高進の恐れ=シュナ

ビジネス

テスラの中国生産車、3月販売は前年比11.5%減 

ビジネス

訂正(発表者側の申し出)-ユニクロ、3月国内既存店
今、あなたにオススメ
MAGAZINE
特集:引きこもるアメリカ
特集:引きこもるアメリカ
2025年4月 8日号(4/ 1発売)

トランプ外交で見捨てられ、ロシアの攻撃リスクにさらされるヨーロッパは日本にとって他人事なのか?

メールマガジンのご登録はこちらから。
人気ランキング
  • 1
    自らの醜悪さを晒すだけ...ジブリ風AIイラストに「大はしゃぎ」する人に共通する点とは?
  • 2
    8日の予定が286日間に...「長すぎた宇宙旅行」から2人無事帰還
  • 3
    中居正広は何をしたのか? 真相を知るためにできる唯一の方法
  • 4
    【クイズ】世界で最も「レアアースの埋蔵量」が多い…
  • 5
    あまりにも似てる...『インディ・ジョーンズ』の舞台…
  • 6
    磯遊びでは「注意が必要」...6歳の少年が「思わぬ生…
  • 7
    ロシア空軍基地へのドローン攻撃で、ウクライナが「…
  • 8
    「隠れたブラックホール」を見つける新手法、天文学…
  • 9
    イラン領空近くで飛行を繰り返す米爆撃機...迫り来る…
  • 10
    【クイズ】アメリカの若者が「人生に求めるもの」ラ…
  • 1
    【クイズ】世界で最も「レアアースの埋蔵量」が多い国はどこ?
  • 2
    自らの醜悪さを晒すだけ...ジブリ風AIイラストに「大はしゃぎ」する人に共通する点とは?
  • 3
    ロシア空軍基地へのドローン攻撃で、ウクライナが「最大の戦果」...巡航ミサイル96発を破壊
  • 4
    中居正広は何をしたのか? 真相を知るためにできる…
  • 5
    800年前のペルーのミイラに刻まれた精緻すぎるタトゥ…
  • 6
    ガムから有害物質が体内に取り込まれている...研究者…
  • 7
    テスラの没落が止まらない...株価は暴落、業績も行き…
  • 8
    一体なぜ、子供の遺骨に「肉を削がれた痕」が?...中…
  • 9
    「この巨大な線は何の影?」飛行機の窓から撮影され…
  • 10
    8日の予定が286日間に...「長すぎた宇宙旅行」から2…
  • 1
    中国戦闘機が「ほぼ垂直に墜落」する衝撃の瞬間...大爆発する機体の「背後」に映っていたのは?
  • 2
    「テスラ時代」の崩壊...欧州でシェア壊滅、アジアでも販売不振の納得理由
  • 3
    「さようなら、テスラ...」オーナーが次々に「売り飛ばす」理由とは?
  • 4
    「一夜にして死の川に」 ザンビアで、中国所有の鉱山…
  • 5
    テスラ失墜...再販価値暴落、下取り拒否...もはやス…
  • 6
    「今まで食べた中で1番おいしいステーキ...」ドジャ…
  • 7
    市販薬が一部の「がんの転移」を防ぐ可能性【最新研…
  • 8
    テスラ販売急減の衝撃...国別に見た「最も苦戦してい…
  • 9
    テスラの没落が止まらない...株価は暴落、業績も行き…
  • 10
    【クイズ】世界で最も「レアアースの埋蔵量」が多い…
トランプ2.0記事まとめ
日本再発見 シーズン2
CHALLENGING INNOVATOR
Wonderful Story
MOOK
ニューズウィーク日本版別冊
ニューズウィーク日本版別冊

好評発売中